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第73話 寄生スライム

 寄生(パラサイト)スライムという魔物がいる。

 バーバーという鳥系の魔物にだけ寄生し、生命力を吸い続け生きる魔物の中でもかなり異形の存在だ。

 しかし、数十年前に人間によってバーバーが狩り殺され、バーバーが絶滅してしまった。


 バーバーは体格3メートルを超えるのにもかかわらず、性格がとても温厚で、人間にも何の警戒もなしに近寄ってくる。

 さらに、傷ついた仲間がいると近寄ってきて助けようとする習性もある。

 この習性を悪用された。

 一匹仕留めれば、それを心配して新たなバーバーがやってくる。

 それを繰り返せば、簡単に一日に数十体の獲物が手に入る。

 そんな感じで乱獲された結果、バーバーという魔物が絶滅してしまった。


 ここで問題になるのはパラサイトスライムたちの宿主だ。

 バーバーという宿主がいなくなったとき、スライムたちはどうしたか。

 ほとんどのパラサイトスライムは宿主を見つけられずに死んでいったが、一部の者だけ新たな宿主を見つけた。

 その新たな宿主というのが、元の宿主を絶滅させた“人間”だった。


 この“人間”という生き物、不思議なことに定期的に無防備になる。

 そう、睡眠のことだ。

 その間に寄生するのだ。

 しかし、元の宿主とはあまりに体の構造が違っていて、さらに高純度の魔力回路を持つ人間に寄生するには、パラサイトスライムはあまりにも弱く、寄生しても魔力の量に耐え切れずすぐに死んでしまうほどだった。



 そこで、特殊な個体が現れた。

 その個体はほぼ無尽蔵に魔力を吸い続けられるだけでなく、経験値も吸い取る、レベルドレインが行える個体だった。

 そう、生き残るために突然変異体が生まれたのだ。

 しかし、その突然変異体も運が悪かった。

 宿主にとりついた瞬間、自ら宿主を殺してしまった。

 宿主は、まだ生後一年にも満たない赤子だったのだ。

 赤子から生命力も魔力もレベルも奪い取ろうとすれば、死ぬに決まっている。

 結局、その突然変異体も死んでしまい、パラサイトスライムも絶滅した。


 この話は、魔物学の本に記され、事実上パラサイトスライムという魔物が絶滅したということになった。


 ……ここまでは、パラサイトスライムという種族について説明した。

 俺のタレント『魔物創成』は、ありとあらゆる魔物を生み出すことができ、すでに絶滅した魔物も生み出すことができる。

 サキュバスなどがその例だ。

 ……つまり、パラサイトスライムも生み出すことができる。

 そして、その変異体も。

 俺はその変異体にこう名付けた。


()()()()()()()()()()()()()



 俺は目の前の大きなスライムをそう呼んだ。

 俺の計画とは、この変異体のパラサイトスライム、キング・パラサイトスライムに俺自身に寄生させ、それを『魔物創成』によって操ろうという物だ。

 もちろん、ただ寄生させるだけではない。


 俺はしずくからもらった注射器を取り出した。

 中には、紫色の半透明な液体が入っている。

 中身を少しだけ出して、針から空気を抜く。

 ……俺は意を決して、注射器を左腕に刺した。

 そして、中身を注入した。


 すると突然、景色が変わった。

 周りが、ゆっくり動いているように見えるようになったのだ。

 しかし、自分は普通に動けている。

 これが、この薬の力か……。

 脳の力を引き上げる、いや、脳の本来の力を引き出させる薬か。


 人間は通常脳の機能の一部しか使っておらず、その力を出さないようにブレーキが掛けられている。

 しかし、稀にその本来の力を出せることがある。

 火事場の馬鹿力などというだろう、それだ。

 この薬は、そんな脳の本来の力を引き出させる薬なのだとか。


「さて……、それじゃあ、始めるとしようか」


 俺はキング・パラサイトスライムの方を見た。

 息を大きく吸い込む。

 そして、俺はその言葉を言い放った。



「俺に、寄生しろッ!」



 キング・パラサイトスライムの体が一瞬揺れる。

 そして、俺に飛び掛かってきた。

 キング・パラサイトスライムから触手のようなものが伸び、俺の背中に回ったかと思うと。

 俺の背中に突き刺してきた。

 次の瞬間。


「ッ!? ガ――――――ッ!!」


 猛烈な痛みが襲ってきた。

 理由は単純明快、スライムが神経に触れたからだ。

 そして、神経と融合する。

 正直、麻酔無しで手術するぐらい痛いが、逆に言うとそれぐらいで済んでいるとも言える。

 しずくが渡された薬には、僅かだが麻酔薬が入っている。

 そのおかげで、耐えられるぐらいの痛みにまで減っている。

 ……スライムが完全に神経と融合したところで、次の命令だ。


「――ッ! “レベルドレイン”!」


 すると、体から急速に何かが流れ出していく感覚が俺を襲った。

 俺のレベルは999だ。

 しかし、ステータスの素質が低く、ベテラン冒険者ぐらいの力しかない。

 ……だが、もし、別の誰かにレベルを分け与えることができたとしたら?


「もっと……、もっとだ……! もっと吸えッッ!!」


 物凄いスピードで経験値が吸われていく。

 何度も酷い頭痛に襲われるが、無視してレベルドレインを続けた。

 ……そして、数分が経過したころ。



「ハァッ、ハァッ、か、鑑定」


 俺は“戦闘力はかるやつ”を付け、キング・パラサイトスライムを見た。



 レベル:999

 戦闘力:14500000



 そこに表示された数値は、おおよそスライムのものとは思えないものだった。

 ……俺は試しに、スライムを操り、壁に攻撃してみた。

 すると、壁に大きな切込みが入った。

 ……さらに、剣で切ろうとしてみるが、あまりの硬さに刃こぼれしてしまう。


「……成功だ」


 とりあえず、第一段階、キング・パラサイトスライムを寄生させ、レベル999になるまでレベルドレインさせるのは成功。

 次は、このキング・パラサイトスライムを自由自在に操ることだ。

 一本ならまだ動かせるかもしれないが、大量の触手状のスライムを操れるかどうか分からない。

 ……だが、しずくに貰った薬があれば。


 俺はバッグからビンを一本取り出した。

 そして、それを空中に放り投げ――――

 ――――無数の触手で、一瞬で切り刻んだ。


「これが、レベル999の力……」


 恐ろしい。

 俺のレベルを利用した方法だが、予想以上だ。

 この力をものにできれば、今まで以上の活躍ができる。

 仲間たちの役に立つことが――――



「おっと、そんな場合じゃなかった!」


 そうだった、何のために最終手段を使ったのか忘れてた。

 オナ〇ワームを倒すためじゃないか。

 ……しかし、本当に存在するのか?

 ……いや、だったらこの腕の文字はどう説明するんだ。

 俺の最終手段まで知っているやつだ、とてもじゃないが信じざるを得ない。


 俺は窓の前に立った。

 そして、スライムを操り、大量の触手で窓を突き破った。


「どこだ。どこにいるんだ」


 見えなくても分かる。

 このスライムには何かを感知する能力でもあるのか、窓の外の状況が直接見なくても感じ取れる。

 ……敵は必ず、近くにいるはずだ。


「クソッ、このままじゃどこにいるのか分からないな……。仕方ない、全力を出すしかないッ!」


 俺は上空に向けてスライムを伸ばし、360度全方向に向けて触手を伸ばした。

 スライムは無限に伸び続け、校舎の中を縦横無尽に這いずり回る。


「……見つけた!」


 そいつは確かにいた。

 ピンク色の半透明な人型の生物が、校門の側に立っていた。

 容赦はしない。


 俺は伸ばしていたスライムを集め、その生物に向けて大砲の様にスライムを撃ちだした。

 そして、奴の体を貫いた。




「――――あぇ?」


 気が付くと、見知らぬ場所にいた。


「な、なんだ。どこだここ?」


 周りを見渡すが、真っ白で何もない。

 真っ白な空間が無限に広がっている。



「フォート・アレイス」


「ッ!?」


 誰かが俺の名前を呼ぶような声が聞こえた。

 声が聞こえた方を見てみると――――

 ――――見知らぬ男が、真っ白な椅子に座っていた。


「ようこそ、“時の管理室”へ。私は『時の管理人(タイム・ウォッチャー)』、タキオンという者だ。よろしくね」


 そう言いながら、その男は微笑みながら、静かに茶を飲んだ。

更新が遅くなってしまい、すみませんでした。


レベル999の主人公にスライムを寄生させて、レベル999にさせ、それを操ることで本来の身体能力よりも遥かに上回った力を手に入れるのは、実はずっと前から考えていた設定でした。

やっと書けて、とてもうれしい気持ちです。

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