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引退した“元”勇者は、戦いたくない ~2度目の冒険を幸せに終わらせるために~  作者: 水谷 輝人
第1章 俺、気がついたらなぜか魔王になってました
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第16話 カエル狩り

 クエストを受けた俺たちは、王都の近くの平原にやってきた。

 受付の人によると、そこでマッドフロッグが出現するらしい。


「しかし、やってきたはいいものの、カエルなんてどこにいるんだ?」


 見渡す限りどこにも、カエルはおろか、生き物の姿が見当たらない。


「本当ね、草くらいしかないわね」


「ああ、まさにその通りだな。草しか生えない」


 おかしいな、確かに受付の人にはこの辺りに出現するって言われたんだけどな……。

 あの受付の人が間違ったことを言っていたとは思えない。

 だから絶対に、この辺りにカエルがいるはずなんだが……。


「…………あ」


 俺はそこであることを思いついた。



「アロマ、爆発系統の魔法を適当な地面に撃ってくれないか」


「え、別にいいけど、なんで?」


「いいからいいから」


 アロマが首をかしげながら術式を構築する。


「『ブラスト』!」


 アロマがそう言って手を前に突き出すと、アロマが手を向けた先に、光の球が飛んでいく。

 そして、球は地面にぶつかると大きな音を立てて爆発した。

 爆発の振動で地面が揺れる。


「こんなことをして、一体何の役に立つの?」


「めちゃくちゃ役に立つと思うよ」


 すると突然、あちこちの地面が盛り上がりはじめた。


「え、なになに!?」


「ほーら言っただろう? 役に立つって」


 盛り上がった地面からは、たくさんのカエルたちが現れた。



「おかしいと思ったんだよ。普通ならカエルたちはエサを探しに平原を跳ね回っているはずだ。じゃあなんで一匹もカエルがいなかったのか」


 そう、簡単なことだ。


「エサを探す必要がなかったからだよ。つまり、満腹だったってことだ。満腹になったカエルたちは、敵に見つからないように土の中にもぐっておねんねしてたってわけだよ」


「なるほどそういうことだったのね。だから、私の魔法で目を覚まさせたってわけね」


「そういうことだ」


 俺たちはカエルたちと正面から向かい合った。



「さぁアロマ、ひと狩り行こうじゃないか!」


 20年ぶりのクエストだ!

 俺は一匹のカエルに向かって走り出した。


「いいかアロマ、死体が残るような魔法を使えよ! 死体が無かったら、討伐したことにはならないからな!」


 走りながらアロマに忠告する。


「もちろんわかってるわよ! 任せておいて!」


 そんな元気な返事が返ってきた。


「さ、俺もそんなこと言ってる場合じゃないな……」


 俺は剣を抜き、そのままカエルめがけてひたすら走る。

 カエルは俺に気付いたのか、口をパックリと大きく開ける。

 そして、大きな舌を俺めがけて伸ばしてきた。


 だが、俺は間一髪のところでその攻撃を避ける。

 俺の持っているスキル『回避』の効果によって、俺は相手から受ける初めての攻撃は高い確率で避けることができる。

 このスキルは、俺の体を俺の意思に関係なく自動で最適な回避の動きをしてくれるという便利なスキルだ。

 カエルが舌を口に戻している間に、俺はカエルの所にたどり着く。

 まずは、カエルの右の前脚と右の後ろ脚を切り落とす。


「『斬撃』!」


 斬撃は、俺のスキルの一つで、剣での攻撃の威力を上げることができる。

 一度目の斬撃でまずは右の前脚を。


「『斬撃』!」


 次の斬撃で右の後ろ脚を切り落とした。

 右側の両方の脚を失ったことで、バランスが取れなくなったカエルは地面に倒れこんだ。


「よし、次でとどめだ」


 脚が二本も無くなり、上手く動くことができないカエルの上に乗り上がる。


「『斬撃』!」


 首の付け根当たりのところに向けて斬撃を使って、深い切れ込みを入れる。

 途端に、カエルの動きが完全に停止した。

 脊髄を体から切り離したのだ。



「ふぅ……、まぁこんなものか」


 カエルがビクビクと痙攣している。

 さて、アロマの方はどうかな?


「あっ、魔王さま! こっちの方は全部終わったわよ!」


 アロマのほうを見てみると、周りに大量の氷柱が立っていた。

 ……いや、あれは氷柱じゃない。凍ったカエルだ。

 周りを見渡してみると、かなりの数いたはずのカエルが軒並み氷の柱になっていた。


「……え? これ、お前が全部……?」


「ええ、そうよ。魔王さまが死体は残せっていうから、凍らせたの」


 あれだけの数を、俺が一匹倒してる間に倒したっていうのかよ……?

 俺は、俺の力とは比べ物にならないくらい強いアロマに少しだけ恐怖を感じた。




※※※※※※※※




「よーし、無事に帰ってきたぞ」


 俺たちはカエルを倒し、ギルドに戻ってきた。


「すみませーん、換金したいんですけど」


 早速、先ほどの受付の人に話しかける。


「はい、マッドフロッグ討伐クエストを受けていたマオーさんとアリマさんですね。換金ということは、見事討伐されてきたんですね」


「ええ、まぁ……」


 9割くらいはアロマが凍らせたけどな。



「それでは、討伐されたマッドフロッグを見せていただけますか?」


「分かりました。アリマ、ボックスを」


「ええ、分かったわ。『ボックス』」


 この魔法は、異空間に物をしまっておける魔法だ。

 アロマが手をかざすと、空中に穴のようなものが出現する。

 すると、受付さんはギョッとしたような顔になった。


「えっ、そ、それって……空間魔法ですか……?」


「え? あ、はいそうですが」


「え、えええええええええええッ!?」


 俺が答えると受付さんはとても驚いたようで、大きな声を上げた。

 大きな声を聞いた周りの冒険者たちがこっちを見てくる。



「えっ、くくく、空間魔法!? 空間魔法ってたしか世界に使える人は10人もいないって話じゃなかったっけ!? え、え!?」


 動揺しているのか、口調が変わってしまっている。

 受付さんが言った言葉に、周りの冒険者もざわつき始めた。


(やべぇ! もしかして、空間魔法って、今の時代はめちゃくちゃ珍しいものなのか!? でも、たったの20年だろ? どうしてこんなに反応が過激なんだ?)


 どうしよう、とても目立ってしまっている。

 あまり目立つと、俺たちがただものじゃないことに気付かれてしまうかもしれない。

 ここは回避しなければ……!


「お、落ち着いてください。空間魔法って言っても、物がしまえるだけのバックみたいな魔法ですから! あなたが考えているようなすごい魔法は使えませんから!」


「そ、そうなんですか……?」


「ええ、そうです! とりあえず、この話はいったんここで終わりにして、換金の続きをしましょう!」


「あっ、そ、そうでした。まだ途中でしたね。ンンッ! ……では、見せていただけますか?」


「はい、もちろんです」


 俺は穴の中からカエルの死体を次々に出していった。

 5匹ほど出すと、受付さんが『おぉ……』と声を出した。

 10匹ほど出すと、受付さんは『おぉ……!』とさっきよりも大きな声を上げた。

 最初の方は受付さんも期待のまなざしで俺が穴からカエルの死体を出すところを見ていた。

 だが、20匹を超えたところで、少しずつ受付さんの反応がおかしくなっていった。

 25匹くらいで苦笑いし始め、30匹で顔から笑顔が消え、40匹で血の気が消え……。


「も、もうやめてください! 一体何体のマッドフロッグを倒してきたんですか!?」


 50匹目を出したところで真っ青な顔をした受付さんに止められた。


「や、やめてくださいよ。まだあと30匹はいるんですから」


「さ、30も!?」


 実は最初の戦いのあと、俺たちはまたカエルを起こして凍らせてという作業を繰り返していた。

 アロマがいれば、簡単に倒せることに気が付いた俺はカエルを狩って狩って狩りまくったのだ。

 一匹につき一日分の宿代になるし、金があればあるほど困らなくなるからな。



「……はい、これで全部です」


 俺がカエルの死体を全部出し切ると、山積みになった死体を見た受付さんはプルプルと震えながら、俺に代金を渡してきた。

 ギルドを出るとき、なぜか周りの冒険者が俺たちのことを凝視していた。

 さっきの空間魔法の件とは違って、別に珍しいわけでもないだろうに。

 だって、ここは王都のギルドだぞ?

 ここにいる冒険者たちはさぞかし強いに違いないだろう。


 それなら、カエル80匹なんてさほど難しいことじゃないだろうに。

 なのに、なぜか冒険者たちは俺たちのことばかり見ていた。




※※※※※※※※




「あ~……、今日も疲れたな……」


「そうね、私も久しぶりに魔法使ったから疲れちゃった」


 俺たちは手ごろな宿を見つけ、そこに泊まることにした。

 ベッドに倒れこむ。ふかふかでとても気持ちがいい。

 ここはいい宿だ。ちゃんと布団がきれいにされている。

 唯一気に食わないといえば、部屋が一つしか空いてなかったせいでアロマと相部屋になってしまったことだろうか。


「しかし、なんでベッドが一つしかないんだよ」


「そうね、これじゃあ二人のどちらかが床で寝ることになるじゃない。どうなってるのかしら」


 不思議に思い、一階の受付にいる宿のオーナーのところに聞きにいった。



「なぁ、部屋にベッドが一つしかなかったぞ?もう一つ用意してもらえないか?」


「あ? お客さん何言ってるんだい? あの部屋はベッドはもとから一つしかないよ」


「は? そりゃなんでだよ?」


 すると、オーナーの口からとんでもない言葉が飛び出してきた。


「あの部屋はカップルが使う部屋だから、ベッドは2人で兼用してもらうようになってるんだよ」



「……は、はあああああああああッッ!?」


「あんたらカップルだろ? だったら何の問題もないじゃねぇか」


「い、いやいや! 俺とあいつはそういう関係じゃねえよ! っていうか俺の顔見ろよ! どうみてもあいつの年齢とは不釣り合いだろ!」


「そ、そうなのか? 仲が良かったから俺はてっきり……。まぁでも、予備のベッドはこの宿にはねぇからなぁ……。悪いがお客さん、我慢してくれねぇか?」


「えーマジかよぉ…………」



しぶしぶ、部屋に戻った。


「で、どうだったの?」


「予備のベッドはないってさ……」


「えーそうなの? なんで?」


「え? いや、それは……」


さすがにさっきオーナーに言われたことをそのまま伝えるのは……。


「よ、予備のは壊れちゃったらしくてさ……」


「えーそうなんだ。じゃあ、どうする? どっちがベッドで寝ようか?」


 そう、問題はそこだ。

 ベッドが一つだから2人で一緒に寝よう!ということにはさすがにできない。

 いくら相手があのアロマだとは言え、アロマの見た目自体は、美人で巨乳でスタイルも悪くない。

 そんな相手と一緒のベッドで寝るなんて、色々と我慢できる自信がない。

 いや呪いのせいで性行為はできないのだが、俺の精神が持つかどうかわからない。

 絶対に一緒に寝ることだけはあってはならない。


「まぁ、俺のほうがお前より立場としては上だから、俺がベッドで寝るのが当たり前だろ」


「えーなんで! 私もベッドで寝たいんですけど!」


 本当にこいつは、礼儀というものを分かっていない。

 普通ならここは立場が上の俺にふかふかのベッドを譲るべきだろ。



「はぁ……、もういいや、お前がベッドで寝ていいよ」


「え? いいの? やった!」


 アロマの性格を知っていた俺は、文句も言わずにアロマにベッドを譲った。

 このまま話続けても終わらない気がしたし、いがみ合ってるうちに最終的に2人で寝ることになりかねないので、ここはいさぎよくアロマに譲ってやることにしたのだ。


「ありがとう、魔王さま!」


 アロマが満面の笑みでそう言う。

 ……まぁ、嬉しそうな笑顔が見れたから別にいいか。

 そう思いながら床に布を敷いて寝転がる俺だった。

ここまで読んでくださりありがとうございます。

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