第64話 俺は俺のままで
更新が遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
忙しさと、頭の中にネタの神様が降りてこなかったこともあり、書けていませんでした。
「あー、フォート・アレイス君だったかな?」
「はい、そうです」
「私はこの学校で教頭をしている、『ヒィズ・オリーブ』という者だ。オリーブと呼んでくれ」
俺は学校に入ると、事務室に向かい、事情を説明し、校長か教頭か、担当の方に合わせて欲しいと頼んだ。
すると、臨時の新教師は、教頭がまず挨拶をするらしく、教頭のもとに通された。
「話は君の母である、セルフィさんから聞いているよ。いやー、元勇者である君にわが校の教師になってもらえるなんて、夢にも思わなんだ」
「いえいえ、俺は別にそこまで強くはないので、お役に立てるかどうか」
「何を言うんだ! 聞いたところによると、君と君の仲間が魔王を倒したらしいじゃないか! すごいことだ、勇者だったとしても、なかなかできることじゃないよ」
「ハハハ」
俺は魔王を倒してなんかいない。
愛する恋人を目の前で失ったことにショックを受け、気絶しただけだ。
魔王を倒した勇者なんて、そんな名誉、俺には重すぎる。そして、俺が受け取っていいものではない。
「えーと、君は……40歳か。ん? 40……40!?」
オリーブさんが、紙と俺の顔を交互に見て、変な声を上げた。
恐らく、俺の見た目の年齢が、実際の年齢よりもかなり若いからだろう。
説明はしたいところだが、知らない人にしずくの秘薬のことを話すのは流石に気が引けるな……。
……あ、そうだ。
「ほら、俺、あの人の息子なんで」
「ん? ああ、そういうことか。なるほど、確かにシルフィさんの息子ならその見た目なのも納得がいくな」
どうやら、オリーブさんは納得してくれたようだ。
俺の母さんはスキル『老化抑制』のおかげで、60歳なのに見た目は30後半に見える。
その母さんの息子である俺も、同じようなスキルを持っていてもおかしくはないだろう。
そう解釈してくれてると思う。
「ところで、俺はいつから何をすればいいのでしょうか」
「えぇーと……、来週から実技の授業を担当してもらうことになるかな」
オリーブさんが紙を見ながらスケジュールについて教えてくれた。
来週から、第3学年の全クラスで日別に実技の授業を行うらしい。
ちなみに、魔法学園は12歳のときに入学し、3年間過ごす。
つまり、第3学年は最高学年ということになる。
そして、第3学年は皆15歳。俺が本気で魔王討伐を目指し始めた年でもある。
そう思うと、少しくるものがある。
「セルフィさんいわく、君は体術が得意だと聞いているのだが」
「あ、はい、鍛えてるんで」
俺はシャツの袖口のボタンを外し、裾をまくった。
現れたのは、長年苛め抜いてカチカチムキムキになった俺の腕。
それを見て、オリーブさんが感心するような声を出した。
「さすがは元勇者、今でも健在か」
「なんなら当時よりも強くなってるかもしれませんよ」
「ハハハッ、それなら安心だ」
俺が服を元に戻すと、オリーブさんが鍵を渡してきた。
「ついてきたまえ。君専用の部屋の場所を教えよう」
「そんな、俺専用の部屋なんて、そこまでしてもらわなくても」
「いいんだよ、こちらとしては君はお客様のようなものなのだから」
「そう……ですか」
案内されたのは、校舎の端に位置する、少し小さめの部屋だった。
オリーブさんは「この部屋の中にある物は自由に使ってくれて構わない。あと、必要な物であればもちこんでもいい」だそうだ。
かなりの高待遇だな。
「ふぅ……」
俺は部屋の中に置いてあった椅子に座る。
横を見ると、何冊か教科書らしきものが並べられていた。
魔物の図鑑や、体術や剣術の型、薬草の図鑑など、様々な種類のものがある。
俺は何冊か読んでみることにした。
~~~1時間後~~~
「全っっっ然分からん」
何冊も読んだが、俺が知っていることがほとんど載っていない。
唯一俺も知っていたのは、基本的な魔法の使い方と、薬草や魔物の知識などだ。
それ以外の、剣術やら、体術やらは全く知らないことばかりなのだ。
こういったことも、もしかして20年の間に変わったりしたのか?
……いや、さすがにそんなことはないか。
それとも、単純に俺が無知なだけなのか。
いや、それも違う。
恐らく、俺の戦い方の都合上、この教科書に載っているようなことが必要なかったから、知らないだけだと思う。
俺の戦い方は、基本的には相手を撹乱し、逃げながら地道に相手を削っていくか、相手の死角から不意打ちするかのどちらかだ。
この際必要になるのは、逃げたり撹乱したりする技術と、相手を一撃で狩り取る技術、つまり盗賊や暗殺者のようなものだ。
そんな職業に必要な技能や知識を、学校で教えるはずもないだろう。
それに、俺は基本的には真正面から戦うことはない。
周りの建物などを利用して、チビチビ削っていく戦い方が得意ではあるし、何より真正面から戦って誰にでも勝てるほど俺は強くない。
オナ〇ワームたちとのときは例外だ。
あのときは周りに何も無かったし、たくさんの冒険者が一緒に戦ってくれたから、俺も何もしかけずにぶつかっていった。
……さて、ここまで色々と考えたところで。
一体、俺は学生たちに何を教えればいいんだ。
俺が知っていることがこの教科書に載っていない以上、教えられることは履修予定外の内容。
しかし、いかんせんその内容は暗殺者や盗賊向きの技術だ。
正統派の戦い方を推奨する魔法学校の教育方針にはそぐわない。
どうしたものか……。
――――いや、違う。
俺は俺のまま、俺そのものを教えればいい。
何も学校の教育方針に沿って教える必要なんてない。
それに、俺が教えられないことなら、アロマやアトラスに教えてもらえばいい。
生徒たちに、俺のような姑息な戦い方をする奴もいると教えてやるいい機会じゃないか。
それに、新しい戦い方も覚えたしな。
生徒たちには悪いが、実験台になってもらおうじゃないか。
来週が楽しみだ……。
クックック……。





