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隣のお姉さんは大学生  作者: m-kawa
第一章
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004 始業式

 目覚ましの音で半分ほど目が覚める。

 布団の中から手を伸ばし、けたたましい音をまき散らす目覚まし時計を掴んで手元に手繰り寄せる。

 アラームを止めて時間を確認すると時間は七時二十分を指していた。


「――やべっ!?」


 一気に目が覚めて急いで着替えるが、そこでハタと気づく。

 いつもならすでに家を出ている時間なのだが、そういえば学校近くに引っ越したんだよなぁと。


「これはこれで、余裕があっていいかな……」


 顔を洗って軽く朝食を済ませると、自室のハンガーにかけてあった制服に袖を通す。

 これで準備はできたかな。あ、そうだ、家を出る時は鍵をかけておかないとな。


「行ってきます」


 誰もいない部屋へと玄関から声を掛ける。

 帰宅するときも「ただいま」って言ってしまうんだろうなぁと、この一週間を振り返りながら思う。


 鍵をかけて家を出ると、長い階段を下りて外へと向かう。学校までだいたい二十分くらいだ。

 自転車通学でもできれば楽なんだろうけれど、引っ越しの際に処分してしまったので今はない。

 あったとしても学校に申請しないとダメだから、どちらにしろ今日は徒歩になってしまうけれど。


 マンションから学校へは住宅街を通っての近道もあるのだが、いまいちよく覚えていないのでまずは大通りへと出る。

 二車線の大通りをしばらくまっすぐ行けば、同じく二車線の大通りを曲がってまたまっすぐだ。

 この交差点で電車通学組の生徒と合流することになるのだ。


「あれ? 黒塚……?」


 案の定友人に見つかった。……いや隠れていたわけではないけれど。

 声のした方を振り向くと、そこには同じ学年である早霧さぎりまことがいた。


「おはよう」


 軽く見上げながら挨拶をする。

 早霧は僕が羨むほどに背が高いのだ。180くらいあって体格もよく、短く刈り上げた髪が印象的なイケメンだ。

 爆ぜればいいのに。


「お、おう……。えっと、お前も電車だったよな……?」


 予想外の道から現れた僕の隣を歩きながら、早霧が見下ろしてくる。

 そんな早霧に僕はニヤリとした表情を返して告げてやった。


「引っ越したんだ」


「マジか!?」


「うん。父さんが海外転勤になって、母さんも付いて行ったから今は一人暮らしかな」


「ほほぅ……。つまり……」


「つまり?」


 早霧の顔がニヤリとしたものに変わり、


「自由だな」


 と言い切った。

 意味不明である。

 ……まぁ、言いたいことはわからないでもないけれど。


「それはそれで大変だけどね」


 苦笑しながら友人にそう返しておく。なにせ家事は全部自分でやらないといけないのだ。

 早霧と他愛のない話をしているうちに学校に着いた。

 昇降口にクラス分けの用紙がでかでかと張り付けてある。


「どれどれ?」


 用紙を見上げていると、同じく上靴に履き替えた早霧が俺の後ろに立って、僕の頭に腕を乗せてきた。

 僕は不機嫌になって無言で頭の腕を払いのける。


「おう、すまんすまん」


 まったく。

 それにしてもまたいつものメンバーがクラスに揃ったみたいだ。

 みんな理系で、理系のクラスは少ないから、ある程度のメンバーが揃うのは必然といったところではあるんだけど。

 などと思っているとまたもや僕の頭の上に腕が乗せられた。


「もう、いい加減にしてよ」


 頭の上の腕を払いのけながら不機嫌そうに振り返る。


「よっ、おはようさん」


 てっきり早霧かと思ったんだけど、そこには同学年の黒川くろかわ冴子さえこがいた。

 この女子もいつものメンバーのうちの一人である。僕より10センチほど高い背に、スレンダーではあるが、あるのかどうかわからない胸の起伏。


「……おはよう」


 ジト目で黒川を睨みつけるも、背の低い僕では迫力が出ないようで何も効果がない。


「さっさと教室行くわよ」


 言うだけ言って黒川は教室の方へとさっさと行ってしまった。

 そんないつものやり取りを見ていた早霧も、肩をすくめて黒川の後を追う。

 僕ももう一度教室の位置を確認すると後を追いかけた。




 僕たち三年生の教室は三階だ。

 一年生が一階、二年生が二階となっていてわかりやすい。

 校舎は四棟あるが、なぜか一学年にひとつの校舎という形にはなっていなかった。

 学年を超えての交流も目的としているのだろうか。


「おはよう」


 挨拶と共に教室に入ると、すでにいつものメンバーである僕以外の四人は揃っているようだった。

 黒板には出席番号順に着席する旨と、生徒の名前が記載されている。

 僕は指定された席に鞄を置くといつものメンバーの輪の中に入って行った。


「おはよう。またみんな同じクラスになったね」


 そう言ったのは冴島さえじまゆうだ。名前だけだとわかりづらいが、男だ。そして見た目を一言で言うと、デブだ。

 そしてオタクではない。逆に爽やかな印象があるくらいだ。しかし残念なことに身長は黒川と同じくらいあるのだ。


「そうね。結局三年間このメンバーは変わらなかったわね」


 最後のメンバーである霧島きりしま裕美ゆみが控えめに微笑む。

 唯一僕と同じくらいの身長で、その身長にそぐわない巨大なものを胸部に備えている。――何がとは言わないが。


「それにしても黒塚」


「なに?」


「お前のメンバー紹介ひでぇな」


 全員そろったところで早霧からいわれのない非難を受けるのだった。

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