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第21話 まずは自己紹介から

 魔王討伐を受けることにした俺は、屋敷の客室に通された。

 客室の中には、豊穣祭のときの勇者たちがいたのだが……。


「これはいったいどういうことなんだ……?」


 客室に入った瞬間、2人の男女が俺に土下座をしてきたのだ。


「「本当に、申し訳ございませんでした!」」


「い、いや……、申し訳ないって、一体何の……?」


「いえ、まさかあなた様がルートリア様のお仲間だったとは! そんなことは知らず、勝手に魔王と決めつけ、襲撃をしてしまった俺をどうか許してください!」


「俺も、あなた様のことをお前呼ばわりしてしまい、本当にすみませんでした!」


 よく見ると、その2人は前に俺の城に来たあの勇者たちだった。


「ああ、あの事なら別に大丈夫ですよ! そんなに気になさらないでください! こっちも、そちらにはひどい目にあわせてしまいましたから」


 具体的には、わずか10秒ほどで殺したり、触手でヌルヌルにしたりだ。


「そ、それじゃあ、俺たちのことを許してくれるんですか……!?」


「許すも何も、ほとんどお互い様じゃないですか」


 そう言うと、2人はとても嬉しそうな顔をした。


「「あ、ありがとうございます!」」


 そう言って、俺に礼をしてきた。


「お前ら良かったな。アルが優しいやつで」


 ルートが2人にそう言う。


「ていうかすごいな。俺こんな風に丁重に扱われたの久しぶりなんだけど。お前の仲間っていうだけですごい変わりようだな」


「そりゃそうさ。今の俺は、国家を支える大貴族の一人。さらに、元勇者ときたもんだ。こいつらにとって俺は、憧れであり師匠みたいなもんでもある」


「師匠?」


「ああ。俺がこいつたちを教育してやってるんだ。魔王と戦えるようにな」


 なるほど、だからこんなに態度が変わったのか。


「でだ、早速魔王についての話し合いをしたいんだが……。まずは自己紹介からのほうがよさそうだな」


 そう言うと、ルートはさっき俺に謝ってきた勇者の男の方を指さした。


「じゃ、お前からな。名前とギフト、特技を言え」


「あー、ギフトはいいよ」


「ん? なんでだよアル。これから一緒に魔王討伐をするんだ。全員のギフトは知っておいたほうがいいだろ?」


「いやー、それがさ、実はもう全員のギフト俺知ってるんだよ」


「……は? どういうことだよ」


 俺はルートにすべてを話した。

 実は王都に潜入していたこと。

 戦闘力はかるやつでもう既に全員のギフトを含めた情報を知っているということ。


「マジかよ、見るだけで相手のギフトが分かる機械だって!?」


「そう、もうそれでみんなのギフトは知っているんだよ」


 俺以外の全員が驚愕の表情をする。

 そりゃ当たり前だろう、そんな機械があるなんて聞いたことがないだろうからな。


「そんなわけだから、皆さんには名前と特技だけ教えてもらえるとありがたいです」


「……じゃあ、そんなわけだ。名前と特技だけ言ってけ」


「は、はい!」


 まず一人目は、俺の城に最初に来た『怪力』の勇者だ。


「お、俺は『アダム』っていいます。ギフトの『怪力』を活かした誰にも力では負けない単純な肉体での戦闘が得意です」


 なるほど、アダムね。

 特技って、歌がうまいとか、そういうものだと思ってたんだけど……。

 まぁ、言うほどのことでもないし、何も言わないでおこう。


 二人目は、同じく俺の城に来たビキニ幼女の勇者だ。


「オレは『リー』っていいます。ギフトで回復しながら戦って、ずっと倒れずに相手の体力を削っていく戦い方が得意です」


 リーか、よし覚えた。

 なるほど、あのギフトはただ単に味方を回復させるんじゃなくて、自分で戦いながら回復することで半永久的に倒れない戦士になるようにも使えるのか。


 次は、あの刃を自在に操れるイケメンだ。


「私は『ロミオ』と申します。ギフトで何でも斬ることができるので、比較的得意といえるような戦い方はありませんね。これからよろしくお願いします」


 そりゃそうだろうな。

 光の刃を飛ばせるってことは、遠距離攻撃も可能っていうことだ。

 つまり、前衛でも後衛でもなんだろうとかまわないわけだ。

 誰だろうと、なんだろうと斬ってしまう。それだけで十分なのに、飛ばせて、自由自在に操れるとか、チートすぎる。

 おまけに、男の俺ですら少しくらっとくるほどのイケメンとか、なんだよそれ、なろう系主人公かよ。


 次は、あの『属性ムチ』のヤバそうなやつだ。


「お初にお目にかかる、アレイス殿! 我が名は『パーバート』! 全てのSとMを司る者だ! ちなみに、特技は調教だ」


 4人目にして明らかにやばいやつが来た。

 この流れだったら、普通は得意な戦闘スタイルを言うもんだろ! なんだよ調教って!?

 と、とりあえず、彼とは今後はあんまり関わらないほうがよさそうだな……。


 最後に、俺が一番厄介だと思っていた蜂の子の勇者だ。


「私は『シアン』。特技は高いステータスを活かした――――」


 うんうん。


「犯罪行為よ。圧倒的な力で警察ごとねじ伏せる、完全犯罪が得意よ」


 うんうん、なんて?

 ……うん。あのレストランのときから、おかしい人だとは思ってたけど、まさかこんな人だったとは。


「そんなわけで、こいつらの自己紹介は以上だ」


 いや、どうすんだよ。2人くらい頭のおかしい奴がいるんだけど。

 え、なんでみんな何にも反応しないの。

 これが普通なのか?

 俺がおかしいのか?


「よし、じゃあアル。早速魔王たちについて話したいと思う」


 そんな俺の気持ちを知るわけもなく、ルートが話し始めた。



「魔王には現在数人の仲間がいる。魔王軍の幹部ってやつだ。その中の一人が、この王都から100キロほど離れた街に出現したらしいんだ」


「ほう。で、敵のギフトとかは分かっているのか?」


「それが、まだ分かってなくてな……」


「そうかぁ……」


 ギフトが分かれば、事前の対策がしやすくなったんだけどなぁ。

 まぁ、分からないものは仕方がない。


「でだ、この魔王軍幹部をぜひとも、お前に倒してもらいたいんだ」


「いや、別にいいけどさ、なんで俺なんだ? シアンとロミオじゃ勝てないのか?」


「ああ、相手との相性が圧倒的に悪いんだ」


 2人と相性の悪い相手?

 こんなに強い2人にも弱点があるのか?

 一体なんだろうか。


「実は、その幹部はスライム系統の魔物でな。2人は物理的な攻撃が得意だから、どんなに攻撃してもすぐに回復されてしまうんだ」


「あー……、なるほど……」


 スライムは、最弱の魔物として有名だ。だが、それはただのスライムの話。

 上級のスライムにもなれば、どんなに殴られようと斬られようと、すぐに回復してしまう。

 なぜなら、身体のほとんどが水でできているからだ。ようは、水を斬ってもすぐに元通りになるのと同じだ。

 そのため、上級スライムには魔法攻撃しか効かない。


「残念ながら、こいつらの中で攻撃系の魔法を使えるやつはいないんだ……。そこで、お前の仲間に頼みたい」


 たしかに、俺の仲間なら魔法を使えるやつがいる。

 魔王軍幹部のスライムも倒すことができるかもしれない。


「頼む、魔王軍幹部を倒してきてくれないか!」


「……しょうがねぇなぁ」


 今さら断るわけにはいかない。

 それに、いくら上級とはいえ俺の仲間がたかがスライムに負けるはずがない。


「いいぜ、その頼み受けよう。昔の仲間の頼みなんだ、受けて当然だろ!」


「ありがとう、アル!」


 こうして、俺の魔王軍幹部討伐イベントが始まった。

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