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もう一度、名前をよんで。  作者: 七瀬かいり
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ありがとう

読んでもらえると嬉しいです。

彼女は最期、私に何と言ったのだろう。

しわくちゃになったその唇からは、よく読み取れなかった。

でも彼女が安心しているということだけは感じることが出来た。


「今日子さん、ありがとう」

そう呟いて、目をつぶる。

私は今日子さんに何を返せただろうか。

自然と涙が溢れてくる。彼女のしわくちゃになった手をしっかり包み、もう一回、

「ありがとう」 と呟いた。




――――




線香の鼻につくような匂い。

擦り切れた畳のこの感じ。

瞼を上げると、そこには笑った兄がいる。

「お誕生日おめでとう」

仏壇に手を合わせながら、私はそう呟くと、仏壇がある部屋から焦るように出た。

目の前にはお母さんが座っているこたつがあり、私は横目にそれを見ながら、玄関に向かった。


玄関から出ると、眩いくらいの日差しが照りつけている。

(ああ、そう言えば今日は今年最高気温だっけ)

でも、家に帰ろうとは思えなかった。

(お母さんと家に二人きりなんて真っ平だ)

そう思うと、よしっと息を整え、目的地を目指して歩き始めた。


マンションの前に立ってみる。

平気だ。何も起こらない。

このマンションを目にするだけで動悸がした時もあった。

それが無くなったあとでもやはり前に立つだけで動悸がする時もある。

このマンションを後にして五年。

もう五年も経ったのか、、。と私はつくづく思う。

短いようで長い。本当に長かった。

でもまだこの日常は続くのかと思うと咄嗟にため息がでる。


そう、五年前、このマンションの10階にあった自宅のベランダから兄は飛び降りたのだ。



――― これは、私の家族再生物語

兄の自殺を通して起こった、家族の問題。

父の不倫。母のうつ病。私の、、、。

私が当たり前を取り戻す物語。

幸せじゃなくていい、普通でいい。

その普通が、当たり前が、幸せになっていくなら、私はこの家族をそうしていきたい。

1話目読んでくれてありがとうございました!

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