第47話 勇者なんて魔王から見れば全員不法侵入者
「なんだったんだアイツ……」
唐突に来て唐突に去っていったシャクスに困惑してしまう。
「あっ、そうだよ。俺バニラに会いにここに来たんじゃんか」
いつの間にか本来の目的を見失っていた。
だが、肝心のサキュバスのバニラは部屋の外に出てしまっている。
また探さなくてはいけなくなってしまった。
「仕方ねぇな、面倒だけどまた探しに行くか」
俺は重い腰を上げて、部屋の外に向かった。
※※※※※※※※
「いないなぁ……どこにいったんだ?」
あれから20分ほど探し続けているが、未だにバニラに出会えていない。
おかしいなぁ……結構いろんなところ探してるのに。
「あ、魔王さまー」
「おお、リーンじゃないか」
バニラを探していると、偶然リーンの姿を見つけた。
いつものリーンとは違って、嬉しそうな表情をしている。
何かいいことでもあったのだろうか。
「なんだ、何か用か?」
「ちょうど良かったわ、魔王様に見せたいものがあったのよ」
「見せたいもの?」
「こっちよ。ついてきて」
すると、リーンが俺の手を引っ張り出した。
仕方がないので、そのまま抵抗せずに引っ張られるままについていく。
連れてこられたのは、何の変哲もない部屋の前だった。
「いいから入ってみて」
「お、おう」
言われた通り、俺はドアノブを握り、中に入った。
「えっ……」
扉を開けた先には、あのクレアが女の子らしいワンピースを着て、立っていた。
「いやー、クレアちゃんがねぇ? 私に似合うかわいい服を用意してくれって言うから私貼り切っちゃって! 頑張ってお化粧もしたし、町まで出て似合う服を選んで着せてみたら、私の想像通りこんなにきれいになっちゃって!」
「その……、ま、魔王さま。ど、どうで……しょうか……? に、似合って……ますか?」
「…………………………」
「あ、あの……、魔王さま……?」
「………………」
「ま、魔王さまッ!」
「うおッ!?」
突然大声を出されて、我に返る。
「どうしたんですか? 全然反応してくれませんでしたけど」
「あっ、うん、あまりにも似合いすぎてて見惚れてて……」
「えっ、あ、あの、そうですか……。それは……ありがとうございます……」
お互いに、それ以上何も言えず、黙り込んでしまう。
「あっ、あのっ――――」
クレアが何かを言おうとしたそのとき、
『敵襲――――ッ! 敵襲――――ッ!』
「ッ!? なんだ!?」
突然、城の中にアラームのような音が響き渡った。
『みんな、城の中に人間が侵入してきたみたい! あたしの鋼鉄の扉や緊急バリケード、アロマの結界も全部壊されたみたい! 現在侵入者は第2階層を侵攻中!』
声の主は、どうやらしずくのようだ。
いつの間にこんな放送を流せるようにしたんだ。
まぁ、そんなことはどうでもいい。
「行くぞ、クレア、リーン!」
「「はい!」」
※※※※※※※※
「しずく、侵入者は!?」
「現在3階層を侵攻中だよ。生命反応があるから、モンスターたちは殺さずに、無力化しているみたい。一階層につき100匹はいるはずなのに、それを無力化だなんて……」
「とにかく、今回の相手はそれだけ強いってことだな」
「魔王さま、私がその不届き物を始末してきましょうか?」
「いや、相手の力量が分かってない今、下手に動くと返り討ちに会うかもしれない。とりあえず、クレアはほかの階層にいるアトラスたちを呼んできてくれ」
「分かりました」
クレアが仲間を呼びに他の階層に向かった。
「とりあえず、各階層の様子を見ないと。『投影』ッ!」
俺は、まず第1階層にスクリーンを出現させた。
「本当に全員やられてる……! 全員縄で縛られてるな。スライムに関しては何かのケースに入れられてるのか?」
しずくの言ったとおり、どのモンスターにも目立つくらい大きな外傷はなく、縄で縛られたり、透明な謎のケースに入れられたりしている。
まず、こんな量の縄とケースをどうやって持ってきたのかということに疑問が生じる。
テレポートで運んできたのだろうか?
「今3階層にいるんだよな。『投影』ッ!」
せめて、侵入者のお手並みと顔くらいでも見ておこう。
『フハハハハッ! 絶好調、絶好調である!』
『なんだこいつ! 攻撃が当たらねぇ!』
『人型のモンスターでは同じ人型の我に勝てるわけがなかろう!?』
『いや意味わかんねーよその理論!』
人型モンスターであるサイクロプスたちが侵入者に一斉に襲いかかる。
が、侵入者はそれを難なくかわし、どこからか取り出したロープで一瞬で縛り上げる。
サイクロプスが侵入者を襲い、それを侵入者が縛り上げるの繰り返し。
『ふぅ、この階層のモンスターはこの程度であるか』
俺が投影してからわずか5分で、サイクロプスたち全員が無力化されてしまった。
『な、なんなんだお前……! こんな、俺たちを一瞬で……!』
『ん? 我の名か? そうかそんなに聞きたいのか!』
『いや名前じゃなくて何者かが聞きたくて――――』
しかし、そんなサイクロプスの言葉をさえぎって、侵入者は名乗りを上げた。
『我が名はパーバート! 世界最強の鞭と縄の使い手にて、勇者の一人! そう、我こそがパーバートである! ひざまずいて、我をあがめるといい! ハッハッハ!』
そう、侵入者はルートの屋敷で会った、あのパーバートとかいう勇者だった。





