第67話 壁とか触られたら案外バレる
「さてと……」
俺は服装と持ち物の確認をする。
服は本気で戦うときの、ぴっちりタイツのような体に張り付くかなり薄い素材の服だ。
非常に伸びやすく、とても動きやすいため普通の服ではできないような動きも可能になる。
ズボンも比較的柔らかいモノを履く。
そして、すねと前腕の外側にはプロテクター。腕のは、単純に肉体で戦うときにボクシングのように攻撃をこの部位で受けることが多いためで、すねは攻撃にも使えるし、相手の攻撃を受けると股間の次に動きが止まるほど痛い部位だからだ。
膝もプロテクターを付ける。
手は指だけ出るグローブを装着。これは俺の好み的なところもあるが、このグローブがあると剣とか何かを握るとき、やっぱり手が痛くなりにくい。
靴は安全靴並みに硬いもの。攻撃のときにも有用だし、ガラスが飛び散ったような危険な足場でも平気で歩ける。
あとはベルトの左右に少し大きめのバッグを1つずつ取り付ける。
中には長いロープが3本と、1メートルくらいの短めのロープが1本、魔力回復ポーションを2本ほど、水と様々な薬など、必要なものからあったら便利なものまで色々入っている。
そして、最後に腰に短剣を刺す。
……とまぁ、こんなもんでいいだろ。
「あっちの方も終わったみたいだな」
どうやら生徒たちもチームの振り分けが決まったらしい。
「うっし、じゃあ振り分けは決まったな」
「「「はい!」」」
「おー、いい返事だ、やる気あるな! で、残りの二人は誰だ?」
「はい。俺とあいつです」
俺が尋ねると2人が手を上げた。
両方とも男のようだ。
まぁ、俺的にはそっちの方がやりやすい。
「おぉ、君たち二人か。よかったな、元勇者の戦いを間近で見れるなんて経験、そうそうできないからな。ちゃんと見てしっかり吸収しろよ~?」
「「は、はい!」」
いい返事が返ってくる。
まぁ、間近で見るっていっても、俺が見る景色を見れるのと、俺の解説を聞けるだけだから、間近って言っていいのかは正直分からんが。
「あ、あとさっき言い忘れてたけど、他のクラスが使っている教室とか、他の先生が使っている部屋とかに入るのは禁止だからな。もちろん、ゲーム中はこの教室に入るのも禁止だ」
「え、えーとアレイス先生。それはどういう意味でしょうか? 訓練は体育館で行うのではないのですか?」
生徒の一人が俺に質問をする。
「ん? あ、そっか。俺言ってなかったか。場所は体育館じゃなくて、この学校の敷地内全部だ」
「「「えっ」」」
生徒たちが驚いた顔をする。
「何をそんなに驚くんだ。本当のときの戦いだって、場所の範囲に限界なんてないだろう」
『それもそうか』といったようにうなずく生徒たち。
「し、しかし先生。それではあまりにも範囲が広すぎます」
「分かった、じゃあ校舎の屋根の上と、校舎の裏側にはいかないようにする。これでいいか?」
生徒たちは納得したようにうなずいた。
「よし! じゃあ1チーム目は準備を始めろ」
さぁ、俺も最後の準備だ。
※※※※※※※※
俺は2人の生徒を専用の別室へと送り届けた。
頭にカメラを取り付け、体の急所の部分にボタンを取り付ける。
この場合の急所とは、剣などでダメージを受けると致命傷になりかねない、頭や首、背中などのことを指す。
場所として、頭のてっぺん、首の後ろ、腹の胃の辺り、背中の中心、の4か所に取り付けた。
さて、準備としてはこれで終わりかな。
「よし、じゃあ今から俺が校舎のどこかに隠れるから、5分経ってこの時計のアラームが鳴ったら、1チーム目は俺を探し始めろ」
そう言いながら、置時計を教卓の上に置く。
押すとアラームが5分後になるように設定済みだ。
もちろん、制限時間の1時間後にも鳴るようになっている。
「それじゃあ、開始だ」
俺は時計のボタンを押し、部屋の外に出て移動を始めた。
~~~5分後~~~
『ピピピッ、ピピピッ』
5分が経ったことを置時計が知らせる。
「ぅしッ、じゃあそろそろ行こうぜ」
「そうだな」
生徒たちが部屋の外に出る。
「じゃあ、作戦通りに行くぞ」
話はアレイスが部屋を出た5分前に遡る。
※※※※※※※※
『相手は元勇者だ。舐めてかからないほうが良い』
そういうのは、クラスの中でも上位の成績を持つ、オスマン。
リーダー性があり、今回のチームの中でもリーダーを担うことになった。
頭もそこそこ切れ、魔法技術も高い。
『そんなこと、全員分かりきってるよ。で、どうするんだオスマン。何か作戦があるんだろ?』
そう聞いたのは、アレイスに質問をしていたアグニスという名の少年。
相手の力は未知数、一体何をしてくるのか分からないという状況に、戦うルールは鬼ごっこ。
どういった戦いになるのか想像がつかない生徒たち。困惑している中でのチームでのリーダー。
相当なプレッシャーがのしかかっているはずだった。
しかし、オスマンは早速その力を発揮する。
『鬼ごっこである以上、まずはアレイスさんを見つけることからだ。このチーム10人を3・3・4で3つに分ける』
『分かったけど、なんでその分け方なんだ? ちょうど5・5で分ける方が綺麗で、人数の差ができない。そっちの方が見つけたときの対応がしやすいだろ』
『焦るなアグニス。何のためにこの通信機が3つあると思ってるんだよ』
そう言いながら、手のひらに乗せたイヤホンのような3つの機械を皆の前に差し出す。
その意味に気が付いたのか、誰かが『あ』と声を漏らした。
『そう、3つに分けてもこの通信機を持った人が一人でもいれば十分伝達はできる。しかもちょうどよく3つあるんだ。もう、チームを3つに分けろと言ってるようなもんだろ』
『で、でもよォ。回復魔法が使えるっていうあの腕輪は2つしか無ェじゃねェか。それはどうすんだよ』
そう聞いたのはルグド。
口調からでもわかるように、荒っぽい性格をしており、攻撃方法も強化魔法による肉体の強化からの釘バットというヤンキーのような戦い方をする。
強化魔法を使えるという点では、ヤンキーよりも悪質かもしれないが。
『腕輪は3人のチームそれぞれ1個ずつにする。4人のチームは3人のチームよりも1人多い分、戦いのときに対応しやすいから、その分けがを負うリスクも少ないしな』
『な、なるほどォ』
ルグドは納得したように腕を組んで唸る。
『それじゃ、今からチーム分けをするぞ』
※※※※※※※※
「じゃあ、作戦通りに行くぞ」
オスマンのその言葉を聞くと作戦通り、皆は4・3・3に分かれて別行動を開始し、アレイスを探し始めた。
……少し経って、教室の近くから生徒たちが離れると。
「ふぃ~、いやーまさかアイツらも教室のすぐ目の前にいるとは思わなかっただろうな」
一見何もないように見えるところから急にアレイスが現れる。
そう、彼は『投影』を使って体の表面にスクリーンを展開し、後ろの背景と同じ映像を映し出すことで光科学迷彩のようして隠れていたのだ。
「さて、俺も移動するか」
そうして、彼は歩き始める。
「さーて、魔法学校のお坊ちゃん、お嬢ちゃんたち、覚悟はいいかな?」
一方的な戦いをするために。
一体何話で終わるんだろうかなぁ、と考える今日この頃です。
しばらく終わる予定はないので安心してください。





