人好きな老女
出会いですね!
「いや、え、、?」
今、私は非常に困っている。
そもそも私がマンションに来たのは、気まぐれだ。
兄の誕生日だから。償いとも言えないが、ただ来て、あの部屋の前で、手を合わせたかった。
そして今、マンションの前でボーッとしていた私に声をかけてくれた、おばあちゃんが
「ちょっと寄ってかない」と言って笑っている。
「これから、家でお茶するところなんだけど、一人でお茶飲むのもあれだし、どう?私、このマンションの10階に住んでるんだけど。」
「10階、、、」
もしかしたら、という思いが頭の片隅を掠める。
いや、そんなわけない。でも、、
(もしかしたら、私たちが住んでたあの部屋かも知れない)
「いいんですか?お邪魔しちゃって」
口が先に動いた。行きたいわけでもない。ただ気になるだけ。。そう、気になる、、、だけ。
「いいのよ!」
老女は嬉しそうな、楽しそうな表情を見せ、着いてきて!と言った。
ーーーー
この老女は何者なのだろうか。
ただの人好き?それとも、、何だ?
「あなた、このマンションの住人じゃないでしょ?」
前を行く老女が私の方を振り向いて言った。
「何でそれを、、?」
「だって初めて見る顔だから、」
彼女は不思議そうな顔をする。
(ああ、この人結構人好きなのかも、、)
「そうです、今日はちょっと事情があって」
「・・・」
彼女はふぅんという感じで私にはそれ以上何も聞かなかった。
ちょうど、エレベーターが来た。
(このエレベーター久しぶりだなぁ)
そう思いながら彼女の後に続いてエレベーターに乗った。
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『10階でございます』
エレベーターから降りると、私は彼女の後について行く。
(あ、、、!)
彼女の足が止まったのは、私の前の家の玄関の前だった。
次はお母さん回になります