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1 今日は魔王(パパ)が出張で留守なので遊びに行こうと思います

灰色の世界、灰色の木の上で-




「ノアー!」


灰色の空気が震えて、僕に音を届けた。

遠くから聞こえてくるのは、ぱたぱたと鳴る羽ばたきとあの子の声。

ぼくが大好きな子の声。

ああ、また何か見つけてきたのかな。

ぼくの為に持ってきてくれたのかな。

声の主は、器用に風を掴んでぼくよりもずっと上手に飛ぶ。

きっと、兄さまよりも先生よりもずっと早く飛ぶ。

ほら、もう来た。


「…ア、ノア!起きて!これ見て!」


「うーん、ノル?どうしたのー?」


「ほら!お花見つけてきたの!これ絶対良い窓ついてる。」


柔らかな日差しが注ぐお気に入りの木の上で、その幹にもたれて微睡んでいたぼくの目の前にずいっと差し出された灰色の花。

ばさばさと風が起きて、隣の枝に降り立ったノルの黒い翼がしまわれる。

ぼくは持っていた本を脇に置いて、花を受け取った。


「わあ!きれいな色!それにすごく大きいね。」


「でしょう?川の近くに咲いてた!」


「えー!ノルってば、またそんなところまで行ってたのー?」


「ちょっとだけだよ。兄さま達から花の場所の事聞いてさー。」


ノルは僕を見て笑った。

どうだ!凄いだろう!ほめて!と顔に書いてある。


「それでも一人でなんて危ないよ。…ぼくはまだついて行けないのに。」


「…。」


「…ノル、とーっても凄いよ!見せてくれて、ありがとう!」


ぼくはノルに向かって微笑んだ。

…突如発生する圧迫感。

おいおい。


「ノア!次は連れてってあげる!」


「うん、うん。わかったから重いよ、苦しいよ。」


ぎゅーぎゅーと僕を抱きしめるノル。

とても力強いけれど、ノルはぼくより華奢で背も少しだけ小さい。

本当に大好きなんだ。

手折られた灰色の花がぼくの掌の中で風に揺れる。

花弁の表面に、煌めく無数の何かが見えた。


『ぴゃっ!』


顔を上げると、灰色の小鳥が僕らを見ていた。

灰色の胸に、赤い花の模様が入っている。


「うわっ!お前はあいつの使いだろ!バレるとまずいんだよ!あっち行けよ!」


ノルはばさばさと翼を大きく広げて威嚇する。

…ぼくを抱きしめたまま。

ノル、きっともうバレているよ。


『ぴいいっ!シロニ、オモドリ、クダサイ!』


「ノル、もうすぐ陽が沈むよ。」


勉強をさぼって遊びに出かけたこと、先生にはなんて言おう。

小鳥がぴいぴい鳴きながらぼくらの周りを旋回している。


「じゃあ、そろそろ帰ろうか…」


そうして、ノルはようやく僕を解放した。


「うん、ちょっと待って!」


持ってきていた本は、ノルが持つと言って聞かなかった。

ぼくは背中に意識を集中させてゆっくりと翼を出した。

羽ばたきながら風を掴んで…浮く。

途中、ノルに手を引っ張ってもらいながら上へ上へと昇った。

灰色の世界で、陽の橙が空を一色に染めている。

橙の空を駆ける2人の翼は全くの正反対で、灰色の小鳥が黒にひかれる白い翼を追っていた。







先ずは覗いていただき感謝です!!!

のんびり更新していくつもりです:)

よろしくお願いします~

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