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隣のお姉さんは大学生  作者: m-kawa
第一章
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021 デート?

 そしてようやく翌日となった。

 僕はこの一晩、期待とも不安ともつかない微妙な気持ちのまま過ごしていた。

 いや三人でお出かけするのは素直にうれしいんだけれど、今日の行き先を告げられていないことが気になっていた。

 ……とは言えそれは些細なことである。

 秋田さんは美人だし、野花さんもよくみればかわいいのは間違いない。

 そんな二人とお出かけである。デート……ではないけど、それに近いものがあるんじゃないかと僕は考えていた。


「にしても、玄関の前に午前十時集合とか。……ちょっと風情がない気がする」


 時計を見ると目的の時間まであと十分である。

 集合場所が近すぎるため、ちょっと早めに出るかという思考も生まれない。

 とりあえずやることもないので忘れ物の確認をしておく。

 財布持った。スマホ持った。IC乗車券持った。以上。

 ……男の持ち物などこんなものである。


 テレビもつけずに静かなリビングでボケっとしていると、十時五分前になって隣の家の玄関の開く音が聞こえた。


「秋田さんかな」


 そう思って僕も家を出たところで、案の定秋田さんが家の前で待っていた。

 ひざ丈のスカートに薄手のタートルネックを合わせた非常にかわいらしい姿である。


「おはようございます。お待たせしました」


 待たせたつもりはないけれど、なんとなく待ち合わせをした感じを出したくてそんなセリフが出てきた。


「おはよう黒塚くん。――今来たばっかりだよ」


 僕の言葉でいたずらっぽく微笑んだ秋田さんの言葉に、思わず笑ってしまう。

 風情はないけれど、待ち合わせに定番のセリフは言えるようだ。

 それにしても、てっきり自分が最後だと思ったけれど違うらしい。野花さんがまだ姿を見せていなかった。

 まだ時間にはなっていないが……。


「ああ……、もしかすると茜ちゃんはちょっと遅れるかも?」


 野花さんの家を見ていた僕に気付いた秋田さんがそう言葉を零す。


「昨日気合いを入れるって言ってたし……」


 振り返った僕に理由を告げるけれどよくわからない。


「……気合いってなんなんですか?」


「すぐにわかるよ」


 思わず聞いた僕に、くすりとほほ笑んで秋田さんが答える。

 疑問に思いながらも秋田さんと料理の話をしながら待っていると、五分遅れほどで野花さんの家の玄関の扉が開いた。


「あ、来たみたい――」


 と言いかけて野花さんの姿を見た僕の言葉が止まった。


「おはよう、茜ちゃん」


「おはようございます。お待たせしてしまいました」


 そう言ってにっこり微笑む野花さんはいつものボサボサ頭ではなかった。

 ふんわりとウェーブのかかったセミロングの髪型に、コンタクトを入れているのか、眼鏡をしていない。

 春らしいワンピースにカーディガンを羽織っている。

 とても美人なお姉さんがそこにいた。


「……あ、……おはよう、ございます……」


 絞り出すように挨拶をするけれど、思考がまとまらない。

 えっと、誰だろうこの人。野花さんの家から出てきて、茜ちゃんって呼ばれてたから、やっぱり――。


「――野花さん!?」


 ようやく正しく認識できた僕は、本人に向かって思わず確認を取ってしまった。


「ふふ。びっくりしましたか?」


「いやー、やっぱり黒塚くんって面白いねぇ」


 そんな僕に野花さんはいたずらが成功したように微笑み、秋田さんも笑い出す。


「じゃあ行きましょうか」


 ひとしきり笑うと、僕たちは三人そろってマンションの階段を下りて、駅へと向かった。


「結局どこに行くんですか?」


 一晩中気になっていたことを二人に聞いてみるとあっさりと教えてくれた。


「ちょっとね、モールにお買い物に行くの」


 以前にいつものメンバーで買い物に行ったモールだった。

 最寄り駅から快速電車で一駅。秋田さんと野花さんの通う大学の近くのモールである。


 ……あれ? 普段学校帰りに寄れるんじゃないのかな?

 なんで僕が誘われたんだろう。

 うーん……。なんだろう。もしかしなくても、荷物持ちなのかな……。


「……どうしたの?」


 なんともネガティブな思考に陥ってしまっていたため表情に出てしまったのだろうか。

 秋田さんが僕の様子に気付いたのか何かあったのか聞いてきた。


「あ、いや……。荷物持ちがんばります」


 思ったことが思わず漏れた僕に、二人は顔を見合わせるとまたもや笑い出した。


「あはは! ……まぁそれもあるけど、本当の目的は違うよ?」


「……そうなんですか?」


 駅に着いた僕たちは手持ちの乗車券で改札を通り、ホームへと向かう。

 もうすぐ電車が来るようだ。


「ええ、そうね」


「ちょっとね、男の子の意見っていうのが聞いてみたくてさ」


 何やら期待の目で僕を見る秋田さん。

 一体何なんですか。男の子の意見って。

 それこそなんで僕なんだろう。大学にも男はいそうな気はするんだけれど、異性の友人っていないのかなぁ。


「男……ですか」


「そうそう。わたしたちは青蘭出身だからねー。男の子の友達っていなくてね」


 疑問に思った僕に答えるように秋田さんが理由を話してくれる。

 青蘭というのは共学の御剣高校の近くにある女子高のことだ。


「なるほど?」


 そういうものなのかな? いやまぁ二人がそう言うのであればそうなんだろう。

 学校に男子がいないとなると、それ以外で接触できるとすれば塾とか習い事だろうか。

 ……学校しか行っていないと確かに会話もしないかもしれない。


「だから今日はよろしくお願いしますね」


 そう言って秋田さんと野花さんが二人そろって、とびきりの笑顔で言うのだった。

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