第50話 Dr.からの刺客
ついに50話目になりました!
ここまで読んでくださった読者の皆様、ありがとうございます!
これからもよろしくお願いします!
「えーと、なんて呼んだらいいかな? 『スズネさん』とか?」
「あっ、なんでも大丈夫ですよ。私の方が年下ですから、さん付けでもちゃん付けでも、なんなら呼び捨てでもいいです」
「いや、さすがに初対面なのに呼び捨てにはしないよ。うーん、じゃあ呼びやすいしスズネちゃんにしようかな。で、早速だけどこれからどうしようか。とりあえずクエスト受ける?」
「はい、そうしましょう」
早速、ギルドの掲示板前に向かう・
掲示板には、モンスター討伐から薬草採取、遠征の護衛までと様々な依頼が貼られていた。
「どれにする? 好きなもの選んでいいよ」
「えっ、本当ですか?」
「うん、いいよ」
「えっと、じゃあ……」
スズネちゃんは掲示板に貼られた依頼を物色し始める。
数分後、スズネちゃんが一枚の紙を持ってきた。
「こ、これなんてどうでしょうか」
「え、こ、これ?」
※※※※※※※※
俺たちはコボルトが出現するという辺りのところまでやってきた。
そう、スズネちゃんが受けようと言ってきた依頼は、『コボルトの討伐』だった。
なんでも、コボルトたちが近くの村の家畜小屋を襲って困っているらしい。
しかし、コボルトは通常、群れで行動していることが多く、また1匹1匹それぞれが普通に強い。
俺でも群れで襲いかかってこられたらさすがに手こずる。
なので、初心者にはお勧めできないモンスターなのだが……。
「えいっ!」
『ギャンッ!』
スズネちゃんは俺の想像を超えていた。
コボルトたちに負けず劣らず、しっかりと攻撃を当てて倒している。
「『パワード』、『ディフェンド』、『スピード』、よし」
スズネちゃんの戦い方は、強化魔法を使って近接戦闘を行うタイプだ。
強化魔法だけでなく他の魔法も使えるようだが、本人曰く、強化魔法は魔力消費が少なくて済むので多用しているらしい。
「こりゃ俺も負けてられないな……。 よし、ちょうどいい機会だし新武器を試してみるか」
俺はバッグの中からしずくが作ってくれた新しい武器を取り出した。
それをこっちに向かってくるコボルトたちに投げつける。
それが地面に接触すると、たちまちモクモクと煙が出てきた。
『キャンッキャンッ!』
『ギャインギャインッ!』
煙が目に沁みて痛いのか、コボルトたちが叫び始める。
俺が投げたのは、ズバリ煙幕だ。
強い刺激を与えると、急速に煙を吹きだす怪盗や忍者も使う優れもの。それをしずくが再現してくれた。
しかし、このままだと俺もコボルトたちがどこにいるのか分からないので――――
「『熱源感知』」
このスキルはいわゆるサーモグラフィのようなもので、視界を変化させ、温度の違いを見ることができるようになるものだ。
煙幕と相性がいいので、取得しておいた。
スキルのおかげで、さっきまで何も見えなかった煙の中に、多数の赤いものが見える。
俺はバックからナイフを取り出して、赤いところに投げつけた。
コボルトたちの悲痛な叫び声が聞こえた後、さっき投げたナイフが俺の手に戻ってきた。
これもしずくの新作の武器の一つで、投げると一定時間後に持ち主の手に戻ってくるというこれまた優れものである。
こんな感じで、コボルトたちを一通り倒し、ギルドから報酬を受け取った後、俺たちは王都の中を散歩していた。
「いやー、しかしスズネちゃん強いな。俺感服しちゃったよ」
「そ、そんなことありませんよ。アレイスさんだってコボルトをたくさん倒していたじゃないですか」
「いや、あれは煙幕とかの武器がいっぱいあったからで、真正面からぶつかったら今日みたいに上手くいかないよ」
「そ、そんなこと言ったら、私だって強化魔法使ってましたし……」
「お互い様だね。そうだ、気になったんだけどさ、どうして俺なんかと仲間になってくれたの? みんな俺のことを敬遠してたからスズネちゃんが来てくれて本当に助かったんだけど、単純に気になってね」
「あっ、えっと、ですね。わ、私ってほかの人よりもけっこう強いみたいで、アレイスさんみたいに仲間になってくれる人がいなかったんです。で、でも皆さんとてもいい人たちなんですよ? 年下の私にやさしくしてくれますし。それでも、やっぱり仲間になってくれる人はいなくて。でも、アレイスさんはほかの人の話を聞くと、とても強そうな方だと思って、私のことを仲間にしてくれるんじゃないかと思って、だから……」
なるほど、自分と同じくらいの強さを持った人が周りにいなくて、仲間が今までできなかったのか。
強すぎる力は、こんな風にもデメリットがあるんだな。
さぞつらかっただろうに。
「でも、俺もそこまで強くないけど、大丈夫?」
「だ、大丈夫です! むしろ、私を仲間にしてくれてありがとうございます!」
「いやいや、それよりお腹すいたでしょ。何か美味しいものでも食べようよ」
「は、はい!」
それから俺たちは商店街を歩きながら、色んなものを食べ歩いた。
しかし、そいつは突然現れた。
俺たちが人ごみの中を歩いていると。
「動くな」
突然そう言われて、びっくりして立ち止まる。
振り返ると、何者かが俺に短剣を突き付けていた。
「な……なんだ、お前」
「余計なことはするな。今から貴様を我が主の元に連れていく」
「ま、まさか、それってⅮr.とかいう奴じゃあないだろうな……!」
「知っていたのか。そうだ、我が主はⅮr.と呼ばれている」
「こ、こんな人が多いところで……! 何を考えているんだ、見られたらどうするつもりだ……」
「フン、見られたら口封じに殺すだけさ」
「なっ……!?」
マ、マズいぞ。
「アレイスさん? どうしたんですか、急に立ち止まって」
見られたら口封じに殺される。
つまり、この俺の状況を見た人は死んでしまう。
そして、今俺を見る可能性が最も高い人は……!
……それだけは何としても避けなければ!
「い、いや、何でもないよ」
「何でもないって、なんでそんなに顔がこわばってるんですか?」
「ちょ、ちょっと食べ過ぎっちゃったのかな。お腹痛くてさ、ハハ……」
「もう、食べすぎはだめ……です……よ……」
しかし、俺の願いはかなわず、彼女は見てしまった。
「ヒッ!?」
「…………見てしまったか。ああ、面倒だが仕方ない」
その言葉を聞いた瞬間、俺の体は無意識に動いていた。
後ろにいた何者かを蹴り飛ばし、地面に煙幕を叩きつける。
そして、スズネちゃんの手を引いて一目散に逃げだした。
「貴様、何をッ!? ど、どこに行った!」
「はぁ、はぁ……」
俺たちはとりあえず奴からは見えない路地裏に隠れ込んだ。
恐怖で今にも叫びだしそうなスズネちゃんの口元を押さえつけながら、奴の様子をうかがう。
「スズネちゃん、よく聞いて。今から俺がアイツの気を引くから、スズネちゃんはギルドに行ってきて、助けを呼んできて欲しいんだ。このままだと、アイツは関係ない人々を襲いだすかもしれない。任せていいかな?」
スズネちゃんがコクコクとうなずく。
「よし、じゃあ頼んだよ」
スズネちゃんは頷くと、急いでギルドに向かって行った。
それを確認してから、俺はアイツの前に飛び出した。





