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サイボーグ娘・優衣

作者: みけねこ隊長

私の名前は細川ほそかわ 優衣ゆい高校生の頃、私は帰宅途中に事故にあった。

その事故が原因で、私は首から下の機能に障害が残り、思うように体を動かすことができなくなった。

生きるために病院で体を生命維持装置の機械に繋がれる。

手を使うことも、足で歩くこともできなくなった私は酷くショックを受けた。

動けなくなった最初の頃は、両親や周りの人に沢山迷惑をかけてしまった。

なんであんな事を言ってしまったのだろうと、自分でも驚くような汚い言葉を吐いたこともあった。

私は事故よりも動けなくなった自分の体を憎んでいた。こんな体、いらないと泣いた事もある。

その頃から、父は姿を見せなくなった。


しばらくたって落ち着いた私に、みんなはリハビリを進めた。私は半ば諦めながらもそれに従い、リハビリを行った。

だが、手足はピクリとも動かない。逆に感覚が次第になくなって行く。

みんな私を励ましたが、絶望的なのはわかっていた。

手足を動かすより、口で動かす電動車椅子の操縦が上手くなった。

私は完全に諦めていたのだ。

むしろ、私を生かしてくれるこの機械たちに妙な愛着を覚えていた。

ずっとこの機械たちと一緒に生きていこうと、密かに決心していたのだ。


そんな私に朗報が入ってきた。


私の父は、大学の研究室で「人体の代用となる機械の身体」を研究していた。

巷には、事故や病気で体の一部を失った人のために、義肢や人工臓器があることは知っていた。

だが、首から下の全てを機械で代用するという話は聞いたことが無い。

恐らく私が世界で初めてだろう。

父は長年この「機械」の研究をしていたのだ。

今回、私のために代わりの「身体」を作ってくれたのだ。


そして今日、その「身体」に移植する日が来た。


私は電動車椅子の乗り、病院のスタッフに案内され、母と共に病院の廊下を進んでいた。

私は最初に「機械の身体」に移植すると聞いて、迷いは無かった。

早く体を動かしたかった。解放されたかった。

母も私の意思を尊重して反対はしなかった。


スタッフが手術室の手前の部屋に案内する。私だけが入り、母は別室で待つそうだ。


部屋の中には父がいた。

そして隣に彼女が望んでいた“それ”が直立していた。

“それ”には頭部が無かった。人間の形を模した機械の人形。金属でできた骨格と人工筋肉で構成されている。


「これが新しい“身体”・・・」


私は“それ”に近づいた。

金属の連なりでできた中身のない空洞の首元。胸は肋骨状の機械が包み込むような形になっている。肩と股間は円形の連なりで構成され、その先の手足が差し込むように繋がっている。肘と膝は金属製の輪で繋がれ、それぞれを筒管状の人工筋肉で支えられている。

腹部は格子状に鉄線へ補強されたゴムのような柔らかい素材で覆われていた。

配管や配線が剥き出しの身体をまじまじと見つめた。


「“覆い”は後で取り付ける。本当にこの“身体”にして良いのか?」


「うん。早くして」


私がそう答えると、父が機械の身体と手術について説明を始める。

長年、研究してきた“これ”の第一号が自分の娘なのだ。一体、どんな気持ちなのだろう。


「まず、今の体から頭部と脊椎、内臓の一部を切り離し、この機械の身体に移植する。」


父が机に置いてあるパソコンを操作すると、機械の身体から何かが外れるような軽い音がして、肋状の胸部が花が咲くように開いた。

その中の機械は、生々しい肉の塊で覆われていた。


「この肉はおまえの血液から培養して作った物だ。内臓と癒着し馴染んで行って、最終的には内臓と機械を同化させ、完全にひとつになる。」


首と内臓だけになった自分が、この“殻”の中に入れられた姿を想像してみると、ゾワっとした。


「すぐに動けるの?」


「いや、まずは機械と体が完全に馴染むまでは暫く様子を見る。」


“馴染む”・・・拒絶反応の事を気にしているのだろうか。

肉体に機械を移植するのだ。もしかしたらそのまま死んでしまうかもしれない。


「それはどのくらいかかるの?」


「断言はできないが、一ヶ月程度だと推測している。」


「次に、排泄物だが、中のこの部分が、おまえが食べたもの全てを吸収し、機械のエネルギーに変換する。」


父は、開かれた胸部の下の方にある、少し顔を出している肉の塊を指した。位置的にも腹部の小腸・大腸の辺りにある。


「次に外装だが、内臓の手術後に人工皮膚で覆う。」


「人工皮膚はいらない。カバーがあるならそれにして。」


父は娘の方を見た。


「良いのかそれで?」


「うん、それで良い。」


「そうか・・・」


迷いは無かった。

父が作ってくれたこの「身体」を覆い隠したくなかった。

でも、一番の理由は、自分が機械に生かされているという事をより強く感じたい為だろう。

そんな気がする。


説明が終わり、手術の準備が始まる。

準備の済んだ私は、電動車椅子からキャスター付きのベッドに寝かされ、手術室へ運ばれる。

手術室には父と病院のスタッフが準備を済ませそこにいた。

ベッドから手術台の上に移される。

そして、手術用の機械に繋がれ、麻酔を射たれ、私の意識は遠のいていく。



私は目を覚ました。


長時間寝ていたのか、頭がぼんやりする。

手術は無事に終わったのだろう。私は病院の個室で患者用ベッドに寝かされていた。

私の身体はどうなったのだろうか。


寝たままの状態で、まず手足の感覚を確かめる。

両手のひらを軽く握り、そして開く。足の指も動かしてみた。

感覚を感じる、遠い昔になくしてしまったような感覚を、私は取り戻したのだ。

私は上体を起こした。身体の中でギアと筒管が動く感覚がした。

そして首から下の全身を見た。


手術前の機械が剥き出しだった身体を、筋肉に模した白いカバーが覆っていた。

首と腹部は蛇腹で覆われ、動きやすくなっている。肘と膝も動きやすくするために、ジョイント部分が剥き出しだった。

胸には二つの半球の膨らみがある。膨らみには下着を模した様な曲がりを描いた線が入っている。


私はベッドから降り、床に立ってみた。

つま先と踵で自重を支えているのが感じる。

少しよろめきながらも、しっかりと立たせた。

身体を伸ばし、捻らせ、感覚を確かめる。

人工筋肉の位置も肉体の頃と同じところにあるため、動かしても違和感が無い。


身体のスタイルは改造前よりも良くなって見えた。

胸の大きさ、腰のくびれ、しなやかに伸びる手足。

身長は変わっていないが、プロポーションは抜群だ。


首から下の内蔵を機械に包み込まれて、そして徐々に同化し、最後には完全に一体化すると思うと、それが気持ち良く感じた。何故か股間が疼いた。


私はこれからずっと、この機械に生かされるのだ。


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