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隣のお姉さんは大学生  作者: m-kawa
第五章
90/136

090 邪魔はしませんよ?

 菜緒ちゃんとマンションへ帰る道すがら、この間撮影したときの動画ができたことをすずにラインで送ろうと思っていたら、スマホにラインからの着信が入っていた。

 確認してみると、菜緒ちゃんが僕たち三人が登録されているグループラインに、僕より先にメッセージを送ったようで。


『すずちゃん、一秋くんの動画ができあがったみたいだから、三人で見よう!』


『えっ!? そうなの! 見たい見たい!』


 えーっと、帰ったら僕の動画を三人で見るのか……。うん……、冷静になって考えると何か恥ずかしいね……。

 僕自身もすずに、みんなで見ようと送ろうと思ってたところだけど、改めて考えると自分の演奏シーンを客観的に見ることは僕もしたことがない。

 よく『演奏してみた』の動画は見ていたけれど、自分の演奏シーンを撮ったことはないしね。

 なんとなくだけれど、親が撮影した小学生の運動会の映像を、友人と見る感覚に近いかもしれない……。


 そんな恥ずかしい気持ちは隠したまま、菜緒ちゃんと他愛のない話をしながらマンションまで帰ってきた。

 時刻はそろそろ十九時だ。

 晩ご飯を食べた後に見ようという話を菜緒ちゃんとしていたので、マンションの五階へと上がればそこで僕たちは別れる。


「ただいまー」


 カギを開けて玄関の扉を開けると、やっぱりすずの靴が玄関にあった。そして靴を脱いでいると、リビングからすずが出てきて僕を迎えてくれる。


「誠ちゃんおかえり」


 そんなすずに僕は改めて「ただいま」と言うけれど、すずが小首を傾げている。

 何かおかしなところがあったかな……?


「……あれ? 茜ちゃんは?」


 あ、そういえばずっと菜緒ちゃんって呼んでたけれど、本名は野花茜だったよね。

 仕事は終わったけれど、あの格好だと思わず『菜緒ちゃん』って呼んでしまう。


「……え?」


 それにしてもどういうこと? 晩ご飯食べてから来るんじゃないのかな?


「一緒に帰ってきたんじゃないの?」


「……一緒に帰ってきたけど?」


「「あれ?」」


 僕とすずが一緒になって首を傾げていると、不意に玄関の扉が開く。

 まったく予想していなかった背後からの音にビックリして、思わず「うわっ」っと声を上げてしまった。

 振り返るとそこにいたのは菜緒ちゃんだ。さっきまでの見た目と変わらず、荷物だけ家に置いてきたようで手ぶらになっている。


「こんばんわ」


 えーっと、僕は晩ご飯まだなんだけど?


「あはは、茜ちゃんいらっしゃい」


 ビックリした僕を見て笑いながら菜緒ちゃんを迎え入れているすず。……あれ? えーっと、みんなで動画見ようってラインは入ってたと思うけど……。


「お邪魔します。それにしても……。もう新婚さんみたいだね」


「――えっ?」


「な、……な、なに言ってるの茜ちゃん!?」


 そ、そうだよ菜緒ちゃん! まだ付き合い始めたばっかりなのに……!


「え? だってすずちゃん。……彼氏の家で晩ご飯作って待ってるなんて、もう立派なお嫁さんみたいじゃない?」


 いたずらっぽい表情でそんなことを言う菜緒ちゃん。

 なんだかもう周囲には僕たちのことを夫婦という人たちしかいないんだろうか。

 僕はもう散々と友人たちに言われているので耐性がついている……と思う。……やっぱりちょっと恥ずかしいけれど。


「えええっ!? 晩ご飯みんなで食べようって言ったの、茜ちゃんじゃない!?」


「そうだっけ?」


 ……えええ!? そんなこと言ってたの!? 僕知らないんだけど!?

 思わず菜緒ちゃんを見るけれど、そんなことはお構いなしとでも言うように、玄関で靴を脱いで家に上がると僕を追い越してリビングへと向かって行く。


「そうよ!」


 すずが後に続くように菜緒ちゃんを追いかけてリビングへと去っていくので、玄関に鍵を掛けた僕も慌てて二人の後を追った。

 リビングに入ると、エアコンが効いた涼しい風が気持ちいい。同時にいい匂いが僕の鼻腔をくすぐる。

 あぁ、お腹空いてきた。実際にいい匂いを嗅いでしまうと、思い出したかのようにお腹が空腹を訴えてきた。


「まぁいいじゃない。……それよりも私もお腹空いたし、すずちゃんが黒塚くんのために作った晩ご飯を食べましょう」


 菜緒ちゃんのその言葉に、抗議をしようと意気込んでいたすずの表情が固まるとともに、みるみるうちに赤くなるのだった。




「ふわあぁぁぁ……」


 パソコンのモニタに映し出されている映像に、すずが可愛い声を上げて見入っている。

 もちろんそれは僕が演奏している例の動画だ。フルバージョンを再生しているけれど、思ったよりも長かった。

 まさか二十分もあるなんて……。こっちは服の広告じゃなくて、演奏視聴用の動画なのかな……。

 お店の広告としては、次の服に切り替わるのに時間がかかるので、なんとなくそんな気がした。


 すでに晩ご飯は食べ終えて、今はリビングに僕のノートパソコンを持ち込んでそこで動画を見ているところだ。

 スマホで見てもいいけれど、画面が小さく三人で見るには窮屈なので、ノートパソコンで見ることになったのだ。


「やっぱりすごいねー。……黒塚くん、これでますます学校でも有名になるんじゃない?」


 動画も見終わってひとしきり感想を言い合ったあと、菜緒ちゃんがポツリと告げた。

 僕自身は雑誌に載ってから、特に親しい友人以外から声を掛けられたことが増えたということはない。

 だけどこれからはそういう事が増えるんだろうか。


「……そんなことないと思うけれど」


 内心ではそうなったらいいなと思いつつ、謙遜した言葉を返す僕。


「ふふ、でもモデルとしては有名になるのはいいことよ」


 まぁ、確かにそうかもしれない。知名度が上がれば宣伝効果も増えるというものだ。


「じゃあそろそろ私は帰るわね。……二人の邪魔するのも悪いし」


「えっ? ……べ、別に邪魔なんかじゃないから大丈夫だよ?」


 僕の家に来る前に言っていたセリフを、帰り際にも残す菜緒ちゃんだったけれど、それに反応したのは僕ではなくすずだ。

 それがちょっと面白くて僕は思わず笑ってしまった。

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