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隣のお姉さんは大学生  作者: m-kawa
第三章
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055 水も滴る

「うわー、すげー雨降ってるじゃん……」


 僕は夕飯の入った袋を片手に、スーパーの入口から外を覗いていた。

 七月に入って梅雨は終わったけれど、これは見事な夕立であった。もちろん傘なんて持って出ていない。

 期末試験中で午前中の間に家に帰って、夕方近くまで試験勉強をしていた。

 お腹が空いたのでスーパーに来たけれど、そのときは雨は降っていなかったのだ。


「夕立ならすぐ止むかなぁ」


 買い物袋をぶらぶらと揺らしながらしばらく待っていると、雨が小降りになってきた。

 ……これくらいならいいかな? 空を見上げると向こう側の空は晴れている。


 ――よし、走るか。


 そうと決まればマンションまでひた走る。

 雨が降ったせいか気温が下がっているような気がする。これは濡れたら風邪ひきそうだ……。

 マンションのエントランスへとたどり着くと、そのまま階段へと向かう。このマンションにはエレベータがついていないのだ。


「あら……」


 気の毒なことに、階段にはぽつぽつと雨が滴ったのか濡れた後がついていた。

 傘から滴り落ちたような一本の道ができる跡ではないようだ。極め付けには靴型に濡れた跡までついている。

 それも二人分。

 階段を上るにつれて水滴の跡は薄くなっているけれど、なかなか途切れることがない。

 四階まで上がったところではたと気が付いた。


「――えっ?」


 ほとんど消えてはいるけれど、水滴の跡は五階へと続いているのだ。

 五階といえば……、秋田さんと野花さんしかいない。

 僕は急いで階段を駆け上がると五階のフロアへと出る。


「秋田さん! 野花さん!」


 二人の姿を見つけると思わず声を掛ける。

 全身ずぶ濡れの二人はそれぞれ廊下で服を絞っているところだった。


「あ……、黒塚くん……」


「ちょうどいいところに……」


 僕に気が付いた二人が手を止めてこちらを振り返る。

 ちらりと見えたおへそに、僕の顔が熱くなるのが自分でもわかる。


「あ、あの……、大丈夫ですか?」


 よく見ると寒いのだろうか、震えているような気がする。早く帰ったほうがいい気がするんだけれど……。

 というか、濡れているせいで服が肌にピッタリ張り付いていて、とても艶めかしい。

 いつもボサボサな頭をしている野花さんも、雨に濡れていたせいか髪がストレートっぽくなっているし。

 あ、なんだろう……。ドキドキしてきた。ちらっとおへそ見ちゃったし……。


『で、黒塚っちは結局秋田さんと野花さんのどっちが好みなの?』


 以前に黒川に言われたことが頭の中で繰り返される。

 なんでこんなときに……。


 改めて秋田さんの様子をしっかり確認してみる。

 腰までかかる長い髪が服に張り付いていて、そのスレンダーな体型がさらにはっきりとわかるようになっている。

 というか……、下着が透けているようにも見える。シャツの下に着ている服ははっきりと透けているけれど、その下も……。

 なんとなく目のやり場がなくて、秋田さんの手荷物へと視線を向ける。


「黒塚くん、あの……」


「あ、はい」


 話しかけられたことによって、また秋田さんを真正面に見据えてしまう。

 あああ、顔がとっても熱い。赤くなってないだろうか……。


「タオル……、貸してもらえないかな。このまま家に入ったら濡れちゃいそうで……」


「あ、はい。すぐ取ってきます!」


 顔を見られないように、その場から逃げるようにして自分の家へと向かう。

 扉を開けて荷物を玄関に放置して最速でバスタオルを二枚引っ掴むと、家の外へと出て二人に渡す。


「はい」


「ありがとう!」


「ふふ、黒塚くん、ありがとね」


 二人は僕に笑顔を残すと、それぞれの家へと帰って行った。

 バタンと玄関の閉まる音が響いた後も、僕はその場で動けずにいる。


「はあ……」


 未だに僕の心臓を打つ音は早い。

 大きくため息をつくと、開いたままになっていた自分の家の玄関をくぐって扉を閉めた。

 玄関に置いたままのお弁当を持ってリビングへと向かう。

 冷蔵庫からお茶を取り出してそのまま夕飯だ。


 ……秋田さんと野花さん、風邪引かなければいいけれど。


 お弁当を食べ終わった僕はまた試験勉強に戻る。途中で集中力が切れたのでキーボードを弾いたりしたけれど、概ね順調に進んだ。

 期末テストは今週いっぱいまで。それが終わればテスト休みに入って、それから夏休みだ。

 あ、そういえば秋田さんとオープンキャンパスに行くんだった。……楽しみだな。

 ……そろそろシャワーでも浴びようかな。雨降って涼しくなったとはいえ、もうお風呂にお湯を張る気はしないし。


「――あ」


 というところで僕ははたと気が付いた。

 秋田さんと野花さんにバスタオルを一枚ずつ渡したから、今から使う分がない。

 うーん……。まぁタオルでいいか。二枚使えば大丈夫でしょ。

 そうしてシャワーを済ませると、明日に備えて準備をすると僕はベッドに入った。


 秋田さんと野花さんは、翌日の夕方ごろにバスタオルを返しに来てくれた。

 どうやら風邪は引いていないようだ。よかったよかった。

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