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隣のお姉さんは大学生  作者: m-kawa
第一章
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026 バイト

「これはまずいことになった……」


 僕は自宅のリビングで財布の中身を確認しながら呆然と呟いた。

 昨日は場に流されるままに買い物をしてしまった気がする。

 まだ五月は始まったばかりだと言うのに、財布の中身が心もとない。


「ちょっと節約しないとなぁ」


 受験生という身であるからして、バイトをするというのもあまり気が進まない。短期ならいいかもしれないれど。

 救いといえば、とりあえずの進学先と決めた大学が、そこまで難易度の高い壁でないことだろうか。


 それに今は体育祭の準備期間中だ。放課後に体育祭の準備として生徒全員が全員駆り出される。

 各学年でそれぞれ十クラスあるが、それを各学年二クラスずつ六クラスを一つのチームとして、五つに分かれてチーム戦を行う。

 裏方には生徒の観覧席を作るスタンド部門、チームのシンボルを作るマスコット部門があり、そして表としては応援部門とダンス部門があり、全員どこかに所属することになっている。

 僕は不本意ながらダンス部門になってしまったけれど。


 学校としては放課後以外の活動は禁止されているけれど、土日に応援とダンスの練習はどこのチームでもやっていることだ。

 さすがにゴールデンウィーク中はなかったけれど。

 体育祭が終わったら中間テストか。……ホントにバイトするなら短期しか無理だなぁ。


「むー」


 財布と睨めっこしていても改善するわけでもないので、今日は大人しく勉強することにした。

 二時間ほど勉強してお昼になったので、冷蔵庫にあった残り物で済ませる。

 食後のお茶を飲んで一服しているところに、テーブルの上に置いてあった僕のスマホが音を立てた。

 確認してみると野花さんからだった。


『今ちょっと時間あるかしら?』


 なんだろうと思いつつも『大丈夫です』と返事をすると、ほどなくインターホンが鳴った。

 玄関を開けるとそこには予想通り野花さんがいたのだが、その姿は昨日見たものではなく、いつものボサボサ頭に丸眼鏡だった。


「……どうかしたんですか?」


 ちょっと残念に思いながら尋ねると、野花さんが楽しそうに笑っている。


「ちょっと、伝言というかお願いがあるんだけれど」


「伝言……ですか?」


 誰からだろう? まったく心当たりがないんだけれど。


「そう。サフランの店長さんがね」


 サフランというのは、昨日行ったモールでファッションショーを繰り広げたお店の名前だ。

 あの店長さんが僕に何かあるんだろうか。


「受験生の黒塚くんに声をかけるのはどうかなって言ったんですけれどね。――バイトしないか? って」


「えっ?」


 野花さんの言葉に一瞬思考が固まる。

 まさについさっきまで考えていたことだ。

 だけどお店でバイトって……接客とかだろうか。誘ってくれるのはありがたいけれど、長期のバイトはちょっと……。


「あ、お店のお手伝いではないですよ。単発で月に一回か二回ほど手伝って欲しいことがあるんですって」


 どこか渋っている僕に、野花さんが追加でバイトの条件を教えてくれた。

 むしろそんな条件でいいのであれば願ったり叶ったりである。


「それなら……ぜひお願いします!」


 僕は何も考えもせず、ただ現状の金欠状態をどうにかしたいがために即答するのであった。


「ありがとう。そう言ってもらえると私もうれしいわ。一緒に頑張りましょうね」


「え、あ……はい」


 一緒にってどういうことだろう?

 そういえば店長さんと野花さんはお知り合いだったみたいだし、野花さんもバイトしてるのかな?

 だったら同じ職場ってことで安心だ。


「じゃあ今度、お店の方に顔を出しておいてくださいね」


「はい、わかりました」


 結局玄関で話をしてしまったけれど、そんなに長い話じゃなかったからよかったのかな。

 野花さんを見送りながらちょっと罪悪感が沸いたので、明日にでもお店に行ってみることにした。




「あら、早速来てくれたのね、ありがとう」


 翌日のお昼過ぎに『サフラン』へと顔を出すと、ちょうど店長さんが接客をしていた。

 お客さんを遮って声を掛けるのもなんなので、店内をぶらぶらとしてたところを接客の終わった店長さんに声を掛けられた。


「こんにちわ」


 軽く会釈を返すと、「ここじゃ何だから」とお店の奥へと案内される。

 部屋という感じではなく衝立ついたてで仕切られただけのスペースに、テーブルとイスが四つ置かれている。

 そこに僕と店長さんとで腰を掛けると、店長さんが話し始めた。


「茜ちゃんからどういうバイトなのか聞いたかしら?」


 店長さんに言われて初めて、そういえばどういう仕事内容なのか聞いていなかったことに気が付いた。

 内容を聞かずに了承するなんて、ちょっと迂闊すぎじゃないかと自分でもちょっと恥ずかしくなる。


「あ……、いえ、そういえば聞いてませんでした」


「ふふっ。……そうねぇ。主な(・・)作業は裏方作業かな。倉庫で荷物の搬入をしたりね」


 僕の言葉を聞いて店長さんは少し考え込んでから作業内容を話してくれた。


「そうなんですか……、なるほど」


 一応自分の作業になるので真剣に話を聞いておかないと。いつまでも恥ずかしがってる場合じゃない。

 それにしても倉庫での荷物搬入作業ね。服とか大量にお店に入ったりするのかな。

 季節ごとにお店に置く商品も変わるだろうし、そういう変わり目の時に仕事が入るのかもしれない。


 それから改めて店長さんとバイトの話を詰めた。

 次のバイトは今月の第四月曜日だという話だった。

 学校があるから放課後からでいいとのことだったが、ちょうど体育祭が土曜日にあるので代休だと話したら、じゃあお昼から来てもらっていいかということになったので了承しておいた。

 本当に月に一回か二回らしい。これなら継続して続けられるかもしれない。

 その日は上機嫌になって家に帰るのだった。

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