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隣のお姉さんは大学生  作者: m-kawa
第三章
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053 オープンキャンパスと本命

 ここ二、三週間ほど前から、秋田さんがおすそ分けに来る頻度が高い気がする。

 今日は二回目の仕事が終わった二日後である日曜日だ。

 以前は一週間に一回あるかないかの頻度だったと思うけれど、頻度が高いと感じてからは週に二回くらいになっていると思う。

 僕としては悪い事ではないので特に問題はないんだけれど。


「黒塚くん。雑誌見たよ」


 いつものタッパーを僕に手渡しながら、秋田さんがそう切り出した。


「え……、あ、そうなんですか」


「うん。やっぱり黒塚くんはかわいかった」


 僕がバイトをやっていることを秋田さんが知ってるのは知っていたはずなのに、その本人から感想を言われるのが予想外だったことに自分でも驚く。

 しかもそんな、ちょっと恥ずかしそうな表情で……。


「えっと……、ありがとうございます?」


 おすそ分けももらったし、秋田さんのかわいい姿も見れたので三重の意味を込めてお礼を言うが、やはり『かわいい』と言われたことに納得できなかったのか、疑問形になってしまった。


「そうだ、黒塚くん」


「なんでしょう?」


「あの……、来月、うちの大学のオープンキャンパスがあるんだけど、見学に来ない?」


 オープンキャンパスかー。

 確かに、秋田さんと野花さんの通ってる大学がどんなところか……、いやいや、違う違う。

 今のところの僕の志望校なのだ。見学したいことは間違いないけれど、その理由がなにかおかしかった気がする。


「ぜひ! ……ところで、そのオープンキャンパスっていつですか? 七月初めに期末テストがあるので……」


「それなら大丈夫だよ。オープンキャンパスは海の日だから」


「あ、そうなんですね。なら大丈夫そうです」


「うん。当日は私が案内してあげるね」


 そう言って満面の笑みを浮かべる秋田さん。その笑顔がとても眩しいです……。

 っていうか案内してくれるんですか? 僕はてっきりオープンキャンパスの日を教えてくれただけで、一人で行こうと思ってたんだけれど。


「あ、はい……。よろしくお願いします」


 でも案内してくれるのであれば嬉しい。一人で知らないところに行くというのは緊張するしね……。


「うふふ。じゃあ当日はよろしくね。バイバイ」


 嬉しそうにする秋田さんが手を振って帰って行った。

 手の中にあるまだ温もりの感じるタッパーを手に、高鳴る心臓を落ち着けるために深呼吸を一つ入れる。

 とりあえず晩ご飯にしよう。

 玄関を閉めるとリビングに戻り晩ご飯の用意をする。秋田さんにもらったタッパーを開けると、中には大きめのハンバーグが二つ入っていた。


「ハンバーグ……」


 そういえば作ったことなかったな。以前に誰かとそんな話をしたような気がする。

 ……よし、今度作ってみるか。

 なんだかよくわからない決意をすると、秋田さんの作ってくれたハンバーグを口に入れる。

 とってもおいしかった。




 翌朝の学校にて。

 教室に入ると、そこではたまによく見られる光景が広がっていた。

 すなわち、僕の席が囲まれているのである。


「黒塚くん、おはよう」


「おはよう、黒塚っち」


「よぅ」


「やあ黒塚くん」


 いつものメンバーである四人だ。今回は一体何なのだ……。

 とは言え少し予想はついている。先週黒川が僕に何か聞きたそうにしていたから、たぶんそのことだろう。

 そしてそれはきっと……。


「お……、おはよう」


 僕は鞄を机に引っ掛け、自分の席には座らずにみんなと一緒に自分の席を囲むように並ぶ。

 案の定僕の机の上には黒川のものであろう雑誌が置かれていた。

 しかも僕の写ってるページじゃないか。


「黒塚っち、……いや黒野一秋」


 黒川の言葉に一瞬ドキッとする。いきなり確信を付いてきたあたり、余計な言い訳は通じない気がする。

 うん、これはもう開き直ったほうがいいかな……。どうせもう否定しても無理だろうし。

 そう思うと、自分の友人たちをびっくりさせることに成功したという達成感が沸いてきた。


「はい、なんでしょう?」


 僕は否定せずに黒川に答える。

 なんとなくドヤ顔をしたくなってきたけれど必死に抑える。


「いや、マジで……?」


「……ホントにこれ、黒塚くんなの?」


 僕の言葉に早霧と霧島は目を丸くして、机の上の雑誌と僕を見比べている。


「あ、うん。……本名はちょっと嫌だったからね」


「へー」


「そうなんだ」


 僕の言葉に対して、なぜかニヤニヤと笑みを浮かべる黒川と冴島。


「ところで黒塚くん?」


 そんな冴島が笑みを崩さずに僕の肩に手を置いてきた。

 ……なんだか嫌な予感がするぞ?


「お隣さんの名前は確かなんて言うんだっけ?」


 ……うん? 秋田さんと野花さんがどうかしたんだろうか?

 僕が訝しんでいると、黒川も僕の反対側の肩に手を置いて笑みを深くする。


「秋田さんと野花さんだっけ?」


「う……うん、そうだけど……」


「ほほぅ。お隣さんの名前を入れるとはつまり……」


 ……つまり?

 ちょっと黒川さん? そんなもったいぶらずに早く言ってくださいよ。

 なんだか意味もなく心臓の音が早くなってきたじゃないですか。


「黒塚くんは両方狙ってるってこと?」


 ……はい?

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