EX IF√ 無知という罪
この話は、エイプリルフール企画のIFストーリーです。
もし、○○だったらを題材に、話を描いていきます。
まぁ、今回の場合、エイプリルフールに間に合ってないんですけど。
一日遅れのエイプリルってことで!
楽しんでいただけたら幸いです。
俺の名前は『フォート・アレイス』。現在40歳だ。
こんな名前をしているが、実は異世界から転生してきた身だ。記憶はもうほとんど残ってないが、前世ではたしか、『日本』という国に住んでいたと思う。
「さーて、今日も制作に取り掛かるとするか」
ここ20年、俺には寝る間を惜しむほど必死になって取り組んでいることがある。
それは、淫魔、つまり『サキュバス』を生み出すことだ。
さて、今日は何時間やることになるのかな……。
※※※※※※※※
「ハア……ッ、ハア……ッ」
や……やっとだ……。
「ついにできたぞおおおおおおおおおおお!!」
俺の目の前には、扇情的な格好をした黒い羽の生えた女性が立っていた。
そう、ついに、ついにサキュバスを創ることに成功したのだ!
「これで……やっと、童貞を卒業できる!」
俺はサキュバスに向かって言った。
「俺とS◯Xしよう!」
「別にいいですが、マスターは死にたいのですか?」
サキュバスはOKしたが、かわりに意味不明な質問を返してきた。
「は? 死ぬ?」
「はい、私の能力は『オール・ドレイン』。私と性的な干渉をした人から生命力、魔力、経験値などを全て吸い取る能力です。私と繁殖行為をしたら生命力を全部吸われて死にますが、それでもいいならどうぞ」
「…………マジで言ってんの?」
「はい、マジです」
え? どうすんのこれ、俺、童貞卒業できないってこと?
サキュバスの衝撃発言に俺が戸惑っていると……。
『ガゴン!』
と、扉の方から変な金属音が聞こえてきた。
しばらくすると、扉を開けてアトラスが頭を押さえながら中に入ってきた。
「……なんか凄い音したけど、大丈夫?」
「ああ、いえ、大丈夫です……。ちょっと慌てて、ぶつかってしまい、頭が取れてしまっただけですので」
まぁ、アトラスはデュラハンだからな。
そりゃあ、首が取れることぐらいはあるだろう。
「慌ててって、一体どうしたんだ? 何かあったのか?」
「ああ、そうでした。実は……、いえ、何でもないです」
「えっ、いや、何でもないことはないだろ」
「あ、いえ、確かに事があったにはあったのですが、今考えてみると、別に魔王さまにご報告するほどのことでもなかったと思いまして」
「ああ、そう? それならいいんだけどさぁ」
「お忙しいところをお邪魔してしまい、申し訳ありませんでした」
「いやいやいいよ別に、いつも色々してくれてるんだから」
いつも失敗作の世話や処理は任せてるからな。
20年間ただひたすらに俺の言うことを忠実に聞いてくれている。
本当に感謝はしてもしきれない。
「それでは、ごゆっくり」
そう言って、アトラスは部屋を出ていこうとする。
「ああ、ありがとう」
俺は軽く返事をして、作業に再び取り掛かった。
……ん?
『ごゆっくり』?
意味に気が付いた俺はすぐに部屋を出て叫んだ。
「ちち、違うぞ! 今俺の部屋にいるこの子は確かにサキュバスだけど、そういうことしようとしてたわけじゃないから! わざわざ気を使わなくてもいいからな!」
※※※※※※※※
「はぁ……、どうしたもんかなぁ……」
俺のタレント『魔物創成』は、高い知能を持った魔物は、同じ魔物を何体も生み出せない制限がある。
一部例外はあるが、ほとんどがそうだ。
だから、もう今後サキュバスを生み出すのはできないと考えたほうが良いだろう。
となると、一体どうやって俺は童貞を捨てればいいというんだ……。
……あっ!
そうだ、ハーピィはどうだ!?
ハーピィは、まさに鳥を擬人化したようなモンスターだ。
人の文字はつかないだろ!
よし、今度はハーピィを作ることを目標にして、頑張るぞー!
※※※※※※※※
あれから5年が経過した。
「……やった。やったぞおおおおおおおッッ!!」
俺はついにハーピィを生み出すことができた。
サキュバスを生み出すときに苦労した分、コツをつかんだので今回は数年で創ることができた。
まぁ、その分失敗作が増えたから、世話するよりも、知能が低いやつらは処分することを選ぶしかなくなってきてしまったいるのも事実だ。
この魔王城もかなり広いが、それでも限度はある。
まぁ、今はそんなことどうだっていい。
やっと、童貞が卒業できるんだからな!
「さぁ、早速ベッドに行こうか」
「はい、ご主人様♡」
「ちくしょう……、ちくしょう……、なんでだよ……ッ」
「え、えーと、き、気を落とさないでくださいね?」
できませんでした。
実際に、『人』とヤろうとするとどうなるかというと、股間にA○フィールドみたいなのが張られる。
それを無理して割ろうものなら、俺のアレに切れ目が入る使用になっている。
一回、俺が無理に挿入れようとしたことがあったが、あのときは大変だった。
だって、血が止まんないんだもん。
それにしても、なんで今回もヤれなかったんだ。
『人』の文字なんてどこにも――――
――――はぁ。
そうだった。
ハーピィって『有翼人』って言うわ。
※※※※※※※※
次に思いついたのは『ドライアド』だった。
ドライアドは、人の形をした植物のモンスターだ。
これなら『人』の文字は入ってないだろ!
※※※※※※※※
それから3年後。
見事、『ドライアド』を生み出すことに成功した俺は、早速ヤろうとした。
したんだけどさぁ……。
「…………ない」
あの、それらしきものが無いのよ。
挿入れられそうなところが。
まぁ、確かにそうだよな。
植物なんだから、精子じゃなくて花粉で繁殖していくんだもんな。
うん、仕方、ないよな……。
はぁ…………。
※※※※※※※※
あれからさらに数年。
今度は、妖精を生み出そうと躍起していたとき。
『ドゴォ――――ンッ!』
「うぇッ!? な、なになに、なんなの!?」
突然、大きな爆発音が聞こえた。
それと同時に、大きな揺れを感じる。
「わ、我が主いいいいいッ!」
すぐに、アトラスが俺のところに駆けつけてくれる。
「おお、アトラス! 一体どうなってるんだ!?」
「それが――――ッ、今は説明している時間はありません! 急いで非難を!」
「わ、分かった!」
急いで部屋の外に出ると、そこにソルトがいた。
「ソルトも我が主と一緒に逃げるんだ! もうすぐそこに奴が来ている!」
「は、はい! 分かりました!」
そう言って、俺の手を引くソルト。
「ご主人様はこちらに!」
「お、おいアトラス! “奴”ってなんだよ!? 一体誰のことだよ!」
俺がアトラスに問いかけると、
「分かりません! とにかく、あなた様は逃げてください!」
なんだよそれ。
……とにかくマズい状況なのは分かった。
とりあえずは、言う通りに逃げ――――
「――――え」
そのとき、俺は見てしまった。
魔王城の外の光景を。
そこには、――――何もなかった。
いや、正確には、まだ一部見える。
というのは、まるで世界のほとんどが削り取られて無くなったかのような消え方をしているようにしか見えないのだ。
完全なる暗黒空間。
そう言ったほうが良いかもしれない。
そんな景色が、広がっていた。
「ご主人様!? 何をなさっているんですか!? 早くこちらに――――」
「逃がすとでも思ったのか?」
と、突然、知らない声が聞こえてきた。
振り返ると、そこにはサングラスを着けた、見知らぬ男が立っていた。
「だ、誰だ、お前」
「吾輩はシャクス。この世界を滅ぼす者だ」
この世界を滅ぼすって……、
「ま、さか、外のアレは――――」
「吾輩がやったことだ。この惑星は残り2割削れば完全消滅する」
そ、そんな……。
世界を滅ぼす、力だと……?
「ご主人様、お逃げください!」
ソルトのそんな声が聞こえた。
次の瞬間、俺は衝動的に、走って逃げていた。
「ご主人様、私は、あなたを、愛して――――」
ソルトの、そんな声も聞こえないぐらいに。
「ハァ――――ッ、ハァ――――ッ」
俺は必死で下の階を目指した。
下にはまだ仲間がいるはずだ。
「ヒッ――――」
しかし、その期待は簡単に打ち砕かれた。
そこには、たくさんの死体が転がっていたからだ。
「あ…………」
少し離れたところに、リーンとクレアが倒れていた。
もちろん、息はしていない。
できるはずもない。
だって、首が胴体についてないんだから。
「誰か…………」
次の階には、グライドが倒れていた。
こちらは、全身傷だらけの状態だった。
そして、また首が胴体にくっついていなかった。
「おい、誰か…………」
次の階には瑠璃がいた。
瑠璃は胸の部分に大きな穴が開いていた。
そして、真っ赤な水たまりの中に、一人で倒れていた。
俺は震えながら彼女のまぶたを閉じさせた。
「誰か……、だれかぁ…………」
次の階には、アロマの服が落ちていた。
彼女はアンデッドだから、死体も残らず、消えてしまったのだろう。
周りには、戦った痕跡と思われる、燃えた後や、大きな傷、大きな氷柱などがいくつもあった。
「だれかぁ…………ッ!」
俺は最後に、しずくの実験室を訪れた。
中に入ってみると、部屋の中はひどく荒れていた。
地面には様々な実験器具が落ちて、割れてしまっていたり、壊れてしまっていた。
俺は、机の上に、しずくの書置きらしきものを見つけた。
と、言うのも、その紙のすぐそばに、白衣を含めた服一式が落ちていたからだ。
書置きの内容を確認する。
その文字はまるで殴り書きのように、荒れた文字だった。
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あたしはしずく
この研究室を管理していた者
ここに最後の書置きを残す
魔王城に謎の男が攻め込んできた
男は自分のことをシャクスと名乗り、破壊を始めた
その男の前には、誰も勝てなかった
アロマやクレア、るりやリーン、グライドも、誰もダメだった
だからあたしは、前に作った、強さを戦闘力としてかんい的に見ることができるメガネを使って、あの男を見てみた
メガネには「戦とう力:∞」と表示された
ムリだ
そんなやつ、かてるわけがない
もしこれを見た人がいたら
けんきゅう室のおくのあかいボタン
を
おして
それできっと
にげられ
================
文章はここで終わってしまっている。
ところどころ、文字が簡単になっている。
急いで書いたため、画数が少ないように書いたのだろう。
「いや、まさかここまで逃げるとは。吾輩も驚いた」
「ッ!?」
すると、あの声が後ろから聞こえてきた。
振り返ると、そこには、あのシャクスとかいう男がいた。
「な、なんなんだよ。お前は一体、なんなんだよッ!?」
「だから言ったであろう。世界を滅ぼす者だと。貴様で最後だ」
シャクスが近寄ってきた。
その瞬間、俺は研究室の奥に向かって走り始めた!
「ハッ! ハッ! ハッ!」
俺の視界の先に、赤いボタンが見えた。
「あれだ! あれを押せば!」
俺はそのボタンめがけて手を――――
「《伸ばそうとしたが、突然腕が吹っ飛び、そのあとシャクスに首をはねられ、フォート・アレイスは死亡した》」
そんなシャクスの声が聞こえてきた
そんなことはお構いなしに、右腕を伸ばし――――
――――伸ばそうとしたが、突然、俺の伸ばした右腕が弾けた。
空中に、俺の右腕の残骸らしき、肉片や骨片が飛び散る。
「う、うわああああああああああああッッ!?」
そして、シャクスが俺に近づいてくる。
「くっ、来るなあああああああああッッ!!」
俺は左手でボタンを――――
――――押そうとしたが、突如視界が回り始めた。
そして、だんだん目の前に床が近づいてきて――――――――
「…………許せ。世界を救うために、必要なことなのだ」
そう言って、シャクスはアレイスの死体の前から去っていった。
もし、アレイスが魔王城に引きこもり続けたら。
アレイスは30年ほど、ずっと魔物を生み出す生活をし続けることになります。
アトラスが「なんでもないこと」と言って、アレイスに何も言わなかったのは、もちろんアレイスに気を使っていたのもありますが、攻めてきた勇者のことに自分の主人を巻き込む必要はないだろうと思い、言うのを止めたからです。
巻き込みたくないので、仲間たちがアレイスのことを「魔王さま」と呼ぶことはありません。
なので、その後の魔王軍幹部などの戦いも、全部アトラスや他の仲間が勝手に進めます。
これは、アトラスがドングラス・ルートリアに魔王討伐を頼まれるためです。
ルートリア自身は、アレイスにも戦いに参加してほしいと思っていますが、アトラスがそれを断ります。
つまり、アレイスが魔王城から出てこなくなると、アレイスは何も知らないまま生き続けます。
最後は、計画が上手くいかなかったシャクスに、世界を壊され、死ぬことになります。
いかがだったでしょうか。
楽しんでいただけたのなら、嬉しいです。
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それでは。





