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第79話 覚醒

 いったいどれだけの時間が経ったのだろうか。

 ……いや、実際には数分も経っていないのか。

 不思議な感覚だが、慣れてきた。

 慣れとは恐ろしいものだな、あれだけ恐怖していた時間の巻き戻りという現象を、今では何とも思わない。


「その攻撃は読めて――ッ!?」


 奴が突いてきたナイフを避け、腕の根っこをつかむ。

 驚いているようだが無理もない、()()()()()()()()()()()()()

 肘を折ってナイフを捨てさせ、そのまま背負い投げの形で、奴の体を地面に叩きつける。


「流石にうざったるくなってきたな」


 奴が痛みで怯んでいるスキに、俺は奴の首にナイフを突き立てた。


 瞬間、景色が一変する。

 まただ、世界が戻った。


「これで何回目だ……? 300超えたぐらいから数えるのめんどくさくなったから数えてないけど、一応数えとけば良かったな……」


 まるで永遠に続くかのような感覚。今の地点が分からないから、いつ終わるのかも分からない。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇




「さぁ、ゲームの時間だ、フォート・アレイス! お前が俺をあと1052回殺すか、俺が1回お前を殺すかの簡単な殺し合い(ゲーム)だ! どこまで精神が保てるかなァ!?」



 そう言った奴は四の五の言わずに襲い掛かってきた。

 だが、奴は俺を甘く見ていた。

 俺は初見殺しには弱いが、対策さえ分かってしまえば誰にも負けない自信がある。

 そうなるべくして、今まで修行して(生きて)きたのだから。


 奴はギフト以外はただの人間と大差無かった。

 肉体の技術量は俺のほうが遥かに上回っていた。

 さらに、奴のギフトの特性である「奴を殺した者のみが記憶を引き継げる」というものも役立った。

 何度奴が死のうとも、俺が殺してしまえば奴はどのように殺されたのか覚えていられない。

 よって、俺は身体面でも、情報面でも奴に勝っていた。


 だが奴は、その差を詰めることが出来るだけの「力」を持っていた。

 さらに知能の面でも俺に劣らないほどであった。


 数十回ほど戦って、その違和感に気づいた。

 たまにだが、俺が()()()()()()()攻撃が来るのだ。

 まさか、奴も何らかの新しい力を得て、それで前の記憶を覚えていられるようになったのかとも思ったがそうでは無かった。

 俺の疑問に対し、奴はこう答えた


「どうやって死んだか覚えてなくても、死んだという事実があるなら、俺の攻撃が効かなかったというのも事実。もう一回お前に攻撃をしようとしてもその攻撃は読まれている可能性が高い。なら最初に思いついた攻撃をフェイントにして、別の攻撃をすればお前に当たる可能性が高いだろ。」


 これには本当に驚いた。

 俺ではそこまで考えが至らなかったからだ。

 だから、俺は油断していた。


「ハッハァッ! 一発ヒットォォ!」


 100回を超えたころ、初めて一撃を食らってしまった。

 奴の攻撃の軌道の変化に気づくことが出来ず、左腕に切り傷をもらってしまった。

 これの恐ろしいところは、一発でも攻撃をもらってしまえば、そのダメージは蓄積していくのだ。

 奴の攻撃はすべて次の世界でも引き継がれる。一発が致命的な負けにつながる可能性だってある。


 だから、俺はここから一発も見落とさないように、ただ淡々と作業をこなすように奴を殺していった。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇




 もう奴の残機を半分くらいは削れただろうか。

 大体の攻撃パターンは分かってきたが、これをあと数百回もしないといけないのだから、まだ油断できない。



「さぁ、ゲームの時間だ、フォート・アレイス! お前が――――」


 奴が言い切る前に攻撃に移る。

 気づいた奴はすぐに剣を取り出そうとするが、すでに遅い。

 俺に向けようとしてきた剣をすぐに弾き飛ばす。

 弾き飛ばされた剣は、俺たちの上で舞う。


 奴がそれに怯んだところを狙い、もう一本の剣で奴の首を狙った。



 次の瞬間、風景が一変する。


「……やっぱり、この感覚だけには慣れねぇな」


 時間が戻って、世界が一から始まるこの瞬間。

 ふつうあり得ないこの現象だけは未だに慣れることが出来ない。


 さて、次だ。


「ハッハァアアアアア――――――ッ!! フォォオオト・アレイスゥウウ――――ッ!!」


 奴が窓を破って学校内に入ってくる。

 奴が着地するよりも前に、俺は駆け出す。


 奴はそれに気づいたようだがすでに俺の間合いに入っている。

 奴が抜いた剣を上に弾き飛ばす。

 剣は俺たちの上を舞い、奴が一瞬放心状態になる。


 その隙に俺はまた奴の首を狙う。

 そして、また世界は一変し――――



「なにッ」


 しかし、俺の剣が奴の首に届かない。

 寸前のところで奴の腕が出てきて、代わりに剣を受けたのだ。

 おかしい、奴はこの攻撃は覚えていないはずだ。

 そんなことを考えていると……。


「グアッ!」


 突然、右肩に痛みが走る。

 痛みが走ったところを見てみると、なんと奴の剣が俺の肩に刺さっていた。

 一体いつの間に、と思ったが、よく考えてみればこの剣はさっき俺がはじいた剣だ。

 はじいた剣がたまたま刺さったということか、運がない。


 だが、それだけではなかった。


「は――――」


 突然、先ほどとは比べ物にならないほどの激痛が走る。

 一瞬、何が起きたのか分からなかった。

 なぜなら、俺がこいつに負けるわけがなかったからだ。

 油断さえしなければ、負けるはずなかったんだ。


「あ、あ、いっ、ぁああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛アアアッッ!?」


 痛みを認識し、俺はその痛みから逃れるようにもがく。

 しかし、腹に突き刺さったナイフは俺に痛みを与え続ける。


「…………ようやく、この瞬間が、この瞬間(とき)を待っていた」


「ま゛、まっで、ぐうッ!」


 奴が俺にトドメを刺そうと2本目のナイフを振り下ろす。

 すんでのところで避けるが、これ以上戦うのは厳しい。


「な、なんでだよっ、お前は覚えていないはずじゃ――――」


 俺が問いかけると、奴はその答えを俺に見せてきた。

 ……そうか。

 そうか、どうして俺はその可能性を考えていなかったんだ。


 思えば、おかしいと感じたのは何回もあった。

 まだ攻撃が届いていなかったはずなのに、世界が戻ったときもあったが、俺の気のせいということで済ましてしまった。


 奴が見せてきたのは、口の中にあった謎のカプセルのようなもの。

 そう、奴はただ死んでいたんじゃない、()()()()()()()()をしながら死んでいたんだ。

 本当は、何回も自殺していたんだ。俺にバレないように、俺に殺される直前に。


「フゥ――――……、よく頑張ったと思うぜフォート・アレイス。俺を843回も殺したのはお前が初めてだ」


 俺は何とか踏ん張って立ち上がる。

 ここで死んでしまえば、そこで終わりだ。

 何度世界が繰り返しても、俺が死ぬ運命が確定してしまう。


「これで、終わりにしようぜ!」


 奴が襲い掛かってくる。

 俺もナイフを抜き、応戦する。


 奴が突きだしてきたナイフを避け、腕を掴m――――


「――――ッ!」


 しかし、痛みに怯んでしまう。

 奴が俺の腹に刺さったナイフを、さらに奥へと突き立てたのだ。

 その隙を、奴は見逃してくれなかった。


「がはッ!?」


 奴は俺の腹を蹴り上げた。

 ナイフの痛みほどではないが、それでもその場から動けなくなるには十分だった。


「じゃあな、フォート・アレイスッ!」


 奴が再びナイフを振り下ろす。

 俺はそのナイフをはじこうと……、ダメだ、すぐに取り出せる重さの剣はもう使ってしまった。

 避けるにも、あと数秒は動けない。


 ダメだ、避けられな――――









『―――――――――――――――リスタ』









「…………っ! な、なんだこれは」


 おかしい、俺はフォート・アレイスを殺したはずだ。

 あの状況から、奴が何かできるはずがない。

 なのに…………。


「なんで戻ってきてるんだよ……!?」


 なぜか、世界が戻っていた。

 おかしい、俺は死んでいないはずだ。

 逆に死ぬのはアイツだったはずだろ。


「いったい何で――――」


 そう思った瞬間。



『ガシャァーンッ!!』


「ッ!?」


 突然、ガラスが割れた音が響き渡った。

 音の聞こえた方向を向くと。


「なっ、フォート・アレイス!?」


 そこには、フォート・アレイスがいた。


「なぜお前がここに、いったいなに――――」



「――――ッ!? な、な……」


 気が付くと、先ほどの場所に戻っていた。

 一体、何が起きているんだ。

 俺はアイツを殺したはずだ。それで終わりのはずじゃないか。


『ガシャァーンッ!!』


「ひッ!?」


 また、ガラスが割れた音が響き渡った。

 音の聞こえた方向を向くと。


「フォート・アレイス!」


 そこには、やはりフォート・アレイスがいた。


「なんだ、いったいお前何をしたんだ。さっきから――――」




「――――ッ!? うわ、うわあああああああああッッ!?」


 まただ、また時間が戻っている。

 一体、何が起きてるっていうんだよ!


『ガシャァーンッ!!』


「フォート・アレイスゥ!?」


 振り向くと、やはりフォート・アレイスがいる。


「さっきからなんなんだ!? いったい、お前は何をして――――」




「――――ッ! だ、ダメだ、何をされているんだ俺は……!?」


 一体、何をされているのかまるで分からない。

 時間が巻き戻っているから、おそらく俺は死んだのだろうが……。


「と、とりあえず逃げ――――」


『ガシャァーンッ!!』


「ひッ!?」


 また、ガラスが割れた音が聞こえたと思った瞬間。




「――――い、いやだあああああああああ!!」


 また、同じ風景に戻った。

 俺は逃げ出した。

 しかし次の瞬間、もとの時間に戻ってしまう。


 どれだけ逃げても、もとの時間に戻ってしまう。

 逃げても、逃げても、逃げても、逃げても。




「なんなんだよォ、なんなんだよォッッ!?」


 また時間が戻る。

 また、また、また、また。


 何度戻っても、一体どうして時間が戻っているのか、俺が殺されたのか、どうして死んだのか、何もわからない。

 ただただ、時間が、世界が戻っているだけだ。


 フォート・アレイスも、あの変な鎧野郎も、何度も死ねば大体の攻撃パターンは覚えられた。

 しかし、今回の攻撃は何もわからない。

 そもそも俺は攻撃を受けているのか?

 いや、確かにカウントは減っている、死んでいるのは間違いない。



『ガシャァーンッ!!』


「ひッ!?」


 また、ガラスが割れた音が聞こえ、フォート・アレイスが現れる。



「だ、誰か、誰か助け――――」





 また、カウントが1減って、時間が戻った。

お久しぶりです。

水谷輝人です。

無事に一時志望の大学に合格できました。

大学での講義や課題があるので、毎週更新は難しいですが、これからまた更新を再開したいと思っています。

一旦プロローグはやめて、本編から再開したいと思います。

プロローグはまたどこかで書きたいと思います。

どうぞよろしくお願いします。


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