マイナスから 壱
昨日と同じ時間に目が覚める。
いつも通り布団との格闘。
長期戦になり母が参戦。
今回も、勝利を収めた。
リビングに向かい、朝ごはんを食べる。
今日は時間が無かったので全て口に詰め込む。
寝間着を脱ぎ捨て制服に袖を通す。
さて、遂にやってきてしまった学校生活初日。
地獄を見るか大地獄を見るか。
家を出て学校に向かう。
とても憂鬱だ。
今追い越した人達、俺の事をみて笑っているんじゃないか。
あそこの集団、俺の事を話しているんじゃないか。
どんどんネガティブになっていく。
学校が近づいても楽しみとは思えなかった。
校門には見覚えのある先生が立っていた。
「おぉ、よく来たな!おはよう!」
「おはようございます、先生。」
「学校生活、頑張れよ〜。何かあったら相談していいからな。」
「ありがとうございます。」
挨拶をし、昇降口に向かう。
昇降口にはクラス表とクラスの場所が張り出されていた。
クラス表は昨日見たし場所だけ確認すればいいか。
よし。二階の端の方だな。
昇降口から遠いなぁ。
確認すると上履きを取り出し足早に教室に向かう。
なるべく周りと目を合わせないように。
教室に着くと既に大半の生徒は既に来ていた。
知らない顔ばかり。
中学が同じだったのだろう数人が話しているだけだ。
さて、これから何人に馬鹿にされるのだろうか。
席について静かにしていようと思っていると隣から声をかけられる。
「よう!マレ!」
「おぉ!よう、サノス!」
サノス。本名、佐野昴。
中学の時のクラスメイトだ。
とても仲が良かった訳でも無いがこれで浮かなくてすむ。
「なぁなぁ、知ってるか?入学式で吐いたやつがいるんだってよ!」
え…
俺の事じゃん…
まぁらまだ誰かまでは知らないっぽいし適当に誤魔化そう。
「へ、へぇ〜。そうなんだぁ。知らなかったな〜。」
「やばいよな!いや〜、吐いた奴の顔見て見たいぜ〜。」
目の前にいますよ。
入学式で吐いた奴は目の前に座ってますよ。
「おい、大丈夫か?なんか顔色悪くないか?」
「へ?え、大丈夫、大丈夫。」
俺が吐いたことを知らない友人と談笑をしていると先生が入ってくる。
「席着けー。」
入って来たのは入学式で何度も助けてくれた先生だった。
あの先生が担任なら安心できると思う。
「今日から担任させてもらう佐藤だ。よろしくなー。隣がいなかったら教えろー。」
優しそうな先生だな。
「センセー。隣がいません。」
女子が言い終わると同時に教室のドアが勢いよく開く。
「はぁ…はぁ…すみません。遅れました。」
入ってきたのは、真面目そうな女の子だった。
あくまで真面目そう、だ。
初日から遅れて来て真面目と呼べるだろうか。
黒髪ロングに無表情。テンションも低め。
生徒会長とは真反対と言えるだろう
「遅いぞー。初日から遅刻とはたるんどるぞー。」
どうやら、欠席はおらず遅刻も彼女だけのようだ。
こちらに向かって歩いてくる。
何かと思ったが彼女は隣の席だったようだ。
「よーし、これで全員かー。」
これで全員か。
大体20人ぐらいで3クラスあるから大体学年で60人ぐらいだと思う。
さて、何人ぐらいが俺が吐いたのを知っているのだろか。
初日は、出されていた課題を回収した後解散となった。
明日自己紹介をするからその文を考えてこいと言われた。何を言おうかな。
「マレー。帰ろーぜー。」
「うん。」
サノスと俺は家が近い。
帰る方向も同じだ。
教室を出て昇降口に向かい靴を履き替え学校を出る。
たわいも無い事を話しながら家に向かう。
これだよ。俺がしたかった高校生活は。
いつかこいつにも吐いたことが知れるんだろうな。
なるべく遅くになってくれ。
「マレー。マレ!」
「ん。あぁ、それじゃあね。また明日」
「おう、じゃあなー。」
サノスと別れて家に向かう。
取り敢えずなんとかして吐いたことを知られないようにしておかないと。
「ただいまー。」
「おかえりー。どうだった?学校。」
「うん。良かったよ。」
今日の出来事を親と話し、着替えて自室で横になる。
これからのことをぼーっと考えていると晩御飯に呼ばれる。
もうそんな時間だったのか。
考えたところで何か変わる訳でも無いか。
まぁ、取り敢えず今を楽しもう!