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隣のお姉さんは大学生  作者: m-kawa
第一章
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020 お誘い

 あれからそれはもうこってりと質問攻めにあった。

 いつもおすそ分けされているのだとか、いつも三人でご飯を食べているのだとか、本当は付き合ってるんじゃないかとか。

 ほとんど否定はしたのだが、実際に目の前でされたおすそ分けは否定できるわけもなく、たまにあるということで落ち着いた。

 友人たちが納得できたかどうかはわからないが。


 ――あ、結局いただいたおすそ分けはその場でみんなで平らげました。肉じゃがおいしかったです。


 五月ゴールデンウィークの直前にある平日である。

 親が会社休みなのに学校があるなんてと文句を垂れながら、早霧と霧島と途中まで他愛のない話をしつつ帰宅していた。

 冴島は不定期だったが今日は部室に寄ると言っていたのでおらず、黒川も運動部なので毎日部活がある。料理部の霧島は、水曜日と金曜日しか活動がないため今は一緒だ。


「黒塚くんも料理部に入ればいいのに」


 霧島と料理の話をしていると不意にそう言われたこともある。

 それはそれでレパートリーが増えそうな気もするんだけれど、部活動でご飯一食分がまかなえるわけでもないので、何か中途半端なんだよね。

 部活でやりたいというほど料理が趣味というわけでもないし。……たまにハマって集中することはあるけれど。

 どちらにしろ、受験生になってから部活に入るのもなぁと断った。


 と、下校中のことを考えながら自宅近くのスーパーで買い物をしていると。


「あ、黒塚くんだ。……学校帰りに買い物かな?」


 同じく買い物かごをぶら下げた秋田さんと遭遇した。


「あ、こんにちわ。……学校帰りに寄るのが一番楽ですよね」


 あんな階段を上り下りして着替えるためだけに自宅に寄るとか考えられない。

 たとえ通学鞄が邪魔だとしてもだ。


「だねえ」


 そんな会話をしながらそれぞれ欲しいものがある売り場へと別れる。

 一通り食材をカゴに詰めて空いているレジを探していると、会計中の秋田さんを見つけたので後ろに並ぶ。

 軽く会釈をしてしばらく並んでいると、支払いの終わった秋田さんが振り返った。


「そういえば黒塚くん。明日からゴールデンウィークだね」


「ええ、そうですね」


「さっそくだけど、明日ってヒマかな?」


 美人の秋田さんに明日の予定を聞かれたことに若干心臓が跳ね上がる。


「え? ……えと、特に用事はありませんけど」


 何かのお誘いだろうか……。ドキドキしながら秋田さんの言葉を待つ。


「そうなんだ。……あのね、明日買い物に行こうかと思ってるんだけど、ちょっと付き合ってもらってもいいかな?」


 ……うわぁ、ホントにお誘いだった。「僕でいいのかな?」「もしかして二人で?」などと言った疑問が沸き出るが、とりあえず返事をしないと……。


「あ……、はい。……お供させていただきます」


 ……なぜか微妙に変な返事になってしまった。


「ホントに!? ありがとう!」


 僕の返事に違和感はなかったのか、嬉しそうにしている秋田さんはそのままカゴを持ってレジを通過していった。

 ちょっと恥ずかしくなって俯いてしまったけれど気づかれなかったようだ。――が。


「――お会計1824円になります」


 強い口調でレジのおばさんから値段が告げられた。

 僕もおばさんの声に気が付かなかったらしい。

 さっきとは異なる恥ずかしさと、いきなり買い物に誘われた戸惑いと、一緒に買い物に行く嬉しさに悶えながら、財布からお金を出して会計を済ませる。

 もしかしてこれって、いわゆるデートというやつなのだろうか。

 カゴをレジから移動させて袋へと詰め替えていると、秋田さんの声が少し遠くに聞こえてくる。


「――茜ちゃん。黒塚くん明日大丈夫だって!」


 あれ? 茜ちゃんって……野花さん?

 声のした方へ顔を向けると、そこには野花さんがいた。


「こんにちわ。黒塚くん」


 僕に気が付いた野花さんが、会釈をしつつこちらに歩いてくる。


「あ、こんにちわ」


「明日はよろしくお願いしますね」


「あ、はい」


 笑顔で告げてくる野花さんには生返事しかできない。

 ……えっと、秋田さんと野花さんと僕とで買い物? 三人ってこと?

 戸惑っている僕を見ている野花さんの表情が、だんだんといたずらっぽいものに変わっていく。


「……あら、もしかしてすずちゃんと二人きりがよかった?」


「――ええっ!? あの……、いや、そんなことは……、ないですけど……」


 野花さんの言葉に冷や汗が流れそうな感覚がしつつも、なんとか言葉を絞り出すようにして否定するが。


「えー、わたしと二人きりは嫌なんだー」


 今度は横から不満そうな口調で言葉が聞こえてくる。

 流れているかどうかわからない冷汗が増した気がしたが、発言主の秋田さんを見れば、腕を組んで頬を膨らませている。

 そんな姿もかわいいなぁと関係ないことを思ったけれど、これは否定しておかないとまずい気がする。


「いやいやいや、そんなことないですよ!」


「「あはははは!」」


 さっきよりも必死に否定する僕についに耐えきれなくなったのか、秋田さんと野花さんが二人して笑い出した。


「……ええっと?」


 呆然と二人を見ていてようやくからかわれていたのかと気が付いた。

 憮然としながらも止まっていた手を動かして、商品をカゴから袋へと詰め替える作業を再開する。


「ごめんね。……黒塚くんがかわいすぎて!」


「そうねぇ。……お詫びに明日はちょっと気合いを入れようかしら」


「お、茜ちゃんやる気だね!」


「……気合い、ですか?」


 お詫びに気合を入れるとはどういうことだろうか。さっぱりわからない。

 詰め替え終わった袋を持って、三人でスーパーを出るときに、気になったので聞いてみたけれど。


「そう。気合いを入れるの。楽しみにしてて」


「はあ」


 相変わらずのボサボサ頭の野花さんにはまたもや生返事しかできないのであった。

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