第65話 一方そのころ
あまり量は書けませんでしたが、今回はシャクス回です。
「クソがッ!」
魔王が盃を床に投げつけた。
ガラスの盃は見事に砕け散り、辺りに中身のワインと破片が飛び散った。
「落ち着いてください。たかがDr.一人失っただけではありませんか」
「たかが? “たかが”だと!? またあのフォート・アレイスに幹部が一人倒されたのだぞ! それも今回はDr.だ! アイツの科学力は世界一と言っても過言ではなかった……! それなのに……」
魔王は玉座から立ち上がり、怒りで興奮しながら、最後には疲れ果てて膝から崩れた。
床のカーペットが握りこぶしに巻き込まれ、歪んでしまっている。
「なぁ、次はどうすればいい……。教えてくれ、エンド」
魔王は、エンドと、全身真っ黒のコートを着た、フードを被った男に問いた。
それを聞いたエンドは、口角をニヤリと上げ、答える。
「それなら、ちょうどいいのがいますよ」
すると、エンドはどこからか、人型の生物を取り出した。
「いてて……、どこだここ?」
その生物は、見た目は人だが体の色がピンク色で半透明。
そう、あのオナ〇ワーム【No.3745】だ。
しかし、あのときと違っているのは、顔の部分の形が完全に人間のそれと同じになっていることだ。
「お前の出番だ、No.3745」
「はァ? 俺はフォート・アレイス以外に興味はn――――おい、まさか」
「ああ、そうだ。お前にこれからフォート・アレイスを殺してもらう」
「――――ハハ、やっとかよ。待ちくたびれたぜ」
3745は狂気に満ちた笑顔で、答える。
その様子を、何が起きているのかあまり分からない魔王が不思議そうに見ていた。
「あの、エンド、“ちょうどいいの”ってソイツのことか? その半透明の」
「ええ、そうです。こいつはDr.が生み出した魔物のうちの1体でして、フォート・アレイスとの戦いで唯一生き残った魔物です」
「何?」
「こいつの復讐心は相当なものですよ。なにせ、目の前で数千もの仲間を殺されたんですから」
魔王が3745の方をチラと見る。
「しかし、あまり強そうには見えないんだが……」
「心配はいりません。こいつの復讐心は何者にも劣らない強大なもの。たとえ死んだとしても、相手を殺す覚悟で戦ってくれますよ」
「そ、そうか」
その様子を、部屋の外から見ていた男が一人。
シャクスである。
「そろそろ頃合いか……」
そう言いながら、部屋から離れていった。
※※※※※※※※
「よし、これであとはこの薬を、しずくの部屋の机の上に置いておけば、勝手に気づくだろう」
シャクスがとある薬の入った管をポケットに忍ばせる。
『……いつも誰も彼も裏切って、恥ずかしくならないのか?』
と、不意にそんな声が聞こえてきた。
「その質問には前に答えたはずだが」
『いや? そろそろ心情も変わってきたんじゃねェかと思ってな』
そう言いながら、何者かがシャクスに近寄る。
“それ”はシャクスの耳元に近づくと
『魔王軍に所属しておきながらその敵であるフォート・アレイスに手を貸し、かと思えばフォート・アレイスを簡単に裏切り、結局のところお前は誰の味方なんだよ』
「…………その質問も答えたはずだ」
シャクスの言葉に、若干だが怒気が混ざり始める。
しかし、“それ”はお構いなしに話を続けた。
『お前、Dr.と仲良かったよな。それなのにあっさり裏切ったよなァ』
「あいつは性格はいい奴だが、やってることは完全に人の道を外れているからな。死んで当然だ」
『それお前が言えたことかよ? ブーメランって知ってるか?』
「……いい加減にしろ。一体何が言いたいんだ」
今度はかなりの怒気を込めてシャクスが言い放つ。
その問いに、“それ”はヘラヘラしながら、返答する。
『Dr.もいい奴だったよなァ。お前のことを家族みたいに慕ってたよなァ?』
「…………やめろ」
『そんなDr.を、お前は躊躇もなく見殺しにしたよなァ? あんときのアイツの顔、ひっでェ顔してたなァ!』
「…………やめろッ」
『なァ、あんとき、お前どんな気持ちだったんだよ!? なァ!?』
「やめろと言っているだろうッ!!」
ついにシャクスの堪忍袋の緒が切れ、彼の拳が壁に叩き付けられた。
瞬間、亀裂が入る間もなく壁が崩壊し、部屋が2つから一つになってしまう。
大量の瓦礫とともに、シャクスの頬を汗が伝い落ちる。
「邪魔するだけならとっとと消え去れッ!」
『なんだよ~、そんなに邪険に扱わなくてもいいだろォ? お前の唯一の理解者なんだからよォ』
「何が唯一の理解者だ」
『それはそうとしてよォ。ほんとにお前はこのままでいいのか? 最後には全員に憎まれることになっちまうぜ?』
“それ”がそう問いかけると、シャクスは黙り込んでしまう。
が、少し時間をおくと、重たく口を開いた。
「……別に憎まれようと、誰も味方がいなくなろうとも、俺は別に構わない。目的さえ達成できればな」
『ふーん、そうか。あと、お前一人称元に戻ってるぞ。気を付けろよ』
「…………忠告、感謝する」
そうして、シャクスはまた彼自身の願望のために、動き始めたのだった。
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