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EX もう一人の魔王

今回は番外編です。この2章で存在が判明した、主人公とは別のもう一人の魔王についての話となっています。第1話と同じ時期からの話になっています。

「クックックッ……、侵略は順調に進んでいるようだな……」


 俺は魔王だ。

 世界を侵略し、人類を滅亡させ、魔物たちの楽園にするという偉大な夢を持っている。


「すでに、国を一つ滅ぼした。あの国は、優秀な科学者たちがたくさんいたからな……、早めに潰せてよかった」


 残る国はあといくつだろうか。

 人間の繁栄はすさまじいもので、すでに世界中に何億という人間が生きている。

 国なんか、多すぎていちいち覚えていられない。


「魔王さま、次はいかがいたしましょう」


 と、俺の側近の部下が聞いてくる。


「次は、国家『グラルニア』の王都だ。あそこには、多くの冒険者がいる。もちろん、勇者もだ。そこで、一気に畳みかけて一網打尽にするってわけだ」


「なるほど、それであの小さな町に彼女を向かわせたのですね」


 彼女というのは、同じく俺の部下のスライムロードのことだ。


「ああ、あの町は小さいが、王都を攻撃するための拠点の一つにするには十分だ。あの町は資源も豊富で、何よりも王都にまで繋がる大きな水道が引いてある。この意味が分かるか?」


「なるほど、水道があるのは彼女にとってとてもうれしいことでしょうからね」


 そして、そのスライムロードの持っているスキルに『水再生』というものがある。

 これは、上級スライムの固有スキルで、水を取ればどんな傷でも治せるというスライムだからこそのスキルだ。

 水さえあれば、たとえどんな敵が現れようと、一撃で葬られない限り回復し続ける。

 だからこそ、水道があるあの町『ヴィンガル』に彼女を行かせた。


「まぁ、S級とかの強い冒険者や勇者がいなかったら、いったん帰ってくるようにあいつには言ってある」


「それはなぜですか? そのまま、町を制圧してしまえばいいのでは?」


「いやいや、町を制圧するのは後。もし、勇者や冒険者がいなくとも、魔王軍の幹部が現れたとなれば、すぐに勇者や冒険者を送り込むだろう。そこを……」


「一網打尽に、というわけですか」


「そういうことだ」


「なるほど、理解しました。ところで、魔王さま」


「ん、なんだ?」


「先ほど、勇者がこの城に向かっているとの情報が入ってきたのですが」


「…………は、はああああああああッッ!?」


 な、何だと!?

 もうこの城の存在がバレているというのか……!


「ッていうか、そんな大事なことさっさと言えよ!」


「申し訳ありません、魔王さまが楽しそうに話されていたので、止めるのは可哀そうと思いまして」


「いやいや、そういう重大な話だったら、別に会話を止めてくれていいから!」


 ……って、こんな話してる場合じゃない!

 俺は立ち上がり、配下の魔物たちに向けて声を上げた。


「全員、戦いの準備をしろ! 勇者を返り討ちにしてやるのだ!」


『『『『『オオッ――――――――――――!!』』』』』


 配下の魔物たちが、皆雄たけびを上げた。


「おい、『千里眼』で勇者の状況を見てくれ」


「かしこまりました」


 俺の部下が、スキル『千里眼』で勇者が今何をしているのかを見る。


「……今は、こちらの方角に向かってきているところですね。多くの兵を引き連れています」


「兵隊か……。数は?」


「数はおよそ2000人と思われます。勇者は一人です」


「2000か……、かなりの大軍だな」


 今現在、この城には幹部はほとんどいない。

 いるのは、俺のそばに今いる、『千里眼』のこいつだけだ。

 こんなときに勇者が来るとは……、タイミングがとても悪いな。


「だが、そんなことで負ける俺たちではない! 勝つぞ!」


『『『『『オオッ――――――――――――!!』』』』』


 再び、俺の配下の魔物たちが雄たけびを上げた。


「あ、魔王さま。勇者たちの動きが止まりました」


「何だと?」


「どうやら、元魔王城の前で止まったようです」


「元魔王城? ああ、前の魔王の城か」


 たしか、あの城には元勇者が住んでいたはず。

 まぁ、もう20年も前の話だ。

 生きているかどうかすら不明だ。考える必要はない。


「しばらく、様子を見ましょう」


 しばらく時間がたつと……。


「あ、勇者たちが城に入っていきました」


「なるほど、あの城を拠点にするつもりか」


 一回、あの城で休むつもりだろうか。

 しかし、数十秒後。


「あ、あの……」


「なんだ?どうした?」


「あ、あの城から、兵たちが大勢の死傷者を連れて出てきたのですが……」


「何!? 勇者は、勇者はどうなったんだ……!?」


「そ、それが……」


「どうなったんだ!?」


「それが……、死体として兵たちに運ばれて行きました」


「…………は?」




※※※※※※※※※※




 数日後。


「また勇者が現れたぞ!」


「急いで準備をするんだ!」


 勇者がまた現れ、城の中が騒がしくなる。


「……どうだ。勇者の様子は」


「はい、またあの城の前で止まっています」


「……またか、前の勇者と同じじゃないか」


 今度は、別の勇者が来たらしいが、またあの城の前で止まったのだ。


「今度の勇者は、女……いや、あの見た目ですと幼女といったほうがいいでしょうか」


「幼女だと? 幼女が勇者だというのか?」


「はい、おそらく。あ、勇者が帰っていきますよ」


「は? 帰っていくだと?」


 じゃあ、何のために来たんだ?

 俺を倒しに来たんじゃないのか?


「あ、城から何か出てきました。あれは……、触手系の魔物でしょうか?」


「何、魔物だと!? あの城から魔物が出てきたのか!?」


「はい。現在、先ほどの勇者がその魔物に襲われています」


「何だと!? 勇者の様子を詳しく教えろ!」


「魔王さま、それセクハラです。訴えますよ」


「どこがセクハラなんだよ!?」




 ※※※※※※※※




「おかしい、絶対におかしい……!」


 なぜあの勇者たちは、あの城の前で止まるんだ!?

 なぜ俺のところに来ないんだ!?


「……まさか」


 いや、そんなことがあるのか?


「おい、あの城に、前勇者が住んでただろ。あの勇者ってどんな奴だったか知っているか?」


「はい。確か、多くの魔物を従えていたはずですが……」


 ……そのまさかだった。

 あの勇者は、今もあの城で生きているのだ。

 その証拠に、魔物があの城から出てきたじゃないか。

 勇者が実際に一人死んでいるじゃないか。


 しかし、なぜあの勇者たちはあの城で止まったんだ?

 魔王は俺なのに。

 ……まぁ、そんなことはどうでもいい。

 まさか、あの勇者が生きているとは思わなかった。

 少々面倒だな……。


 ……だが、問題ない。

 今に、グラルニアの王都は落ちる。俺たちの手によってな。

 そのためには、まずあの町を落とす。

 あの勇者を始末するのは、それからでも遅くはない。


 ……ああ、楽しみだ。

 まさか、あの勇者が生きているなんてな。


「待っていろ、フォート・アレイス……。亡き父の仇を晴らしてやる……!」


 そう、俺がこの手で、あの男を……。

 前の魔王、俺の父を殺した男を殺すんだ!!


いかがだったでしょうか。もう一人の魔王は、まさかの前の魔王の息子でした。この先、アレイスとこの魔王はどうなっていくのか……。これからも楽しみにしていてください!

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