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隣のお姉さんは大学生  作者: m-kawa
第五章
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095 二日目

 クラス対抗の合唱は、僕たち九組が予選一位通過を果たした。

 決勝に進んだのは他に一組と三組と五組だ。そしてこの中で僕らのライバルになりそうなのは五組だろうか。

 文系と理系にクラスが分かれているせいか、男女比が偏っているクラスがあるんだけれど、五組と十組がそれに該当していた。

 五組が通称女クラで女子生徒のみのクラスで、反対に十組が男クラと呼ばれるむさ苦しいクラスになっている。

 僕たちの九組と十組が理系クラスなんだけれど、ホントに十組にならなくてよかったと思うよ……。


 まぁそれは置いておいて。

 この五組の合唱が予選の時にはすごかったのだ。音楽が得意な生徒が多かったのだろうか。

 伴奏に至っては、二人で一台のピアノを弾く連弾を披露していた。

 さすがに連弾だけあって、音の広がりがすごかったんだよね。

 ……この演奏で僕にも気合いが入ったのは言うまでもない。


「誠ちゃんのピアノ、楽しみだなぁ」


 学校へと続く道を、手をつないで隣を歩くすずが嬉しそうに僕に笑顔を向けてくれる。

 今日のすずは、腰まであった長い髪をアップにしていて、大きな花柄の髪飾りをつけている。

 ひざ下の淡い紫のノースリーブワンピースに、真っ白なミュールを履いている。

 うん。やっぱりすずはいつ見ても可愛いね。


 今日は文化祭二日目の土曜日だ。

 受験生となる三年生は自由参加となっているんだけれど、決勝戦に残ったクラスはもちろん、参加しないといけない。

 そして自由参加だからか、ある意味一般参加に混ざってもバレないわけで、私服で学校に行く三年生も多い。

 もちろんそれは決勝に残ったクラスの生徒も例外ではないのだ。そんなことからこの日の三年生の服装は、私服OKという暗黙の了解となっている。

 むしろそれを狙って衣装まで揃えて合唱に臨むクラスも出てくる年もあるんだけれど、もちろん僕たちのクラスはそこまで狙ってはいない。

 ちなみに僕も私服だ。

 隣にすずがいるのに、僕だけ制服というのもなんだか浮いてしまう気がしたのでしょうがない。


「うん。楽しみにしててよ」


 僕もすずへと笑いかける。

 自宅でも練習はしていたけれど、すずの隣では動画サイトでみつけた原曲の練習しかしていなかった。

 ここは本番で驚かせてあげないとね。

 九月も中旬を過ぎて大学の夏休みも終わったようで、学校から帰るとすずに迎えられる回数も減っていた。

 どっちにしろ家は隣なので、会おうと思えばすぐに会えるんだけれど。


 学校の入口までくると、いつもの土曜日と違って騒がしかった。お昼にはまだまだ早い時間帯だけれど、学校の入口から続く銀杏並木に並ぶ飲食店の出店は賑わっていた。

 制服姿の生徒たちの他に、保護者や学外の人たちが大勢いるのがわかる。

 決勝戦は午後二時から体育館で始まるので、それまでは二人で文化祭を巡るのだ。


「人いっぱいだねぇ」


「うん、そうだね」


 すずは純粋に驚いているみたいだけれど、そんなに人が多いかな? 出入りする人はそこそこいるみたいだけれど。

 去年の様子を思い出しながら比較してみるけれど、あんまりよく覚えていない。……なんとなく多いような気がする、程度だ。


「んんー、いい匂いがする……。ちょっとお腹空いてきたかも」


 軽く朝ご飯は食べてきたけれど、こうも露店から漂ってくるいい匂いには負けてしまう。


「何か食べようか?」


「うん。……誠ちゃんのおススメってある?」


 すずが周りをきょろきょろしたあとで、期待するような目を僕に向けてきた。

 まず最初に何を食べるのか決めきれなかったのだろうか。

 ……と言われても、おススメねぇ。


「うーん……」


 僕たちの通うケンコー文化祭でおススメの露店……。

 ちょっと考えてみたけれど、特にこれと言って思い浮かばない。

 あ、でもそう言えば。


「クレープかな」


「そうなんだ?」


 ちょっと考え込んでいた時間が長かったせいか、すずが僕に微妙な視線を向けてくる。

 僕は昨日も食べたけれど、美味しかったから問題ないよね。

 もう引退になったけれど、黒川がいたクラブがやっているクレープだ。


「うん。昨日も食べたけど、美味しかったよ」


「じゃあクレープで決まりだね!」


 銀杏並木を昇降口方面へと二人で歩いて行く僕たち。

 にしても、やっぱり去年より人が多い気がする。僕たちに向けられる視線が多いような気がしているんだけれど、すずは可愛いからしょうがないね。

 そんな彼女と手をつないで歩いている僕は、頬が緩んでいることを自覚せずにはいられなかった。




「あれ? 早霧と……、黒川?」


 クレープを買って、昇降口からグラウンドへと出る階段にでも座って食べようと、昇降口を通り抜けようとした時だった。

 窓の外の中庭に設置してあるベンチに、早霧と黒川が仲良く座っているところを見かけたのだ。

 どうやら二人とも私服のようで、それぞれかき氷を食べているようである。


「どうしたの?」


「……いや、友人を見かけただけだよ」


 僕は窓の外を指さすと、すずも気が付いたようで「あっ」と声を出していた。

 それにしても二人ともなんだかいい雰囲気というか、そんな空気が漂っている気がするね。

 からかいのネタを仕入れることができたと思っていたんだけれど、次の早霧の行動に僕は一瞬だけ思考が止まってしまった。


 あの早霧が、自分のかき氷をスプーンで掬うと、黒川へと食べさせていたのだ。

 これは……、いわゆる「あーん」というやつだろうか。

 いやいや、っていうかあの二人って付き合ってたの!?

 僕まったく知らなかったんだけれど!?

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