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第78話 繰り返す世界

 マズいマズいマズいッ。

 急いで逃げなければ!

 一度攻撃を受けてしまえば……。


『あの魔物によって繰り返される世界では、前の世界で起こったことが再現される。つまり、一度死ねば何度世界が繰り返されようとも、再び死ぬ』


 前の世界で起こったことの再現、具体的には、生物が傷つくことの再現だ。

 だから一度攻撃を受けて、傷を負ってしまえば、何度世界が繰り返そうとも()()()()()()()()()()()()()()()()()

 もし死ぬような傷を負えば、繰り返す世界でまた同じ時間に死ぬことになる。


 既に俺は一度死んでいるため、何度世界が繰り返そうとも時間が来れば死んでしまう。

 そのため、ただでさえ時間が無いというのに、()()()()よりも早く死んでしまえば……。


 急いで階段を登って、上の階に逃げるんだ!

 そのあとは、――――一々考えられるか!

 とにかく、逃げながらスライムの準備をするしかない!




 ◇◇◇◇◇◇




「さてと、とりあえず一旦まずは時間を戻したが」


 しかし、フォート・アレイスめ、一体どうやって突破したんだ。

 そこが分からないと、もう一度殺してもまた突破される可能性がある。


「だが、結局のところはもう一度殺せばいいだけのことだ」


 一度殺されたことは認識できても、また殺されたことは分からないだろう。

 それが俺の『ギフト』の最大の特徴であり、この『ギフト』の最大の利点でもある。

 死ねる回数に限度はあるが、逆に言えば死ねる回数分いくらでもやりようがあるということ。

 あの鎧野郎にだいぶカウントを割いちまったが、それでもまだ1000はある。


「アイツ、さっきは西校舎の1階にいたな。おかしいな、あの時間はまだ3階の辺りにいるはずなんだがな」


 よくよく考えたら、辻褄が合わないことに気が付いた。

 あの時間、アイツはこの学園の生徒たちに授業をしているはずだ。

 なのに、何故1階にいるんだ。

 色々とおかしい。


「……考えても無駄だ。とにかく、すぐにアイツを殺す。それで解決だ」


 俺は手にナイフを持ち、移動を始めた。




 西校舎1階に到着した。

 廊下にアイツがいても、こちらが見えないように壁の陰に隠れる。

 さっき、アイツは東の方を向いていた。

 だから、回り込んでまた後ろから襲い掛かろうと思ったのだ。


「なんで、いないんだ」


 それなのに、アイツがいない。

 何故だ、“一つ前”ではもうこの時間にはこの廊下にいたはずだ――――ッ。


「まさか、俺が移動していることに気が付いて、別の場所に逃げたのか! だとしたら、いくら何でも気が付くのが早すぎる。俺は自殺してからすぐにここに来たんだぞ!? それに気づくなんてまるで――――」


 まるで、俺が来るのを知っていたかのような――――。


「そんな……、そんなことはありえないッ。今回は自殺したから、前の世界で起こったことを覚えていられるのは俺だけのはずだ!」


 そういえば、どうして俺はアイツに殺されたんだ。

 そもそも、どうやって俺の存在に気づいたんだ。

 自殺し続ける限り、俺以外は世界が繰り返していることに気づきようがないはずだッ。

 どうして、どうやって!?




 ――――俺がたどり着いた、一つの結論。



「どうやったのか知らないが、アイツは覚えてるんだ。今までの、すべての記憶を!」


 それは、ただの仮定でしかないが、そうとしか考えられなかった。


 マズい、もしこの仮定が現実のものだとしたら、俺の今までの方法が通用しなくなる。

 相手の攻撃を死んで覚える、“死に覚え”が。

 そうなれば、俺がアイツに勝てる方法がなくなる。

 逃げようとしても、結局はあの鎧の男に殺される。


 そんな、どうして。

 俺は、ただ、仲間たちの復讐を――――――



「――――待て、じゃあなおさらなんでこの場所にいないんだ」


 しかし、落ち着いて一度考え直してみると、疑問が残った。

 俺がここに来ることが分かっていたのなら、どこかに隠れて俺を襲ったり、あの謎の触手で俺の読みを外す攻撃をすればよかったはずだ。

 なのに、アイツはこの廊下にいなかったし、どこかに隠れている気配もない。

 ()()()()()()()()()()()()()()


 そうだ、俺がアイツを()()()殺したとき、アイツはあの触手の様なもので攻撃してこなかった。

 つまり、“あのとき”はまだあの触手を持っていなかったか、使えなかったんだ。

 じゃあ、なんで今は使えるんだ。


「…………準備に、時間がかかる」


 そう、そう仮定すればいい。

 あの触手の様なものは、使うための準備に時間がかかる。

 俺がこの力を得てから、初めてアイツの前に現れたとき、いきなりだったから準備する時間が無かった。

 だから、“あのとき”はまだ触手は使うことは出来ず、この廊下では十分時間があったから準備できたというわけか。


 そして、ここにアイツがいないということは……。


「準備のための十分な時間がないということか」


 恐らく、俺が自殺して戻される時刻から、俺がこの廊下までくる時刻までには準備は不可能。

 だからこそ、アイツはこの廊下にいない。

 ……逃げたんだ。

 それはつまり、()が恐ろしいということ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()




「…………く、…………クク、……クフフ、……アハ、アハハ、ア゛ハハハッ、ア゛ハハハハハハハハ――――」


 笑いが止まらない。

 そうか、アイツは俺に殺されるのが怖いのか。

 そして、俺に殺されるとどうなるのかも、知っているのか。

 それなら、()()()()()()()()()()()()()()()()


 さて、そうなるとこの俺の仮定が正しいのかを証明する必要がある。

 とても簡単だ。

 その証明方法はとても明快で、引き金(トリガー)はすでに右手に握られている。

 最悪、仮定が間違っていても、1回消費するだけだ。


「さぁ、どう転ぶか」


 俺は自分ののどにナイフを押し当てた。

 そして――――



殺し合いの始まりだ(ゲーム・スタート)



 勢い良く掻っ切った。

 一瞬の痛みの後、意識が飛んだ。




 ◇◇◇◇◇◇




「はっ――――」


 ここは、あの廊下!

 また時間が戻ったのか!


「どうして、奴が死んだんだ」


 おかしい、普通ならすぐに俺のところに向かって来るはずだ。

 だから、俺のところに来る前に奴が自殺するなんてことは――――



『ガシャァーンッ!!』


「ッ!?」


 突然、ガラスが割れた音が響き渡った。

 音が聞こえた方を振り返ると――――



「ハッハァアアアアア――――――ッ!! フォォオオト・アレイスゥウウ――――ッ!!」


「なッ!?」


 そこには、窓を突き破ってきた、オナ〇ワームがいた。

 奴は廊下に着地し、立ち上がって俺を睨みつけた。


「ハハハッ! お前の一番嫌がることを思いついたぞ、仲間たちの復讐のために!」


 奴は俺にナイフを向け、笑い交じりに叫んでいる。

 いや、あれは笑っているのだろうか。

 少なくとも、可笑しいものを見てこぼれる笑いとは類が違う。

 あれは、()()そのものだ。


「お前、時間が無いんだろ!? 恐らく、()()()()()()()()()より前から行動することはできないな、違うか!?」


 奴が、歩きながら俺に近づいてくる。

 どうする、今の俺の状態では、奴に勝てるか分からない。

 スライム触手のリーチ差での有利が無い状態で戦うのは少々心細いが、やるしかない。


「つまり、その状態のお前を()()()()殺せば、何度世界が繰り返そうとも死ぬ運命が再び確定し、抵抗する間もなく死ぬというわけだ! これほど絶望を与えられる復讐の仕方は、今まで考えもしなかった!」




 俺は奴が話している隙を狙って襲い掛かった!

 目論見通り、一気に距離を詰めることに成功する。

 奴は驚き、ナイフをすぐに取り出したが時すでに遅し。

 俺の剣が奴の首に届く方が早かった。


「ガ――――ッ!?」


 寒天の様なものを貫いた感触が手に伝わってくる。

 世間ではこの方法を“卑怯”とよく言われるが、相手が話している隙にいきなり襲い掛かるのは常套手段だ。

 特に、俺みたいにそこまで力があるわけではなく、戦闘が長引けば長引くほど不利になりやすいタイプは、相手の意識外からの攻撃を仕掛けて、相手に考える間を与えない戦い方が合う。





 そして奴の首を貫いた後、少し時間の流れが遅くなったように感じたかと思った次の瞬間。

 いきなり視界が変わった。

 また世界が、時間が巻き戻ったのだ。


「よし、これでとりあえず難所はクリアしたか」


 これで奴は記憶を失い、今までのことを覚えているのは俺だけになる。

 また同じようにスライム触手を準備する時間を用意することができるというわけだ。

 さぁ、さっそくとりかk――――




『ガシャァーンッ!!』


「ッ!?」


 突然、ガラスが割れた音が響き渡った。

 そんな、そんなはずはない。

 そう思いながら、音が聞こえた方を振り返ると――――――



「ハッハァアアアアア――――――ッ!! フォォオオト・アレイスゥウウ――――ッ!!」


「なッ!?」


 そこには、窓を突き破ってきた、オナ〇ワームがいた。

 奴は廊下に着地し、立ち上がって俺を睨みつけた。


「ハハハッ! お前の一番嫌がることを思いついたぞ、仲間たちの復讐のために!」


 奴は俺にナイフを向け、笑い交じりに叫んでいる。

 だが、叫んでいる内容は全く耳に入ってこない。


(何故だ、どうして。奴は俺が殺したはずだから、前の世界までの記憶は持っていないはずだ。それなのに、何故奴は今ここに現れたんだ。どうして)


 そんなことばかりが頭の中を駆け巡る。

 しかし、いくら考えても答えは出てこない。


「お前、時間が無いんだろ――――ってなんだその表情。まるで死人でも見たかのような顔してるな」


 奴がそんな皮肉を言ってくる。


「……なるほど、お前既に俺を殺したのか。だから、ここに俺がまた現れたことに驚いたんだな」


 なんと、俺の心境を見事に言い当てやがった。

 そうだ、なんで奴はここにいるんだ。

 今までの記憶は覚えていないはずなのに。


「何か勘違いしているようだが、俺の『ギフト』は俺を殺した者のみが前の世界での記憶を引き継げる、そういうものだ。もしかして、俺を殺したら今までのこと全部忘れて、なかったことにできると思ったのか? だったら残念だったな! 俺はすでに、お前が俺の『ギフト』の仕組みに気づいた時点で自殺して、何度死んでもお前のことを覚えていられるようにした! 何度お前が俺を殺そうとも、()()手遅れなんだよ!」


「そんな、そんなことって」


 これでは、何度奴を殺しても、また奴は襲いに来る。

 永遠に、寄生スライムを準備する時間が用意できない。




「さぁ、ゲームの時間だ、フォート・アレイス! お前が俺をあと1052回殺すか、俺が1回お前を殺すかの簡単な殺し合い(ゲーム)だ! どこまで精神が保てるかなァ!?」


 そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が始まった。

更新がとても遅くなってしまいましたが、私自身の私生活で色々問題が発生しており、

また執筆活動に対してのやる気が出ないことを理由に1か月も更新が滞ってしまいました。

読者の皆様には、多大なるご迷惑をおかけいたしました。

今後も更新が何週間も滞ることがあると思いますが、ご理解いただければと思います。

この作品は私が生きている限り必ず完結させますので、ペンを折ることはありません。

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