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隣のお姉さんは大学生  作者: m-kawa
第三章
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054 自覚?

 いやいや、両方狙ってるってどういうことだよ。

 確かに僕のモデルの時の名前には秋田さんと野花さんの文字が入ってるけれど、それは二人がつけた名前だからであって……。

 ――あ、もしかして僕が自分でこの名前に決めたと思われてるのかな……。


「いやだって、名前に二人の文字を入れるとか……。狙いすぎてドン引きされないか心配だよ……」


 冴島が言葉とは真逆の表情でニヤニヤしている。

 だけどその点は問題ないんだよね……。なにせこの名前を考えたのはそのお隣さんの二人なんだから……。

 むしろ楽しそうに名前を考えてたよね。

 でも確かに二人の文字を入れるなんて、自分でやってたら僕もドン引きする自信があるぞ。


「えええ……、それは確かにドン引きだけど……、幸いにして名前を決めたのは秋田さんと野花さんだから」


 よくよく考えると何でこの名前で僕はOKを出したんだろうか。自分でもドン引きする自信のある名前を……。

 過去の自分を振り返って頭を抱えながら、いつものメンバーから次々に声を掛けられているが、正直頭に入ってこない。

 そして気が付いたら授業開始のチャイムが鳴っていた。




「……黒塚っち。……リアル菜緒ちゃんってどんなだった?」


 昼休み。

 黒川が真剣な表情で何を言うのかと思って身構えていたのだが、その口から出た言葉に僕は拍子抜けした。


「どうって言われても……」


 当時を振り返ってみるけれど、驚きが一番だったよね。

 だって正体が野花さんだったんだから。


「写真より可愛かった?」


 黒川が気になるのはそこなの? 菜緒ちゃんファンな気はしていたけれど、そういうこと?

 というか僕はそれほど雑誌は見ないので、写真と本人を比較なんてしたことがない。


「あー、うーん……。雑誌に載ってる写真と比較なんてしたことないけど……」


 むしろ隣に住んでるんですけど。

 普段のあのボサボサ頭に丸眼鏡が印象的で、それと比較するとなると実物の方が可愛いというかもう別人という感想しか出てこない。


「でもまぁ、別人のように可愛かったのは事実だね」


 考えるふりをして全部は言わずにおいておく。


「そっかー」


 一言だけ呟くと何か納得したようにうんうんと頷いている。と思った瞬間にニヤリと口元を歪めると。


「で、黒塚っちは結局秋田さんと野花さんのどっちが好みなの?」


「それはオレも聞きたいねー」


 黒川の言葉にいつものメンバーが僕の周りにわらわらと集まってくる。

 霧島と冴島はワクワクした表情をしているんだけれど、早霧はなんだか不機嫌そうだ。……なんでだろう?


「いや……、どっちって言われても……」


 今まで考えたこともなかったけれど、二人とも美人さんだ。

 何気ない仕草や笑顔にドキッとしたこともある。


 ……ドキッとした? ……あれ?

 そう。今まで意識したことはなかったけれど、確かに僕は秋田さんを見てドキッとしたことがある。

 僕は……、秋田さんのことが気になってたの……、かな……?


 目を閉じて秋田さんの顔を思い浮かべてみる。

 笑顔で僕の家までおかずをタッパーに入れて持ってきてくれる秋田さんが思い浮かぶ。

 腰まであるつややかな髪にスレンダーな体型で、大きすぎず小さすぎもしないちょうどいい大きさと思われる胸。

 なんとなく心臓の音が早くなっている気がする。やっぱり気になってるってことなのかな……。

 今度は野花さんの顔を思い浮かべてみる。

 相変わらずのボサボサ頭に丸眼鏡だ。でもそんな普段の野花さんもよくよくみれば美人さんなのだ。

 セミロングの髪を整えるとふんわりした印象になる。胸の大きさは秋田さんより大きいだろうか。

 ――と、いきなりその姿が菜緒ちゃんの物に変わる。別人レベルで可愛くなった。


 ……やっぱりドキドキしたままだ。なんだろう、コレ……。

 二人が気になってるってことなのかな……。つまり……好きってこと、なのかな?

 でも二人とも……? いやちょっとそれはどうなんだろう。


「おーい、黒塚、大丈夫か?」


 考え込んでいるとふいにおでこを誰かに小突かれた。目を開けてみると、僕の目の前に人差し指を突きつけた早霧がいる。

 隣に視線を向けると、黒川が相変わらずニヤニヤしたままだ。

 そのさらに隣には何やら微笑ましい表情をした霧島が僕を見つめている。


 ――うん。特に何も感じないね。いつも通り普通だ。特に黒川はぺったんこだし。


 などと思った瞬間に、黒川と霧島の表情が曇る。


「ねぇ黒塚っち?」


「何か失礼なことでも……考えなかったかな?」


 えええっ!? ええ、えーと、僕何も考えてイマセンヨ?

 話しかけられた途端に僕の心臓の鼓動が一瞬だけ早くなるけれど、必死に表情を抑えて平静を装う。


「……な、何の事かな?」


 変な汗が背中を伝うのを感じる。……そして心臓がドキドキしてきた。……お隣さんの時のドキドキとは違う気がするけれど。

 ……これは違うやつだよね? さっきは何も感じなかったし。


「ふふふ、何もなければいいのよ? 何もなければ……ね」


 一段低くなった声で、ゆっくりと言葉を紡ぐ黒川。

 なんとなく視線を合わせづらくなって隣の早霧を見る。が、なぜか数歩後ろの位置に下がっている気がする。冴島も同じだ。

 触らぬ神にはなんとやらなのだろうか。

 こうして何気ない昼休みがいつも通り過ぎるのであった。

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