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隣のお姉さんは大学生  作者: m-kawa
第四章
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081 実家 -Side秋田すず-

「ただいまー」


 はー、やっぱり実家まで三時間は遠かったなぁ。

 数日間実家に泊まるだけだから荷物はそんなに多くないけど、やっぱり移動に三時間もかけるというのは疲れるね。


「あらー、おかえり」


 まさに日本家屋という平屋建ての我が家の玄関をくぐると、お母さんの声がキッチンの方から聞こえてきた。

 家を出て一人暮らしをするようになって四年目、何度か実家に帰っているけど、三時間という長時間移動には慣れそうもないよね。

 案の定リビングまで行くと、夕飯の支度をしているお母さんがキッチンにいた。そしてリビングではお父さんがお盆の特番を見ながらゴロゴロしている。


「すず、おかえり。……もう大学は慣れたか?」


 リビングに入るとすぐに、お父さんが振り返ってわたしを迎え入れてくれた。

 ちょっとお腹が出てきた丸顔なお父さんだ。


「そりゃもう四ヶ月も通えば慣れるよ」


 苦笑しながらお父さんにそう答えるけど、本当は最近ようやく慣れてきたところだ。

 少し前までメディア学科の嫌な先輩にちょくちょく付きまとわれてたけど、黒塚くんに追い払われてからは大人しくなったみたいで、平和に過ごせている。

 その時のことを思い出していると、自然と笑みが浮かぶのは仕方がないよね。

 だって黒塚くんは……。


「はっはっは、そうかそうか。ちょっと心配してたが、大丈夫そうだな」


「そうねぇ」


 お母さんも夕飯の支度がひと段落したのか、こっちにきて会話に参加してきた。お母さんはすらっとした細身でスタイルがいい。

 わたしの顔をじーっと見てきてるけど……、なんだろう。小首を傾げてお母さんの顔を見返すけど、わたしの顔になにかついてるのかな?


「すず……、もしかして彼氏でもできた?」


「――ええっ!?」


「――何っ!? そりゃホントか!?」


 お、おお、お母さん! いきなり何を言うのよ!? そんなわたしの顔を見ただけで分かるものなの!?

 そ、それにお父さんもちょっと反応しすぎじゃない!

 好きな男の子はいるけど、か、か……彼氏だなんて……!


「か、彼氏なんてできてないよ! 急に何を言い出すのよお母さん!」


 慌てて否定するけど、お母さんは「うふふ」と笑うだけでまったく聞いてくれない。


「そ、そうなのか……?」


 逆にお父さんは右往左往して慌てているみたい。そんなお父さんを見てるとわたしもちょっと落ち着いてきたかも。


「どっちにしろ、彼氏ができたらすぐに連れて来るんだぞ!?」


 いやいや、何を言ってるのお父さん? できたからってすぐにでも連れて来れるものでもないでしょう?


「できたとしても、すぐには無理だよ……」


「むぅ……、そうか……。三時間もかかるしなぁ……」


 ……距離の問題じゃないんだけど。

 呆れながらジト目でお父さんを眺めるけど、何やら真剣に悩んでいる模様。

 何か考えてくれるのはわかるけど、無理だからね? ……黒塚くんが来てくれたら嬉しいけど。


「おうおう、すずや。帰ったのかい。おかえり」


 リビングの奥から聞こえてきたその声に、わたしの体が思わず強張る。


「……おじいちゃん。……ただいま」


 奥から姿を現したのは、言葉に出した通り、わたしのおじいちゃんだ。

 小柄な体型をしていて、いつも柔和な笑顔を浮かべている、見た目は優しいおじいちゃんなんだけど……。

 正直に言うと、わたしはこのおじいちゃんが苦手だ。わざわざ遠い女子高に、一人暮らしをしてまで通うようになったのはおじいちゃんから離れたいと思ったのも大きい。


「見ない間にまた可愛くなったのぅ。ほっほっほ」


「あ……、うん、ありがとう」


「ほれ、喉が渇いたじゃろ。何がいい? ジュース飲むかい?」


 そう言いながら冷蔵庫を開けて飲み物を探してるけど、目当てのものがなかったのか、結局麦茶を出してダイニングテーブルへと置いた。


「お茶でええかい?」


 わたしに聞いてはくるけど、返事は聞かずにコップへとお茶を注いでくれるおじいちゃん。


「ほらほら、せっかく帰ってきたんだから、そんなところに立ってないでこっちへおいで」


「……う、うん」


 お茶も入れてくれたし、椅子まで引いてくれたのでそこに座らずにはいられない。

 それからしばらくは、おじいちゃんにひたすら大学でのことを聞かれ、それに答えていくのだった。


「そうかそうか。楽しくやっとるようだのぅ。……おお、そうだ。すずや。ちゃんとご飯は食べてるかの」


「うん。大丈夫だよ……。お父さんからもちゃんと仕送りしてもらってるし」


 でもやっぱりわたしの答えは聞かずにおじいちゃんは話を続ける。


「そうかそうか。おじいちゃんが用意したものもあるから持って帰りなさい」


 ……また変なものでも入ってるんでしょ。

 言っても無駄なのでわたしはその言葉を飲み込む。

 話しかけてくれるのはいいけど、おじいちゃんは正直、わたしの話はちゃんと聞いてくれていない。

 わたしを甘やかしてくれているんだろうけど、昔からおじいちゃんからもらう物も、正直必要のないものが多く押し付けられた感がしてしまうのだ。


「すず、もうすぐ夕飯だから、荷物を部屋に置いてきなさい」


 おじいちゃんに捕まったわたしに、会話の間を読んでお母さんが助け舟を出してくれた。


「おお、そうだな。すず、荷物を置いたら夕飯にしようか」


「はーい」


「すず、ついでに直哉なおやも呼んできてくれる?」


「うん」


 お母さんの言葉に頷くと、ようやく解放されたわたしは自分の部屋へと向かった。

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