第72話 お前だけ地獄行き
更新遅れてすみません
「……今度は、あの鎧野郎を倒さないといけないってことかよ。明らかに強いだろアイツ。一体何回死ねば倒せるんだよ」
俺はNo.3745。
新たな力を手に入れ、この世の誰よりも強くなった男だ。
今は、魔法学校の校門の側にいる。
生まれたとき、俺はギフトを持っていなかった。
そのせいで、仲間たちは全滅、俺も瀕死の状態にまで追い込まれてしまった。
だが、そんな俺を助けてくれたのが、『エンド』っていう謎の男だった。
アイツは、俺にギフトを与えてくれたんだ!
ギフト『ソル・ト・ヴァイ・アル・インフェルノ(お前だけ地獄行き)』。
動物を直接殺すと、カウントが一つ増える。
そして、自分が死ぬと、カウントが一つ減る代わりに、一定時間時を巻き戻して、やり直すことができる。
巻き戻した時の世界では、巻き戻す前に起こったこと、具体的には動物が傷つくと巻き戻っても同じ時刻に同じように傷つく。
つまり、ある日の12時にAを殺したとすれば、1時間巻き戻ったとしても何もせずに再び1時間後にAは死亡する。
同じように今度は13時にBに切り傷を付けて2時間巻き戻ったとすれば、12時にAが死に、13時にBの体に勝手に切り傷が付く。
破壊された結果が残り、運命が確定する。
この方法で殺しても、俺自身が手を出したわけではないから、残念ながらカウントは増えない。
そして、この能力を持っている俺を殺した者は、巻き戻った世界に巻き戻る前の記憶を引き継ぐことができる。
正直、この効果だけはデメリットだったが、自分で自分自身を殺す、つまり自殺すれば自分の記憶を持ったままやり直せることも分かった。
俺はこの能力で無敵になった。
相手の攻撃を喰らう前に自殺し、何度も何度も何度も自殺を繰り返して攻撃パターンを覚える。
あとは、相手の攻撃をかわしながら何度も切りつける。
どこにどんな攻撃が来るのか分かるので、避けるのは簡単だ。
フォート・アレイスも、この方法で難なく殺せた。
まぁ、殺すまでに数十回死んだがな。
だが、問題はあの鎧の男だ。
明らかに、フォート・アレイスの何倍も強い。
これは、数百回は死ぬことになるかもしれないな……。
「まぁ、自殺し続ければ、誰も俺の存在には気が付かない。何故なら、最終的に俺は何もしてないことになるんだからな」
やり直しを続ければ、俺を襲ってくる奴らは勝手に死ぬ。
この能力は、カウントが残っている限り、無敵だ。
そして、そのカウントはあと1342も残っている。
俺が負けることは絶対にない!
だが、このとき俺は、この能力の重大な欠陥に気付いていなかった。
※※※※※※※※
――――これから、俺の人生初授業が始まる。
「えー、皆さん、こんにちわ!」
『『『こんにちは!』』』
「えー、まずは自己紹介から。フォート・アレイス、40歳。今は地方でゆっくり暮らしている」
自己紹介すると、突然生徒たちが騒がしくなった。
『えっ? ちょっと何アレ……』
『なんかメッチャ血出てない……?」
「は? 血?」
生徒たちは明らかに俺の方を見ている。
つまり、俺が血まみれになっているということで……。
……下を見てみると。
なんか、左腕がメッチャ血まみれになってた。
「ん!? あっ、イテェッ!」
遅れて痛みがやって来た。
と、とりあえず、どうにかしないと。
「ちょ、ちょっと一旦授業中断します! 少ししたら戻ってくるから!」
そう言って、急いで教室の外へ出た。
……さて。
「なんだコレ?」
未だに血まみれな俺の左腕。
まだ血が流れ出ているようで、定期的に痛みが走る。
とりあえず、流れ出た分を拭かないと……。
ベルトポーチからタオルを取り出し、血を拭き始める。
「…………ん?」
すると、腕に切り傷が現れた。
それが、ただの切り傷ではなかった。
「……何だ、これ」
明らかに、文字が刻まれている。
そんな風にしか、その切り傷は見えなかった。
何故なら、ちゃんと読めるからだ。
「『思い出せ 攻撃しろ 早く殺せ 寄生させろ 敵はオナ○だ』……何だって?」
何だこの文章は。
何を思い出せって言うんだ。
何を攻撃すればいいんだ。
何故早く殺さなければいけない。
――――寄生させろ、だと?
敵は、……オナ○?
「……少なくとも、何か面倒なことが起こっているのは確かだな」
最初の三つの文はまるで意味が分からない。
……だが、最後の2つだけは、意味が分かる。
これは、何かへの警告だ。
俺の、最終手段を、使えと言っている。
そして、敵はオナ○、つまり、オナ〇ワームのことを指している。
しかし、オナ〇ワームの亜種たちはすべて倒したはずだ。
…………いや、もしその前提が間違っているとしたら。
もし、オナ〇ワームの生き残りがいるとなれば?
……この腕に刻まれた文章は、その警告?
オナ〇ワームが、それほどまでに、脅威になっているというのか。
……普通なら、怪しんで様子見をするだろう。
しかし、今回ばかりはそうはいかない。
『寄生させろ』というのは、明らかに俺に対しての言葉だからだ。
寄生の意味は、俺しか知らないはずだ。
……俺はベルトポーチから、箱を取り出した。
箱を開けると、中には注射器が一本入っている。
これは、しずくに貰った薬だ。
『この薬は、魔王さまが倒した魔物から採取した成分を抽出して培養したもの。本来の効果は、恐らく生物の急激な進化の促進』
『知能指数の低い動物にこの薬を投与すれば、いきなり人間レベルの知能を獲得できる、まさに神の秘薬、いいえ、禁忌の薬と言ったほうが良いかもしれないね』
『じゃあ、もしこの薬を高い知能を持つ生き物に投与すると、どうなると思う?』
『……恐らく、圧倒的な思考能力、処理速度、認知能力、並行処理能力、その他多くの力を得られると思う』
『だけど、その力に耐え切れず、脳がオーバーヒート、または体が脳についていけなくなる』
『……一応、麻酔薬も混ぜてあるけど、出来ればこの薬を使わないほうが良いよ』
……しかし、コレを使わなければ、俺の最終手段は使えない。
覚悟を決めるために、頬を叩く。
「……よし」
俺は意を決して、ある魔物を生み出すのに取り掛かった。
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