表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
引退した“元”勇者は、戦いたくない ~2度目の冒険を幸せに終わらせるために~  作者: 水谷 輝人
第1章 俺、気がついたらなぜか魔王になってました
13/88

第13話 魔王は王都へいくことを決意する

「クソッ、我が国の軍勢はどうなっている! 歩兵は!?」


「皆打ち取られました……」


「ナイトは……? 皆どうした……?」


「それもすでに……」


 すると、王の目の前に一人の騎士が現れた。


「フハハハハハッ! 貴様が王か」


「グッ……お前は……!」


「貴様の首を頂いて、我が殿下のお目に入れるのだ!」


 そして、騎士は王の首向けて、剣を振った。




「うわああああああッ! 負けたあああああああッ!」


「はい、俺の勝ち!」


 今俺は、ロイドと一緒にチェスをやっている。

 なぜ不法侵入してきたやつと仲良く?と思うかもしれないが、なぜだかこの男とはなかなか気が合うのだ。


「いやー、まさかお前が俺と同じ転生者だなんて思わなかったよ」


「俺もだ。40年生きてきて、転生者にあったのは初めてだな」


 そう、ロイドは俺と同じ転生者だったのだ。

 しかも、偶然にも同じ日本からのだ。


「しかも、好みだったアニメも、推しキャラも同じだとは……! なんて偶然なんだろうな!」


「日本にいたころは、よくアニメを見ていた記憶があるよ……」


 俺には、日本にいたころの記憶がほとんどない。

 覚えているのは、自分が死んだ時の光景と、日本の常識的な知識、例えばアニメやサングラスとかだ。

 だけどロイドと出会って、どうやら俺はアニメのことについて詳しいということが分かった。


「ほんとに、ロイドが侵入してきてくれてよかったよ!」


「おいおい、出会い方がおかしいだろ。もっとマシな方法でお前と会いたかったのによ」


「それはこっちのセリフだよ」


 2人で笑いあう。

 ああ、こんなに笑ったのは何年ぶりだろうか。

 最初はこいつから外の世界の情報を得ようと思って、この城に滞在させていたけど、今では完全に仲のいい友だちのような関係だ。


「そういえば、ロイド。君が今まで多くの貴族や領主から奪ってきた金はどうしたんだ?」


「ん? ああ、金は全部教会やら孤児院やらに寄付したよ」


「君はその金は全く使わなかったのか?」


「びた一文も使わなかったよ」


 俺はそれを聞いて少し驚いた。


「なんでだ? 少しくらい使ったっていいじゃないか」


「俺が奴らから奪った金は、もともと奴らが治めている領民たちが手にするはずだった金だ。俺が使うべきじゃない」


 さらに、ロイドは続ける。


「俺が襲ったとこはどこもそうだ。今まで4つくらいやったけど、どいつもこいつも国に内緒でありえないほど高額な税金を課したり、自分の収入を安く見積もって脱税してたような奴らだった。本当は、金を領民たち全員に返せたらよかったんだけど、それだったら奴らの権力で領民たちから巻き上げればいいわけだから、結局奴らの手に戻っちまう。だったら、巻き上げられない孤児院や教会に寄付しようってなったわけだ」


 孤児院や教会は、すべて国が管理していて、税金を納める必要がない。

 そのため、貴族や領主たちはそれらから税金を取ることはできない。


「なるほど、考えたな」


「だろ?」


「でも、少しぐらいはその金を使ってもよかっただろ。飯食ったり、風俗店行ったりさぁ」


「飯は自分で作るのが好きだし、風俗は……」


 すると、ロイドが急に黙り込んでしまう。


「どうした、ロイド?」


「いや……、風俗に行っても俺全然気持ちよくなれないんだよね……」


「なんでだよ」


「いや、実はさ……、俺呪いで『短小』なんだよ」


「呪い? ああ、俺の性行為ができないやつと同じやつか」


「そう。呪いのせいで、俺の息子は米粒並みに小せぇんだよ……」


 米粒サイズの息子!?

 えッ!?

 どうやってそんなので排尿とかすんの!?


「そんなのだから、風俗嬢に挿れても、全然気持ちよくねぇんだ……。っていうか、あれって入ってるのかな……?」


「そ、そうか……」


 俺も呪いのせいで童貞を捨てられないとはいえ、こいつも色々と大変なんだな……。



「そういえば、お前は魔王なんだよな?」

 

 すると、ロイドが突然変なことを聞いてきた。


「そうだけど、なんで今さらそんな当たり前のことを聞くんだ?」


「いや、魔王なんだったら、今後色んな勇者と戦うことになるだろ? 勇者の情報はもう手に入れたのか?」


 確かに、勇者と戦うことになるのは間違いないだろう。

 だが、肝心の勇者たちの情報は……。


「……実は、それがまだ全然」


「それなら、ちょうどいい情報があるぜ」


 いい情報?

 俺は少し疑いながらも、興味を持った。

 ロイドが続ける。


「今度王都のほうで豊穣祭をやるらしいんだ。そのときに、王都に勇者が全員集められるって話だ」


「なに、それは本当か」


「領主や貴族たちがそう話してたから、間違いないだろ」


 そうか。

 ……よし、そうと決まれば。




 ※※※※※※※※




「「「「「「「「王都に行く!?」」」」」」」」


「ああ、そうだ。そこで今度、勇者が集められるらしい」


 俺は、いつもの仲間たちに王都へ向かうことを伝えた。


「し、しかし、そのような話は我々は聞いたことがありませんが……」


 アトラスが言う。


「ロイドから聞いたんだ」


 すると、皆がとても驚いたような顔をした。



「なんと、魔王さまはあのような男の話を信じるというんですか!?」


「あの男はこの城に侵入し、金銀財宝を盗もうとした男ですよ!?」


「そうよ! どうしてあんな男を!」


 皆が口をそろえてそんなことを言う。


「俺があいつを気に入ったからだ」


 だが、俺は即答した。


「し、しかし……」


「なんだ? 俺の言うことを聞かないつもりか?」


 そう言うと、全員下を向いて黙り込む。



「あいつには何かある。ただの人間じゃないと俺は思う。それに、俺は今まであそこまで気が合った男はいない。俺はあいつの言うことを信じるよ」


「そうですか……、魔王さまがそうおっしゃるのなら……」


 若干嫌そうな言い方をしながら、渋々俺の考えを受け入れた。

 昔から、俺の仲間たちは俺の言うことをよく聞いてくれた。

 ありがたいことだ。

 どこかでちゃんとお礼しないとな。 



「というわけで、仲間として誰か一人についてきてもらいたいんだ」


 俺がそう言うと、アトラスが物凄い勢いで顔を上げる。


「それなら! 私が行きましょう!」


「いや、アトラスはいいよ」


 残念ながら、アトラスと行くつもりは無かったので、ためらいなく必要が無いことを告げる。

 すると、アトラスは絶望したかのように床に手をついた。


「な、なぜですか……?」


「お前全身鎧だろ? そんな奴と一緒に歩く俺の気持ちにもなってみろよ。完全に変な目で見られるだろ」


「ぐッ、確かに……」


 言い返せなくなったのか、諦めたかのようにがっくりと肩を落とすアトラス。

 なんでそんなに俺についてきたいんだ。


「そもそも、なんでお前そんなに行きたいんだ?」


 疑問に思ったので尋ねてみる

 それに対し、アトラスはこう言った。



「最近、私の出番が少ない気がするんです……。私の唯一の能力である『鑑定』も、この前しずくが作った機械で代用ができるらしいじゃないですか!」


 ああ、戦闘力はかるやつのことか。


「まぁ、確かにそうだな」


「厳格で、騎士というキャラも、クレアと完全に被ってますし……! この前も、せっかくアロマに呼び出されて茶番劇を手伝ったのに特にいいこともなく……!」


「まぁ、確かにそうだな……」


「私は仲間たちの統率をする、魔王さまの次に偉い存在のはずなのに! アロマは私にタメ口をするし!」


 それは、アロマの性格上仕方のないことだな。


「何でしょうか……、自分の存在意義が分からなくなってしまいまして……」


「そうか、それは可哀そうに……。だが、すまないが連れて行くのはお前じゃない」


「なんですか、鎧を脱げば連れて行ってくださるんですか!? だったら脱ぎますよ、鎧の一枚や二枚!」


「いや、そういう話じゃなくて」


 そう言うと、アトラスは今度は完全に崩れ落ちて、床に倒れ込んでしまった。

 役割が無くなるのって、そこまで辛いことか……?

 すると、今度はクレアとソルトが顔を上げた。



「「それでは、私を連れていってください!」」


 2人が同時にそう言った。


「……なぜソルトが魔王さまについていく必要があるのだ」


「クレアこそ、どうして魔王さまとついて行けると思っているの? あなたの見た目じゃ、アトラスさまと同じように目立つでしょう? 私は見た目はほとんど人間だから、目立たないわ」


「ハッ、お前は魔王さまの言った意味が分からなかったのか? ついてきてほしいというのは、護衛してほしいということだ。私ならどんな敵が来ようとも、魔王さまをお守りする自信はあるが、お前は魔王さまを守り切れるのか? ただのメイドが」


「私だって、レベルは500はあります。どんな危険からだって守ってみせるわ」


 なぜか、クレアとソルトが言い争いを始めてしまう。


「ちょいちょい、2人とも落ち着けって。それに、もうついてきてほしいやつは決まってるんだよ」


「「それは誰ですか!?」」


 クレアとソルトがぐいっと俺に近づいてくる。


「ちょ、近いって……! あ、アロマだよ!」


「え、私?」


 皆がアロマのほうを見る。



「アロマは見た目は完全に人間だし、実力もこの中で2・3番手ぐらいには強い。それに、あらゆる属性の魔法が使えるんだ。こんなに頼もしい仲間はいない」


「そ、それじゃあ……!」


 アロマが期待に満ちた目で俺を見てくる。


「ああ、アロマ。お前に頼みたい」


 そう言うと、アロマが大声をあげて喜び始めた。


「やった、やった! 久しぶりにおいしいスイーツが食べたかったのよ!」


 さぁ、行く準備をしなくちゃな。



「アトラス、金を5万ゴールドくらいと、俺の装備を一式用意してくれ」


 そう言うと、アトラスが泣きそうな声でこう言った。


「無理です……。現在この城には金はありませんし、魔王さまの武具は一つもありません……」


 …………は?


「……今なんて?」


「魔王さまはこの前、魔王城の中でモンスターたちを養えとご命令されましたよね……」


 確かにそう言った。

 これ以上、人々を襲わせないようにするためだ。


「しかし、圧倒的な数のモンスターを養うためには、貯蔵庫の食料だけでは足りず金庫の金を使いましたが、つい先日、食料もそれを買うための金も全て尽き、魔王さまの武具を売って足しにしましたが……、その分も今日尽きてしまいました……」


「………………」


 開いた口が塞がらない。

 えっ、じゃあ今俺たち、無一文ってこと……?


「…………どうしよう」


 気が付くと、俺は体中から汗が止まらなくなっていた。

ついに物語が動き出すところまで書けました……!私的に、今までの作品は書き続けることができなくなってしまい、現在投稿が止まってしまっているのですが、この作品が無事続いてくれていることに喜びを感じています!これからもどんどん更新していきますので、よろしくおねがいします!(他作品も、またいつか書けたらいいなと思っています。)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ