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隣のお姉さんは大学生  作者: m-kawa
第二章
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036 体育祭 -Side秋田すず-

 五月の下旬にも入った頃、今日は時間がなくて遅めのお昼ご飯をスーパーで買って来た帰りだった。

 マンションの前で出かける黒塚くんとすれ違った。


「あれ? 黒塚くん、今日はどこか出かけるの?」


 ふと気になったわたしは黒塚くんに声を掛けた。


「あ、秋田さん。こんにちは。……いやちょっと体育祭の練習に」


「お、そういえばそんな時期だっけ? ケンコーの体育祭って結構有名だもんね」


 ケンコー体育祭は結構派手で、高校のときの女友達も何人か見に行った子もいたくらいだ。

 とは言えわたしは自身はケンコー体育祭は見たことがない。

 女子高の体育祭と比べると迫力があるとは聞くけれど、うちの体育祭もアレはアレで……。


「黒塚くんは体育祭で何やるの?」


 余計なことは置いておいて、黒塚くんがどんな競技に出るのかが気になったので聞いてみたんだけど、ちょっと予想外の答えが返ってきた。


「あー、えっと……、不本意ながらダンス班になってしまいました……」


 ……ダンス班? なにそれ? 踊るの? 黒塚くんが?

 疑問が大量に出てきてしまった。


「へー、じゃあ今からその練習なんだ?」


「はい」


「ふーん……、黒塚くん踊るんだ」


 この目の前にいるかわいい男の子が躍るらしい。……とっても気になってきた。

 気になったからだろうか、何も考えずに尋ねていた。


「……体育祭っていつだっけ?」


「来週の土曜日ですけど……?」


 来週かあ……。特に用事はなかったよね。


「そうなんだ。ありがと」


 そのあとはふとお腹が空いていたことを思い出して、黒塚くんとその場は別れた。




「ねぇ茜ちゃん」


 今日は金曜日。明日が目的の黒塚くんの体育祭である。

 前日の今日は茜ちゃんの家で晩ご飯を一緒に食べていた。


「どうしたの?」


「明日黒塚くんの学校で体育祭があるんだけど、一緒に見に行かない?」


 確か茜ちゃんもケンコーの体育祭は見たことなかったはずだよね。そう思って聞いてみたんだけど。


「そうなんだ……。それって私も行っていいの?」


 何やら意味深な笑みと共に逆に聞かれてしまった。


「え? うん……。そもそも行くって言ってないから……」


 なんとなく、一人で行って黒塚くんとばったりと会ったりすれば気まずい……、というか恥ずかしい。

 見に行くと言ってないし、もしかして迷惑と思われないかしら……。

 今考えるとあのときどうして聞くだけ聞いてそのまま家に帰っちゃったんだろう。


「あら……」


 茜ちゃんが呆れたようにため息をついている。


「だ……、だってほら、……あの黒塚くんがダンスで踊るって言うんだよ?」


「へぇ、そうなんだ……。それは私もちょっと興味があるかも」


「だよね! ……だからさ、こっそり見に行こうよ」


 茜ちゃんも同意してくれたからか、ちょっと見に行こうという気力が沸いた。


「こっそりなんだ……」


 そんなわたしにやっぱり茜ちゃんは呆れていた。




「うわっ、すごいね……」


 体育祭当日、お昼過ぎに御剣高校のグラウンドへとやってきた。

 本当は黒塚くんがいつダンスを披露するのか時間がわからなかったので朝から茜ちゃんと来ていた。

 だけど校門の受付のところでプログラムを配っていて、午後からということがわかったので、こっそり来たので見つかるわけにはいかないわたしたちは、お昼まで時間をつぶしてからやってきたのだ。


「そこまでコソコソしなくてもいいじゃない……。しかも帽子で長い髪まで隠して……」


 茜ちゃんには呆れられまくりだけど、だってしょうがないじゃない。

 グラウンド近くの一般客席には、高校の体育祭だというのに父兄や他校と思われる生徒の姿が見える。

 思ったより人が多くて、見つからないかもしれないと思ったけれど、念のため少し離れたところからグラウンドを観察していた。


「あ、黒塚くんの緑チームってサボテンなんだ」


 他にはピ○チュウとかポカ〇スエットみたいだけど、赤と白はなんなのかわからなかった。

 マスコットの前にはしっかりとした作りのスタンドが組まれており、そのスタンドで囲まれたグラウンドの中央では、赤チームのダンスが行われていた。


「へぇ、あんな感じで踊るんだ……」


 一年生から三年生の生徒がそれぞれ、音楽に合わせグラウンド全体を使って飛び跳ね、ステップを踏んでいる。

 しばらくしてダンスが終わったようで、グラウンドにいた赤チームダンスメンバーが、一般客席側にある退場門へと捌けていった。

 その次は二年生のパン食い競争みたいだ。


「緑チームの応援とダンスは次の次みたいね」


 茜ちゃんがプログラムに目を通しながら教えてくれた。


「そうなんだ。もうすぐだね」


 しばらく一般客席からは遠いところで見ていると、とうとう緑チームの応援団の出番がやってきた。

 男女問わず学ランを着て緑色の紐を頭に巻いて、たすき掛けにもしている。

 チーム全体の応援が終われば、団長と副団長の殺陣たてが始まった。


「おおー、カッコいいね」


 そのあとは引き続き緑チームのダンスだ。


「あ、黒塚くんだ!」


「おー、ようやく出てきましたね。すずちゃん、近くまで行ってみる?」


 茜ちゃんに聞かれて、やっぱり近くで見たくなったので、一般客席の三列目あたりまで行くことにした。

 隙間から見てればバレないよね?

 ちょっとドキドキしながら飛び跳ねて踊る黒塚くんを眺める。

 いやもうホントやばい。何がやばいって黒塚くんカッコいい!


「黒塚くん……やるわね」


 茜ちゃんも感心しているようだ。

 最後にポーズを決めると同時にバックで鳴っていた音楽も止まる。どうやらこれで終わりのようだ。

 終わったら退場門に来るよね。――ここから近いじゃない。


「茜ちゃん、帰ろうか」


「えっ? もう帰るの? 本当に黒塚くんには会っていかないの……?」


「……うん」


「……すずちゃん、あなた数日前から変よ?」


 ……そうかな?


「いつも通りだと思うけど……」


 わたしはあくまでもいつも通りだと強調するけれど、茜ちゃんには通じない。

 むしろ分かってるから大丈夫よ、みたいな笑顔でありえないことをわたしに告げてきた。


「すずちゃん……、あなた、黒塚くんのことが好きでしょ?」

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