第71話 対???戦
更新が遅くなり申し訳ございません。
今、他作品の短編集を書いているため、最新話を書き終えるのが遅れてしまいました。
あと、言葉の表現などが難しく、書く手が止まってしまったこともありました。
ですが、無事更新できました。
「まさか、魔王さまが教師になられるとは思わなかった……」
学校の端にある小さな部屋で、吾輩はそんなことを呟く。
魔王さまからこのことを聞かされたときは正直驚いた。
だが、確かに魔王さまの力なら生徒たちに教えられることは多いだろう。
魔王さまは確かに勇者としては戦う才には恵まれなかった。
しかし、それを補うための努力をあの方は怠らなかった。
力が足りなければ知恵で補い、知恵が足らなければ“悪”知恵で補い。
あの方は、“勇者”であり、勇者であることを諦め自らを“悪者”に仕立て上げ、そして今日まで生きてきた。
生きるためなら、どんな手段でも使う。
どれだけ姑息で、非人道的であろうとも、それが自分自身が嫌うやり方でなければ何でもやる。
非常に合理的な考え方だ。
吾輩にはとても真似できない。
魔法学校の生徒たちは、普段は清く正しい騎士道精神や、闘いでのルールやマナーなどを学んでいることだろう。
そんな者たちにとって、魔王さまの戦い方はさぞかし斬新で、そして認められないだろうな。
恐らく、魔王さまは奇襲や罠などを使って少しずつ戦力を削っていき倒すいつもの戦法でいくだろう。
そんな戦い方、生徒たちは納得がいかないであろう。
まぁ、所詮は赤く成り始めた渋い柿共。いずれ学んでいき、熟れていくことであろうな。
今現在、吾輩は魔王さまの指示に従い、この部屋で待機している状態である。
魔王さまが授業を終えた後、吾輩が生徒たちに剣技を教えるためにこの学校に連れてこられた。
魔法を教えるために、一応アロマも来ているのだが、あやつは先ほど待つのにくたびれてどこかへ行ってしまった。
全く…………。
「…………む?」
そんなことを考えていたとき、不意に窓の外の校門に人影が見えた。
この時間帯に訪問者か、と思ったがどうやら校内から外へ出るところのようだ。
早退かとも思ったが、どう見ても生徒には見えない。
制服を着ている様子はない。
では一体誰なのか。
……これは吾輩の悪い癖の一つなのだが、見知らぬ相手に対しては必ず『鑑定』を使ってしまう。
『鑑定』は吾輩のギフトで、見た相手のギフトの効果を知ることができる、特殊なギフトだ。
相手のことが信頼できないというのもあるが、用心深すぎると自分でも思うところがある。
「『鑑定』」
しかし、今回ばかりは自分の用心深さを褒めるべきだろう。
普通ならば、何も表示されず、ただ能力が不発に終わるだけだ。
そう、何も表示されなければな。
「…………これは?」
そこには、いつものように説明文が表示されていた。
そしてその内容を読んで――――
「――――まずい」
吾輩は急いで走り出した。
※※※※※※※※
「まさか、ギフト持ちの魔物がこの学校にいたとは――――ッ。一刻も早く魔王さまに伝えなくては!」
ギフト持ちの魔物がこの学校に来ていたとなれば、魔王軍と関連している可能性が高い。
ならば、その危険性を早く魔王さまに伝えなくては。
あの左の角を曲がれば、魔王さまがいる部屋にたどり着く。
「魔王さ――――ッ」
しかし、その先には魔王さまはいなかった。
そこにいたのは。
「あ、ああ――――ッ! 嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だッ!?」
そこにいたのは、魔王さまの姿をした肉塊だった。
急いで駆け寄って生死を確認するが、結果は変わらない。
「そんな、そんなわけが、魔王さまが死ぬなんて」
魔王さまは、正直言えば戦闘能力は吾輩よりも圧倒的に劣る。
だが、その代わり逃げや撹乱に戦闘スタイルを特化させ、絶対に負けない戦闘方法を確立したのだ。
だから、そんな簡単に負けるはずが無いのだ。
そのとき、あの見知らぬ人のことを思い出した。
「あのギフト。そして魔王さまのこの状態。まさか―――――ッ」
全てを悟ってしまった吾輩は、怒りに我を忘れ、窓を突き破って外に出た。
アイツは、奴はどこだ!
まだ近くにいるはずだ。
絶対に追い詰めて、捕まえてやる!
「……いた」
吾輩の先、数十メートル先にあの人物が歩いている。
「……ん? なんだアンタ? 俺になんか用か?」
吾輩に気付いたのか、奴が振り向きこちらに話しかけてきた。
吾輩が話すことは無い。
ただ、奴を捕えることだけだ。
もし、ここで奴を捕えられなければ、次の吾輩がどうなるか分からない。
絶対にここで捕えなければ!
殺さずに、捕獲に向いた剣術は……。
「……秘技」
「あ? なんですか――――」
腰から刀を抜き、土を蹴る。
最短距離を最速で駆けて行く。
間合いに入った瞬間、刀を回転させて持ち替える。
そして、切り刻む。
ただし、刀のみねの部分でだ。
簡単に、素速く。
骨を折るために、体が動かなくなるように刀を押し込む。
背骨、鎖骨、膝の関節、肩の関節、大腿骨の関節。
全てを砕いていく。
赤子の様に這いずることすらできなくなるように。
「砕骸月光斬」
「――――ガッ!?」
男が倒れ込む。
これで動くことはできまい。
「さて、まずは話してもらおうか。貴様は一体何者だ」
「カッ…………」
「……どうした? さっさと吐け!」
返事が無かったので、男の体を蹴る。
男の体が寝返りをうつように回転する。
男の顔が露わになった。
その顔は。
「……おい?」
まるで喉に餅でも詰まらせたかのように、泡を吹きながら苦しんでいた。
「おい! しっかりしろ! どうした!」
しまった、やりすぎて痛みでショック症状を起こしたかとも思った。
しかし、その考えがいかに浅はかであるか思い知る。
何故なら、地面を見れば、ガラスの容器に入った錠剤があったからだ。
そして、フタが開いていて、何錠かが地面に落ちていた。
「まさか、こいつ――――ッ! 吐き出せ! 今すぐ吐き出せ!」
不味いぞ!
今ここで死なれたら、全てが無駄になる!
「吐き出せッ! 吐き出せ――――ッ!」
※※※※※※※※
「エンド、奴は一体何者なんだ?」
吾輩はシャクス。
魔王軍幹部の一人として今は生きている。
本来はこんな立場など望んではいないが、吾輩の目的を遂行するため、仕方なくやっている。
しかし、その計画に邪魔な奴が一人だけいる。
あの、エンドとかいう男だ。
「吾輩の力を使っても、全く有益な情報を得られないというのは、一体どういうことだ?」
エンド。
年齢不明。
出身不明。
種族不明。
唯一分かるのは、男であることと、異様にシチューを好んでいることぐらい。
それぐらい、有益な情報がほとんどない。
「そして、あの謎の魔物……」
あの魔物の存在はあまりにも異質だ。
元は、恐らくDr.が生み出した大量の人型の魔物だろうが、あれらとは全く姿が異なっていた。
アレは、色を除けば見た目はほぼ人だった。
そして、あの能力。
一度だけ見たことがあるが、何もしていないのに、大木を切り倒したように見えた。
あの魔物は何もしていなかったのに、奴の目の前の大木が突然倒れたのだ。
超高速で切り倒したとは考えにくいし、時が止まった感覚も無かった。
……だが、あの魔物の能力は大方どういったものか予想はつく。
解決できない問題ではない。
「おや、これはシャクス様。こんな所で何を?」
「――――ッ。エ、エンドか。貴様こそどうした」
どこからか、フードを深く被った男が現れた。
フードのせいで顔が良く見えないが、こんな男はこの魔王の館に一人しかいない。
「いやはや、私目が見えませんもので、足元をコレで確認しながらいつも歩いておるのですが、先日折れてしまいましてね。直しに向かっている途中なんです」
エンドの手の中には、一本の白い杖が。
白い杖は、視覚障害者が持っている杖だ。
「貴様が目が見えないという話は初めて聞いたが」
「おや、ご存じではありませんでしたか」
「ああ。他の者に聞いた話では、普通に目を開いて物を見ていたと言っていたぞ」
「ああ、それはですね」
すると、エンドはフードの中に手を入れたかと思うと。
何かをフードの中から取り出した。
「……これは」
「義眼です。よくできてるでしょう。本物とほとんど誰もが見間違えます」
それは、紛れもなく義眼だった。
しかも、二つ。
「昔に少し眼をやってしまって、それから義眼で生活してるんです」
「そ、そうか」
「そういえば、シャクス様はいつもサングラスを付けている様子ですが、もしかしてあなた様も何らかの障害が?」
「あ、ああこれか。これはそういう類の物ではない」
サングラスは、趣味というのもあるが、他に意味がある。
「そうでしたか、それは失礼」
「ところで、あの桃色の魔物のことなのだが」
「ああ、No.3745のことですか。今ごろ勇者たちを皆殺しにしているところですよ、ご安心ください。アイツは、理不尽な力を持つ者でもない限り倒せませんから。例えばあなた様のようなね」
「いや、そうではなく。あの魔物は一体ど――――」
すると、突然エンドの雰囲気が変わった。
その気に押され、一瞬言葉が詰まってしまう。
「――――それは、企業秘密です。いくらシャクス様でも教えることはできません。では、失礼」
そして、そのままエンドは離れていった。
……結局、有益な情報は得られなかったか。
「……頼むぞ、アレイス。準備はできているんだ。後はお前の覚悟次第だ」
だが、もう準備はできている。
あとは、フォート・アレイスが覚悟を決めてくれれば、あの魔物は倒せる。
頼んだぞ……ッ。
さて、No.3745のギフト能力は一体どのような能力でしょうか。
分かった人は天才だと思います。
元ネタも分かった人はバケモンだと思う。





