最悪なスタートダッシュ 参
一つ重要な事を伝え忘れていました。
この話はあくまで不定期更新なので間がちょこちょこ空きます。
それだけご了承ください。
話が始まったのはいいが、俺は再度あの感覚に襲われていた。そう、気持ち悪くなっていたのだ。
体育館に戻ってきてまた、緊張してしまったのだろうか。
どうも俺の三半規管は弱かったらしい。
流石に2度目は不味いよな。
1回目で既にアウトだったけど。
吐くことだけはなんとか耐えている。
いつ吐いてもおかしくない状況だ。
どうすればいいんだ…
先生に声をかければ。
いや、声を出したら出る。
あぁ、もうダメだ。
せめて吐くなら体育館の外で!
俺は席を立ち上がり急いで体育館の外に向かう。
「おい、君!」
先生に声をかけられたが、もう止まらない。
止まったら終わりだ。
だが、体育館の扉は閉まっている。
体育館の扉は重い。
扉を開けるために力を入れても多分アウトだ。
どうしようか考える間もなく、扉の前まできてしまった。
その時、扉は開いた。
丁度先生が入ってきたのだ。
(よっしゃ!ナイスタイミング、先生!)
そのままの勢いで体育館を飛び出す。
俺は近くにあった植木に盛大に吐く。
よし!間にあった!
なんとか助かったみたいだ。
まさか2回目があるとは思ってなかったよ。
全て吐き出し、安心する。
体育館に戻ろうと後ろを向く。
そこで重大なことに気づく。
体育館の扉は、空いていたのだ。
あ…これって…
「…中まで聞こえてました?」
「うん。バッチリ。」
はぁ…外出た意味無かったじゃん…
まぁ、でも中で吐くよりはいいか。
「君、本当に大丈夫か?」
「大丈夫…です。」
声をかけてくれたのは、さっき助けてくれた先生だった。
「何度も助けてもらってすみません。」
「気にすんな。これも教師の職務だからな。
それで、どうする?また戻るか?」
「はい。そうします。」
流石に3度目はないだろう。
二度あることは三度あるって言うけど。
また、先生に連れられ、視線を集めつつ席に向かう。
少し前に見た光景と同じだ。
まだ、生徒会長の話は続いていた。
なんか生徒会長すごいこっち見てる気がする。
まぁ、音も丸聞こえだったっぽいし、おかしくはないか。
相変わらず話は頭に入って来ず、今後の心配をしているといつの間にか入学式が終わっていた。
「最悪な入学式だったな。早くかえろう。」
携帯をみると、親からメッセージが入っていた。
『校門の前で待ってるわねー』
吐いた事に対して気を遣ってくれたのだろうか。
必要最低限の事しか書かれていなかった。
とにかくここを早く離れたかったので、急ぎ足で校門に向かう。
向かっている間も熱い視線がこっちにたくさん飛んで来る。
「あ、マレくんっ!」
誰かに名前を呼ばれる。
この声は多分…
「あ、舞先輩。」
「大丈夫だった?2回も吐いてたけど。」
「逆に大丈夫だとおもいますか?あんな事の後で。」
「だよね。まぁ、これからイジメとかあったらなんでも相談してね?」
「はい、ありがとうございます。」
こんな可愛い人に心配してもらえるなんて思ってもいなかったから本当に嬉しいな。
これも生徒会長の仕事なんだろう。
高嶺の花とは、このことなのだろう。
「それじゃあ、私仕事があるから。頑張ってね。」
「はい。ありがとうございます。」
彼女は、颯爽と去っていく。
さて、早く親の元に向かおう。
校門に着くと、そこにはいつも通り微笑んでいる母さんの姿があった。
下手に心配されるより気が楽な気がする。
「お疲れ様。大変な1日だったわね。」
「大変どころじゃないよ…生き地獄を見たよ。」
「ふふふ、さぁ、帰りましょうか。」
俺は親と共に帰路についた。
本当に最悪なスタートダッシュをしてしまったな。
あ、校門の前で写真撮るの忘れてた。
ま、いっか。
いい思い出じゃないし。