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第66話 アレイス流かなりリアル鬼ごっこ

しずくのかわいい一面も、いつか書きたいですね~(*^^*)ニッコリ

 今日は10月23日。

 天気はいいが、朝は少し寒くなってきた。

 これから冬に向けてドンドン寒くなっていくのだろうか、などと考えながら、俺は今日の準備のためにしずくの研究室へと向かった。



「おーい、しずくー。入っていいか―?」


 しずくの研究室の部屋をノックする。


「入って、どうぞ」


 部屋の中から返事が聞こえた。

 俺はドアノブを回し、中へと進んだ。


「しずく、悪いけど頼みがあぁぁ……? あれ?」


 部屋の中に入ると、いつもの独特な薬品臭が漂ってくる。

 しかし、部屋の中には肝心のしずくの姿が見えない。

 おかしい、さっき返事の声は聞こえたぞ。

 一体何が――――


「わッ」


「うおわぇあっっ!?」


 突然後ろから誰かに肩を叩かれた。

 何も警戒していなかった俺は見事にはまってしまい、変な声を上げてしまった。

 後ろを振り向くと、やはりそこにはしずくがいた。


「な、何だよしずく……。いきなり驚かせるなよ」


「いやぁ、たまには幽霊らしいこともしなきゃと思って」


「幽霊って、お前“ゴースト”じゃ――――いや、似たようなもんか」


 しずくが無邪気な笑顔を見せる。

 うん、やっぱりいつ見ても子供にしか見えない。

 本人には悪いが。


「っていうか、今俺の後ろから来たよな? さっきまで部屋の中にいたのに、一体どうやって」


「簡単だよ、魔王さまがドアを開けると同時に壁をすり抜けて部屋の外に出ただけ」


 あっ、そうか。

 こいつゴーストだから壁のすり抜けくらい普通にできるのか。



「で? 今日は一体何の用で来たの?」


「ああ、そうだった。お前に頼みがあって来たんだった」


 いけないいけない。驚きのあまり用事を忘れてしまっていた。


「実は明日から魔法学校で授業をするんだけど」


「うんうん」


「そのための道具を作ってもらいたいんだ」


「うん。……え? 今から?」


 そう、今からである。

 明日に必要なものを今から作って欲しいと頼んでいるのだ。

 でも、しずくなら。


「無理か?」


「……楽勝!」


 こう答えてくれるに決まっている。

 本当に頼もしい。


「早速なんだが、こういうものを作って欲しくてな」


 俺は原案を書いた紙をしずくに見せた。



 ※※※※※※※※



 魔法学園。

 それは魔王軍に立ち向かうための人材を育成する教育機関である。

 そして今、とある国の魔法学校で、ある特別な授業が始まろうとしていた。


『えー、皆さん今日はですねぇ? 講師として元勇者の方が来られるのでねぇ? 失礼のないようにねぇ?』


『『『はーい』』』


 生徒たちがあまりやる気のない声で返事をする。

 授業はもう6限目、時間にして14時30分。

 そりゃあ疲れてきて眠くなるころだろう。

 やる気のない返事も納得だ。


『それじゃあアレイスさん、お願いしますねぇ?』


 担任の先生が俺を呼ぶ。

 それを聞いた俺は勢いよく扉を開け、中に入った。



「えー、皆さん、こんにちわ!」


『『『こんにちは!』』』


 今度は先ほどとは違い、元気な返事が返ってくる。

 あんまり、こういう経験が無いから、一瞬たじろいでしまった。

 落ち着くために一回深呼吸をする。


「えー、まずは自己紹介から。フォート・アレイス、40歳。今は地方でゆっくり暮らしている」


 まぁ、地方っていっても魔王城なんだけどな。

 すると、生徒たちが途端にざわつき始めた。


『えっ、今40歳って言った?』


『いや、どう見ても20代だし、若く見えても30だろ』


 等のような会話が聞こえてくる。

 まぁ仕方ないか。やっぱりこの見た目は若すぎるか。

 うーん……、この薬のおかげで体が軽くなったし、いいこと結構あるんだけど、こうも毎回ビックリされるのもなぁ。

 しずくに元に戻る薬を作ってもらった方が良いのかなぁ……。

 ……とと、今は授業中だった。


「みんな、この学校の先生で、『フォート・シルフィ』って人は知ってるかな?」


 俺が尋ねると、ほとんどの生徒が頷いた。

 やっぱりか。

 母さんは化け物……、えー、破壊神……、えーと、全知全能並にできることが多すぎて、なぜ魔王軍との戦いに参加しなかったのか不思議なくらい強いからな。

 ……今考えてることももしかしたら聞かれてるかもしれない。

 そんな母さんなら、この学校の中でかなり高い地位についていてもおかしくはない。


「俺、あの人の息子なんだよ」


『『『――――――えええええええええええッッ!?』』』


 その場にいた、俺以外の全員が驚きの声を上げた。

 まさかの、担任の先生も驚いている。

 しかし、すぐに皆『だったら納得だ』といったような表情になる。


「というわけで、この見た目でもちゃんと40歳なんだ」


 まぁ、実際は薬で身体年齢を20歳にしてるだけだがな。

 ……ってか、よく考えたら不思議だよな。薬飲むだけで若返るなんて。

 しずくはやっぱり天才だなぁとしみじみ思う。



「さて、今日俺が君たちに教えることだが……。実習で教えようと思う」


 俺は具体的な内容を黒板に書いていく。


「具体的に何をするのかというと、ズバリ“鬼ごっこ”だ」


 黒板にデカデカと“鬼ごっこ”の文字を書き、思いっきり叩いた。


「鬼ごっこといっても、ただのお遊びじゃない。武器アリ、魔法アリのルールほぼ無制限の鬼ごっこだ」


 俺は持ち込んだバッグの中から、しずくに作ってもらった“ある物”を取り出す。

 そして、生徒たちに見えるように高々と掲げた。


「鬼ごっこのときは、このボタンを使う。このボタンは押すと大きな音が鳴り、赤く点滅する」


 実際に押してみると、教室の中に警告音のようなものが鳴り響いた。

 ボタンが赤く点滅し、一目見ただけで押されたかどうか分かる。


「次にこれ、回復魔法を閉じ込めた魔法石を埋め込んだ腕輪だ。即席の物で少し荒い作りになっているが、3回まではそこそこの威力の回復魔法が使える」


 俺は腕輪を4つ取り出し、机の上に置いた。


「最後にこれ。通信マイク。これを付ければ、少ない魔力で誰でも簡易的に通信魔法が使えるものだ」


 通信魔法とは、登録した相手に対してテレパシーのようなものでお互いに会話できるようになる便利な魔法だ。

 ただし、その習得はかなり難しく、属性を持たない魔法であるため誰もが覚えることのできる魔法ではあるのだが、術式を操るのが難しく途中で通信が勝手に切れてしまうなどの問題が起こるのだ。

 しかし、しずく新開発のこのマイクを使えば、テレパシーとは行かなくとも、無線機のような役割をしてくれる。

 俺はマイクを6つ、机の上に置いた。


「先ほど、ルールはほぼ無制限といったが、簡単なルールが少しだけある」



 俺はルールを黒板に書きながら、説明していく。


「今回の鬼ごっこは1チーム10人ずつ、このクラスは22人いるみたいだから、計2チーム作る。チームの中で2人回復役と3人通信役を決め、それぞれには先ほど俺が説明した装置を付けてもらう」


 さらに俺は説明を続ける。


「ゲームの勝利条件は、生徒たちチーム側は俺が体に着けたボタンを一つでも押せたら勝利。俺は、1時間逃げ切るか、生徒たち全員を行動不能にするか降参させれば勝ちだ」


 俺は一つ一つ指を差しながら、なるべく丁寧に説明した。



「以上で、大体のルール説明は終わりだ。何か質問がある人は挙手を」


 すると、生徒の中の一人が手を上げた。

 俺はその男の子を指さした。


「はい、そこの君。名前は?」


「はい、アグニスと言います。えーと、勝利条件についてなのですが、ボタンは一体どこに着けるかと、行動不能がどういった状態を表すのか疑問に思いまして」


「ボタンは俺の首、腹、背中、頭にそれぞれ1つずつ着ける。どれも、人間の体の中で急所に当たる部分だからな。行動不能については、単純に気絶したり、縄でぐるぐる巻きにされて動けなかったりとかかな。他に質問は?」


 また、別の生徒が手を上げた。

 今度は女の子だ。


「はい、君の名前は?」


「えー、フィオネです。えと、あの、さっき10人2チームって言ってましたけど、余る2人はどうなるんですか?」


「残りの二人は別室で俺の戦いを見てもらう。専用の魔導カメラを俺の体に着けておいて、その映像を見てもらい、俺の戦いを見て学んでもらう。他には? ……いないようだな」


 質問が無くなったようなので、俺は再び説明を始めた。 



「回復役は、俺の攻撃を受けて倒れた仲間を回復させて、復活させるため。通信役は、分かれて手分けして俺を探すときに役に立つ。どちらも重要な役割だ」


 実際の戦いでも、これらの役割はとても大切だ。

 回復役がいなければ、相手を圧倒的に上回る力でもない限り、いずれ消耗して負けてしまうかもしれないし、仲間同士での素早い伝達は戦闘を有利に進めることができることが多い。

 それを見据えての、今回の鬼ごっこだ。


「君たち生徒は、武器も魔法も何でもアリ。どんな方法を使ってでも、俺を追い詰めて、ボタンを押せば勝ちだ。一方俺は……」


 俺は腰から長剣を鞘ごと抜くと、地面に置いた。


「俺は剣も魔法も、攻撃には一切使わない。そのかわり、それ以外なら何でもする。こちらも本気で戦わせておらうからな」


 もともと、俺は剣も魔法も苦手だ。

 だから、これでも十分戦える。


「さて、早速だが、チームを組んでくれ。そして残りの2人は、前に出てきてくれ」


 早速、生徒たちのチーム分けが始まった。

感想を書いてくださると、嬉しいです。

あと、誤字脱字などがあったら、報告してもらえると非常にありがたいです。

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