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隣のお姉さんは大学生  作者: m-kawa
第二章
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033 大学 -Side秋田すず-

「おっひるごっはんはカレー」


 翌日になってわたしは茜ちゃんと黒塚くんの家を訪ねることになっている。

 茜ちゃんと、黒塚くんの家の前で待ち合わせだ。

 自分たちで待ち合わせ場所を決めておいてなんだけれど、目的地の目の前で集合というのも変な感じだ。


「すずちゃん、機嫌がいいわね」


 開口一番にわたしに告げた茜ちゃんのセリフがこれだった。

 まぁいいじゃない。黒塚くんのカレーおいしかったんだから。

 本当は大学の話をするために行くんだけれど、わたしの中ではもうすでにカレーをご馳走になることが決定している。


「というか、黒塚くんにはお昼ご飯のこと何も言ってないんでしょう?」


「……そうだっけ?」


 わたしは小首をかしげながら茜ちゃんに問いかける。


「……まぁ、私も食べたいからいいけど」


「だよね!」


 だっておいしかったんだし、お昼前に行ってもいいよね?

 というかもうすでに黒塚くんの家の前だし、茜ちゃんも来たし。

 なのでわたしは勢いよく目の前のインターホンを押した。

 しばらくするとどたどたと慌てたような音と共に、「はーい」という黒塚くんの声が聞こえて、玄関の扉が開けられた。


「おはよう!」


「おはようございます」


 元気よく挨拶をすると、茜ちゃんもそれに追従する。

 出迎えてくれた今日の黒塚くんもかわいいです。

 ジーパンに長袖のTシャツといった格好だけど、まさしく『弟』といった感じだ。

 ……でももうちょっとカッコいい服を着てもいいと思ったり。


「あ、おはようございます」


「すっごくおいしかったよコレ!」


「はい、とってもおいしかったですよ」


 黒塚くんの挨拶に、タッパーを返却しながらカレーが美味しかったことを伝える。

 待ちきれなくなって黒塚くんに家にあがっていいか聞いたら、快く頷いてくれた。

 さっそく大学の話をするためにリビングに案内されたけれど、これはもしやわたしの部屋より片付いているかもしれない……。


「へぇ、思ったより片付いてるねー」


 悟られないように何気ない表情を装うけれど、茜ちゃんには通じなかったようで。


「すずちゃんの部屋じゃないんだから……」


 なんとなく呆れられた口調で言われてしまった。

 ちょうどそこで、椅子が足りなかったようなので、黒塚くんが自室から勉強机の椅子を持ってきた。

 そしておずおずという感じで、一枚の紙を差し出してくる。


「実は学校からこんなプリントをもらいまして……」


「ほうほう」


「受験生ですねぇ」


 だねぇ。

 そこからはしばらく、わたしたちの通う藤堂学院大学のお話を黒塚くんにしてあげた。

 だけどそれだけでは面白くないので、黒塚くんにも何かやりたいことがないか聞いてみると。


「うーん……、僕は理系だし、情報系と……、あとは音楽にもちょっと興味があるかなぁ」


「へー。黒塚くんって理系なんですね。なるほど……。それで情報系に、音楽ですか……」


 茜ちゃんも、黒塚くんの『音楽』発言が気になるのかな?


「もしかして黒塚くんって、何か楽器できたりするの?」


 聞いてみるとやっぱり中学生まではピアノを習っていたみたい。

 へー、そうなんだぁ。ぜひ聞いてみたいなぁ。……でも都合よく家にピアノなんてないよね。

 ――あ、そうだ。学校なら音楽室もあるし、今度学校見学とかで黒塚くんを誘ってみようかなぁ。


「そういえば私たちの学校にそういう学科なかったっけ?」


 などと黒塚くんの演奏姿を想像していると、茜ちゃんの言葉に現実に引き戻されてしまった。


「そうだっけ?」


「うん。確かデザイン情報学部のメディア学科じゃなかったかな」


「……ああ、そういえばあったような」


 おお、まさに今の黒塚くんにピッタリの学科じゃないの。

 軽くおススメしてみると、とりあえずの第一希望にはしてくれた。黒塚くんが後輩になるところを想像して、ちょっぴり嬉しくなった。


「あ、そうだ」


 一通り学校の話をしたところで、そろそろお腹が空いてきたので話を切り出してみる。


「……はい、なんでしょう?」


「昨日のカレーって、どうやって作ったの?」


 まずはこのあたりの話題からが無難だよね。作り方が聞ければそれはそれで嬉しいけど、目的はお昼ご飯なのだ!

 なんだけど、その作り方が半端なかった。メモする気満々でスマホまで出したのに。

 まさか『飴色玉ねぎ』が出てくるとは思わなかった。しかも一時間半も……。わたしには無理だ。


「このカレーが食べたくなったら黒塚くんにお願いするからわたしは作れなくていいよ!」


 うん。もうこの際黒塚くんにお願いしよう。

 というわけですっぱりとカレー作りは諦めた。

 その後は、スマホを取り出したついでということで、黒塚くんと連絡先を交換した。これでいつでもお願いできるね!

 そしてもうこの際だ、お昼ご飯のお願いもしちゃえ!


「というわけでさっそくなんだけど……、おかわりお願いしてもいいかなぁ?」


 よし、言った! なんとなく図々しい気もしたけど、弟君に対するお姉ちゃんってこんな感じじゃないかな?

 

「……えと、カレーですか?」


 おかわりという言葉だけで、黒塚くんには通じたようだ。


「うん。そうそう。――あ、ご飯なら持参してくるから安心して」


 ご飯なら冷蔵庫にあるし、ないなら持ってくるよ!


「冷凍でよければご飯ならうちにもあるので大丈夫ですよ。――それより、どうせなら違うカレー料理にしませんか?」


「えっ? 他のカレー料理?」


「どんなのがあるの?」


 なになに? 他のカレー料理ってなんだろう。カレーうどんかなぁ?

 カレーはたまに作るけど、他のカレー料理ってそういえばほとんど作ったことないなぁ。

 ふと考えたところで、自分の中での定番になっているカレー料理以外が思いつかなかったんだけれど、カレードリアにパンドリアっていう料理が出てきた。

 なにそれ、すごく美味しそう!


「わたしも手伝うよ!」


 早く食べたいわたしは、そう宣言したのだった。

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