第49話 40歳童貞、仲間を募集する
更新が遅くなってしまい申し訳ありません。また今週からはいつものペースで更新し続けます。
パーバートが無事に帰ってくれた後、俺はあることに悩んでいた。
「なぁアトラス、俺は魔王なんだよな?」
「急にどうなされたのですか。当たり前じゃないですか」
「そ、そうだよなぁ。いや、改めて考えると俺って魔王らしいこと何もしてないよなぁって思ってな……」
「まぁ、確かにそうですね。でも、別に魔王らしくいる必要はないんじゃないですか?」
「どういう意味だ?」
「いえ、魔王さまはとても優しい心をお持ちですので、皆が想像するような極悪非道な魔王のようになる必要はないと思うのです」
「そりゃ、俺も極悪非道になんてなりたかないわ」
「だから、魔王さまは魔王さまらしい“魔王”になればいいのではないのでしょうか」
なるほどな。
俺らしい魔王か……。
「ところで、魔王さま。あのDr.という男はどうするおつもりですか?」
「あー、あいつなぁ……」
そう、あのDr.という男。
シャクスいわく、何やら怪しげなクスリを扱っているようなのは分かった。
でも、ここ1か月の間、Dr.に動きはない。
「とりあえず、クスリが何なのかだけは突き止めておかないとな。そういう系のクスリの流れを探っておいてくれ」
「かしこまりました。あの、一つよろしいでしょうか」
「ん? どうした」
「えーと、あの男の言動から考えると、恐らくあの男はモンスターを生み出すことが得意だと考えられます」
「確かに、あいつオリハルコンゴーレムのことを最高傑作とか言ってたな」
「もし魔王さまのいるこの城を襲うとして、被害はこの城だけに収まるでしょうか」
「……どういうことだ?」
「つまり、ここから近い人が集まる所、いえ、王都と呼んだほうが良いでしょうか。そこに被害が及ぶなんていうことも……」
「ま、待て待て! ここから王都まで15日はかかるぞ!? そんなに遠いのにどうして影響が出るんだよ!」
「魔王さまはあの男の居場所をご存じないのですよね」
「あ、ああ」
「あの男が、この城に来るまでに王都を通るという可能性は?」
「えっ」
「そういうことです。あの男の居場所が分からない以上、どれくらい王都や周りの町に影響があるか分かりかねません。今の内に、なにか対策を講じておくべきです」
「う、うーんそうか……、でも具体的にどうしたらいいんだ?」
「王都や町を守るのは、誰なんでしょうか」
「そりゃ、その町にいる冒険者たちだろ」
「では、その方たちに協力を仰げばよろしいのではないのでしょうか」
「いや、見ず知らずの俺のために協力してくれるとは思えないけどなぁ……」
「ならば、見ず知らずの赤の他人ではなくなればいいのですよ」
「……はい?」
※※※※※※※※
というわけで、俺は王都の大型ギルドにやってきた。
ギルドの中は、武装した人々で満たされている。
「しかし、赤の他人じゃなくなるっていうのは一体どうしたら……」
うーん、こういうときは、まず俺のことを知ってもらうのが必要だよな。
誰かとパーティーでも一緒に組めれば楽なんだけどなぁ……。
「じゃあ、とりあえず仲間を募集してみるか」
~~~募集~~~
仲間を募集しています。
こちら、魔法剣士が一人です。
募集する役職、レベルなどは特にはないです。
誰でも構いません。
一緒に戦ってくれる仲間を待っています。
以上のとおりのことを書いた紙を掲示板に貼る。
ありがたいことに、クエストの依頼や仲間の募集などをするための掲示板のシステムは20年前と同じだったので、簡単に募集をすることができた。
あとは、人が来るのを待つだけだ。
「とりあえず、あとは待つだけだな。よっこいしょっと」
俺はギルドに隣接されている酒場の席で待つことにした。
募集開始から1時間が経過。
「まぁ、そんなにすぐには来ないよな。でも、一応募集の基準は特になしにしてるし、誰か来るだろ」
募集開始から3時間が経過。
「あ、あのー、募集を見て来たんですけど」
「あっはい! よく来てくれました!」
「あ、あぁー……あなたですか。えーと、その、すみませんやっぱりなかったことに」
「えっ!?」
募集開始から6時間が経過。
「おかしい」
あの後何人も俺のところを訪れたが、みんな俺の顔を見るなり逃げてしまう。
一体何がどうなっているんだ?
「あのー、すみません」
「……はい?」
突然、誰かに話しかけられる。
「お客様、もうここに6時間も座っていらっしゃいますよね。どうかされましたか?」
見ると、話しかけてきたのは酒場を担当しているギルドの職員だった。
「いや、どうしたも何も、仲間の募集をしているんですけど、誰も来てくれないんですよ! みんな俺の顔を見るなり逃げていくんですよ!」
「あー、なるほど……。それでしたら、たぶん私理由が分かるんですけれども……」
「えっ!? な、なんですか、教えてください!」
「え、えーとですね。ちょっと言いにくいんですけれども……。多分みなさん、あなたのことを怖がってるんですよ」
返ってきた答えは予想だにしなかったものだった。
「は? 怖がる? 俺を?」
「前にお客さん、大量にマッドフロッグを討伐していたじゃないですか。多分あれを見てみんなあなたがメチャクチャ高レベルな冒険者だと思って、近寄りにくいんじゃないですか」
「い、いや、あれはほとんど俺の仲間のアロ……アリマが倒したやつで、俺は10匹ちょっとしか倒してないですよ!」
「そ、そうなんですか。でも、一日に10匹倒せるだけでも十分強いと思いますよ」
「えっ、だって……」
職員さんの話によると、20年ほど前に魔王が倒されたおかげでモンスターたちの凶暴化が収まり、無理にモンスターたちを討伐する必要はなくなったそうだ。
以来、モンスターたちが全体的に弱くなり、相対的に新規の冒険者たちのレベルも20年前よりも下がっているらしい。
「なので、あなたでしたら、少し古参の方々をお仲間にしたほうがよろしいのではないでしょうか」
そうか……、こんな所で魔王を倒した影響が出てるのかぁ……。
じゃあ、とりあえず俺がメチャクチャ強いっていう誤解を解くことから始めないといけないのか。
「……よし!」
俺はそのあと、ギルド内にいた色んな強そうな冒険者に片っ端から勝負を申し込んだ。
「俺と勝負しようぜ! 俺に勝ったら好きなものおごってやるよ」
「はぁ? 無理無理、あんた強いだろ。俺なんかじゃ勝てないって」
「まさか逃げるのか? 男ともあろうものが挑まれた勝負を断るのかよ、弱虫がよ」
「……なんだと。あんた、初対面の相手にそこまで言うんだったら、覚悟してるんだよな」
「おう、かかってこい!」
「ま、参りました……」
「う、嘘だろ……」
結局、誰一人として俺に勝てた人はいなかった。
ど、どうするんだよ、冒険者たちがこんなに弱いんじゃ、この王都を守り切れるわけがないじゃないか!
この日は、誰も俺の仲間になることはなかった。
※※※※※※※※
次の日。
「結局、今日も誰も来なさそうだなぁ。はぁー、昨日のが完全に仇となったなぁ……」
俺が強くないことを証明するために戦いを挑んだのに、全員に勝っちゃったからな。
まぁ、今日も誰も来ないんだろうなぁ。
「はぁ~……」
俺がクソデカため息をついていると。
「あ、あのー、すみません……。募集見て来たんですけど……」
「へ?」
唐突に話しかけられて振り向く。
そこには、中学生くらいの少女が立っていた。
「えっ、募集見たって……」
「は、はい。誰でも構わないって書いてあったんで来たんですけど……、だ、ダメ、ですかね……?」
「だ、ダメだなんて! そんなことあるわけないよ! むしろ来てくれてメチャクチャ嬉しいよ!」
「そ、そうなんですか。よかったぁ……」
「あっ、えっと。俺はアレイスっていうんだ。君の名前は?」
「あっ、はい。私は『スズネ』っていいます。あ、アレイスさんですね。これからよろしくお願いします」
そう言うと、その子はちょっと恥ずかしそうにお辞儀をした。
「こちらこそ、これからよろしくね!」
こうして、俺は20年ぶりに冒険者の仲間ができた。
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