第2話 8人の仲間たち
セッ○スするためにサキュバスを生み出そうとしていた俺。
しかし、失敗作として作られたモンスターたちが街や人を襲い、人々に大きな損害が出たせいで、そのモンスターの元締めの俺は『魔王』扱いされることになってしまった、らしい。
どうしてこんなことになってしまったんだ……。
俺が頭を抱えて悩んでいると――――
「ねぇ、魔王さまぁ……。私、もう我慢できないの……」
「……何がだ」
女が俺に抱きついてくる。
そして、俺の下腹部をなでなでしながら、手を少しづつ下に下げていく。
「お願い……魔王さまの性剣エクスカリバーで、私をメチャクチャにして欲しいの」
「……いいかげんにしろ」
「イタイイタイイタイごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
俺は抱きついてきたリッチーに四十固めを決めてやった。
腕をたたいて『ギブアップ』のサインをしてきたので、放してやる。
「あのなぁ……俺がお前とセッ◯スできないのはお前も知っているだろ! それなのに俺をおちょくるのはやめろ!」
「えー、だって童貞の魔王さまの反応を見るの、楽しいんだもん」
「オタクをおちょくるギャルかよ……」
「そんなギャル実在しないわよ」
このリッチーは、俺が魔王討伐を目指し、討伐完了後に生み出した、俺の仲間の1人だ。
名前は『アロマ』という。
俺が付けたのではない。
不思議なことに、俺が生み出した魔物たちには、生まれたときからそれぞれ名前を持っているのだ。
俺に“魔物を生み出す能力”を与えた神が、名前も与えているのだろうか、などと幾度も考えたが、考えても答えなど出ないので、もう考えないようにしている。
「楽しいからって、人の嫌がることをしてもいいのか?」
「でも、魔王さまはそこまで嫌じゃないでしょ?」
「う……」
確かに、やられて嫌かと聞かれたら実はそこまで嫌じゃない。
俺に構ってくれるのがとても嬉しいからだ。俺が信頼されている証だし、何より、日本にいたころの記憶はどれも俺が一人で寂しく生活していたものばかりだったからな。
学校でもいつも一人、職場でもいつも一人、家でも記憶の俺はいつも一人だった。きっととても寂しかったことだろう。
そう思うと、たとえこういう形でも構ってくれるのは嬉しいことだ。
……とはいえ、さすがにイラつくがな。
「とにかく、俺以外にはこういったことはするなよ」
「魔王さま以外にする人なんていないわよ」
「……そうだ。あいつら呼んできてくれよ」
「なんで?」
「ちょっと話がある」
「分かったわ! 呼んでくるわね!」
〜5分後〜
「イカガイタシマシタカ? 魔王サマ」
「ああ、みんなよく来てくれたね」
「当然のことでございます。我らは皆全て魔王さまに造られた存在。魔王さまのご命令は絶対でございますから」
「……で、だ。話の本題なんだが……」
「はい、なんでございましょう?」
「……なんで俺が魔王なんかになってるんだよ!?」
俺は悲痛な叫びを上げた。
俺の目の前には、昔からの仲間たちがいる。
「……何故、トハ?」
ドラゴンの『グライド』。
その巨体で、鱗で覆われたいかつい顔からは疑問の表情がうかがえる。
「な、何か不手際がございましたでしょうか!? ああ、どうしましょう!? 魔王さまになんてことを……!? 困りまちた……、どうちまちょう!?」
ヴァンパイアの『リーン』。
彼女はとてもシャイな性格で、困ったことが起こるとすぐに混乱してしまう。
俺が怒っていると思ったのか、ひどい慌てようだ。
「あははは~、またリーンちゃんがテンパってる~、リーンちゃん落ち着いて~、また噛んでるよ~」
鬼人の『瑠璃』。
基本的に穏やかでのほほんとした性格をしており、発言からもわかるように、かなりのんきだ。
「貴様ら五月蝿いぞ! 魔王さまに失礼だと思わないのか!」
リザードマンの『クレア』。
俺の仲間の中でもかなりの常識人、そして律儀だ。
そして、こういう細かいことにもうるさい。
「ふああぁぁ……もう眠いよ……」
リッチーの『アロマ』。
こいつに関しては、うん、言うことはないだろう。
「寝てはダメです、起きてくださいアロマさん」
人工生物の『ソルト』。
同じく仲間の中でもかなりの常識人。
いつも無表情で何を考えているのかあんまり分からん。
今も何を考えてるのかさっぱり――――いや、今日の献立を考えてるのか?
「ああ……これも失敗作だ……もっと実験しなきゃ……フヒッ……フヒヒッ……」
ゴーストの『しずく』。
彼女は、今はこんな感じだが、いつもは普通の女の子だ。
ちょっと研究に没頭しすぎるとこうなっちゃうんだよなぁ……。
「……何かご不明な点があるのでしょうか?」
そして最後に、デュラハンの『アトラス』、で計8人だ。
「あるに決まってんだろうが! なんでサキュバスを生み出そうとしてただけなのに魔王なんかになってるんだよ!?」
俺がそう言うと、グライドと瑠璃がおかしなことを言ってきた。
「魔王サマノ願望ヲ我ラガ叶エヨウトシタ結果デス」
「そうだよ~、私たちは魔王さまのお願いを叶えてあげよ~としたの~。褒めて褒めて~」
……は? 俺の願い?
「お前ら何言ってんだ?」
「魔王さま、お忘れでしょうか?」
アトラスがそう言う。
それに続けるように、他のやつらも話し始めた。
「あれは25年前のことだったわ……」
「ま、魔王さまは、……ここっ、こう言いまちた!」
「『魔王みたいに強くなりたい』って……フヒッ」
……たしかに言った記憶はある。
けど、それは魔王を倒したいから、魔王と同等の力が欲しいってだけの話で……。
「だから私たちは頑張ったのよ!」
「魔王サマガ生ミ出シテキタモンスターノ世話、訓練」
「食べ物の場所でしょ~? 人間との戦い方でしょ~? あとは~……」
「レベル上げでしょうか、瑠璃さん」
「ああ、それそれ~」
…………。
「そして、見事、私たちは魔王さまを誰もが認める『魔王』にすることができたのです!」
「……どうでしょうか、魔王さま。お分かりいただきましたでしょうか?」
みんながそれぞれ言った後に、アトラスが聞いてきた。
「……ああ、よく分かったよ……、全部お前らのせいってことがなぁ……!」
「ど、どうされましたか!?」
俺が声を荒げると、全員が慌てたような表情をした。
だが、俺はお構いなしに続ける。
「俺は平穏な生活を送りたかったのに……可愛い女の子たちと毎日セッ◯スしたかっただけなのに……! お前らのせいで、世界中を敵に回したじゃねぇか!」
「し、しかしながら、我々は魔王さまの願望を叶えようと……!」
まだ分からないらしいアトラスに俺の怒りをぶつける。
「誰が魔王にして欲しいと言った!? 俺はお前らと違ってただの人間だ! だから、俺だけでも魔王と戦える力が欲しかった、それだけだ! お前らに苦しい戦いをして欲しくなかったからなぁ。それだけなのに……!」
「で、でも……私たち、頑張ったよ~……魔王さまのことを思って……」
怒った俺をなだめようと、瑠璃が言い訳をしてくる。
「あのなぁ、瑠璃、相手の気持ちも考えずにただ突っ走ることを『相手を思いやる』とは言わない!」
「ひっ……ご、ごめんなさい……」
「謝ってももう遅い、どうしようもない……もうアウトなんだよ……! また勇者はやってくる。次は前のようにはいかないかもしれないんだぞ!」
俺が憤慨して声を荒げると、突然、アトラスが頭を下げてきた。
「……申し訳ございませんでした。全て、モンスターを統括する役目である私が原因です」
「な、何を言われるのだ、アトラス殿! 私にも十分に責任はある」
と、クレアが自分にも非があると、アトラスに言う。
「私ニモ非ハアル」
「グライド……」
「そうよ、私だって色々とやっちゃったし」
「そそ、そうですよ……あ、アトラスさま、だだっ、だけじゃないでちゅ!」
「みんな、悪いよね~」
「全員で謝る……それがいいですね」
「アトラスは……責任を感じることが……多い……新しいデータゲット……フヒッ」
他のやつらも、次々に自分の非を認める。
「魔王さま……我々は魔王さまに許していただけるのなら……何でもする覚悟でございます」
「……そうか」
「それを証明するために……今からここで、我々全員で『セップク』を致します!」
「…………ん!?」
「さあ、みんな準備はいいか……!」
気がつくと、8人全員が白い着物、死に装束を着ていた。
「うぇ~ん、怖いよ~、でも、魔王さまに許してもらえるなら……やるよ~……」
「ちょ、ちょっと待て! 何も切腹する必要はない! ていうか、4人くらい切腹しても大丈夫な奴がいるだろ!」
正確にはデュラハンとリッチーとヴァンパイアとゴーストだな。アンデッドが切腹しても、すぐに回復するだけだ。
っていうか、アトラスは常に全身鎧なんだし、切腹なんかできないだろ。
「じゃ、じゃあ、一体どうしたら許してもらえるの? あ……まさか、体で払えって言うのね! 私たちにひどいことするつもりでしょう? エロ同人みたいに!」
「やっぱアロマだけ切腹でいいよ」
「ひどい!?」
実際、剣を突き刺そうと思っても普通に折れるだろう。
正直、こいつらが切腹する意味がない、というかできない。
「し、しかし……『セップク』でなければ、何をすれば許していただけるのですか?」
「分かった。アロマの言う通り体で……クレア頼んだわよ」
「な、何故私なのだ!?」
アロマのせいで話がややこしくなってしまった。
あとであいつはシバいとこう。
「だからそうじゃないって!」
「で、では、一体……我々はどうすれば許していただけるのですか?」
「……こうなった以上、もう後には引き返せない。お前らには、これからの行動で償ってもらう」
「で、では……!」
アトラスが期待のまなざしで俺を見てくる。
俺はため息をつきながら、覚悟を決めてその言葉を口にした。
「仕方がない。本当に嫌だけど、魔王になるよ俺」
「ッ!! かしこまりました!」
8人全員が頭を下げる。
「我々一同、全身全霊で魔王さまをお支え致します!」
「……まぁ、やるしかないか」
みんなが、ここまで本気だとなぁ。
断るわけにはいかないだろ。
大事な仲間たちの願いなんだ。
「……仕方ねぇなぁ、20年ぶりに、元勇者の実力を見せてやるよ!」





