すまない、
最初お父さん視点
あの日のことは今でも鮮明に、悪夢のように毎日思い出す。
俊一が自宅のベランダから飛び降り、死亡したと聞いた時は、なんのことか分からず、ただ車を俊一がいる病院に走らせた。
車の中で思ったことは一生忘れることはないだろう。
夜勤明けの車の中。
フロントガラスに俊一の顔がチラつく。
(本当に俊一はもういないのか?)
医者として何人もの人の最期を看取ってきた。
(俊一はまだ十六だぞ?)
『信じられない』
その時の私の感情はこの一言で十分すぎだ。
昨日の朝、『行ってらっしゃい』と言っていつもの様に見送ってくれた、あの俊一が?
私は妻や娘のことを考えた。
どういう思いで、私を待っているだろうか。
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その時、私は一人、車の中で誓ったはずだ。
家族を守る。支える。と。
…… 今、目の前に娘がいる。
でも、私はもう娘を見ても何も思えなくなってしまった。
『愛おしい』と思えない。
「パパ」と呼んでくれている娘に、返す言葉が見つからない。
あのアパートを出ていった日。
私は、「もう、いいや」と思った。
堕ちていく家族をあの時見限った。
妻が『狂った』
あの妻を見て、もうダメだと思った。
我慢にも限界が来てしまったのだ。
この家を出て行こうと思った時、私は何と思ったか?
…… そう、私は『娘も置いていこう』と思った。
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娘に返す言葉が見つからない。
娘の顔がみてとれる。
今娘が浮かべているのは『絶望』だ。
(こんな父親ですまない、)
(本当にすまない)
否。それだけの言葉では足りないのはわかっている。
でも、今だけは、一人でいたい。
もうこのしがらみから解放されたい。
娘の口が開き、何か言おうとしてるのが分かった。私はそれを聞くのが怖かった。
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(あぁ、もう愛されてない)
そう感じた。
父に次にかける言葉が思いつかなかった。
何とかけるべきか。
そう、私は家族を取り戻す。
「帰ってきて」と言うべきだろうか?
違う。
それじゃあ弱い。私を置いて、自分だけ罪から逃げた。そんな父に今かける言葉。
私は口を開いた。
お父さん最低ですね、まぁこれからがお父さんの本領発揮!
不倫とかだめですからね、お父さん




