桜への決意
第三次世界大戦がはじまってから8年ほどが過ぎた。
この大戦がはじまった直後より、「日本を制する者がこの大戦を制する」と言われてきた。
幾度の戦乱に日本は巻き込まれた。
日本国は直後から同盟国(米英中心)側の味方に付くことを公式には表明しているものの、朝鮮半島が連合国(中国中心)についたこともあり、
最重要拠点として幾度となく戦争に巻き込まれた。
私の名前は五島。階級は一応大尉。
日本陸軍第10師団所属第3小隊の乙部隊の隊長を任されている。
私たちの駐屯地は、志摩半島だ。
きれいな海を臨む、穏やかな土地で、海軍の小隊とともにこの地を守る任についている。
隊の演習場の近くには気象庁の桜開花前線の標準木にも選ばれている桜があり、私たちの演習場の一大観光スポットとなっていた。
陸軍を見学に来るさまざまな人々が、この桜に見とれていた。
まあ、この桜は戦争が始まるとぱったり咲かなくなってしまった。
隊員たちの間では、「この桜は戦争が嫌いなんだ」とまことしやかに噂されていた。事実は定かではないがな。
現在、わが小隊は窮地に直面している。
わが小隊は現在志摩半島の警護に当たっているのだが、近海である伊勢湾の警備にあたっていた海軍の小隊からの連絡が途絶えたのだ。
おそらく連合国の野郎どもと戦っているのだろう。もしくはもう…あせりはつきない。
わが小隊にもその動揺が広がっている。
私は隊員全員に緊急招集をかけた。
「あー、お前ら、知ってると思うが、今海軍第6小隊との連絡が取れない。」
隊員たちがざわめく。
「しずかにせんか。とりあえず、全員戦闘の準備をするように。現時刻は…13:45か。なら1400に通信兵、警備兵を残し総員演習場に集合、いいな」
「「「「「「はい!」」」」」」
隊員たちが去っていく。
一人会議室に残された俺は、彼らをどう助けるかを考え始めた。
将来有望な彼らが先に死なれては困る。何より私の上司としての示しがつかない。
14:00。第3小隊乙部隊、全員集合。
「通信兵から連絡はなし、さらに悪いことに、警備兵からこちらへ数隻の船が近づいているとの知らせが 入った。日本の船ではないそうだ。」
何人かの隊員が唾をのむ。とうとうわれらは実戦へと赴くのだ。
「なに、やることは簡単だ。訓練と何ら変わりはない。俺らはまずは時間を稼ぎほかの隊が来るのを待つ だけだ。一日。これだけ耐えれば見方が来てくれるそうだ。」
隊員たちに安堵の声が上がる。しかしその安堵もつかの間。
「しかし、私たちが一日持たなければ連合国どもの侵入を許すことになると思え。いいな」
隊員たちに緊張が走る。自分たちは今、この国を守る大きな役目を果たすことになるのだ。
「総員行くぞ!」
「「「「「「はい!」」」」」」
行軍を始めようとしたその時、私の目にピンク色の花びらが写った。
隊員の一人が叫んだ
「おい!桜が咲いているぞ!満開だ!」
演習場のはずれにある桜が、昨日までちっとも咲く様子のなかった桜が、満開になっていたのだ。
隊員たちが大きな歓声を上げる。
私もこれには驚いた。そして私には、この桜が私たちに健闘を祈っているように思えた。
「総員聞け!」
隊員が我に返る。
「…桜の木に、敬礼!」
その場にいたすべての隊員が、桜の木に、敬礼した。
陸軍の小隊の中の部隊は部隊とはいえ100人規模の軍隊だ。
そうでなくてはこの志摩半島の警備を一任はできない。
しかし、その100人全員が絶望的とわかるような、恐ろしい光景が広がっていた。
「やられたな…あの船の数じゃあ勝てねえぞ…」
そこには連合国の軍艦が30隻ほどならんでいた…。
幸いなことに、連合国の艦隊は現在、こちらに向かってくる様子はなかった。
「やばい、やばいぞ…」
「海軍や空軍は何をしているんだ…」
「九州のほうの戦いに向かってこっちにはこれないのか…」
連合国は手薄になった別箇所を責めた、まったくもって素晴らしい作戦だ。
全員が湾の近くにある対戦艦用軍事施設に集合し、私は口を開いた。
「いいか、別に俺らは勝たなくていい。少しでも耐えるんだ。今、おそらく海軍たちが必死に抵抗してい る。 俺は国ために生きるなんて支度はない。だが残された家族や市民を守る。それが俺らが陸軍に入 った理由だ。ちがうか?
さあ、俺らは俺らの戦いをしようじゃないか。うれしいことに一日持てば援軍がやってくる。多かれ少 なかれ彼らは私たちの味方となる。私たちで一日耐えて疲弊させれば万全の状態の援軍なら倒すことが できる。間違いない。それだけは覚えておけ。
最後に一つ。俺はこの小隊で、お前らを確実に生き残らせる方法を考えた。結論は、なし。 逃げるこ とぐらいしか私の頭には思いつかなかったが、お前らのことだ。どうせそれも拒否するだろう。
戦いの始まりだ。桜に申し訳ない姿見せるわけにはいかねえぞ。全員位置につけ。歩兵は俺に続け。よ し、いくぞ!」
この戦いは、のちに『伊勢湾海戦』と呼ばれるようになる。
連合国は、この戦いに敗れたことを機に、ずるずると敗戦を重ね、ついには降伏することになる。
伊勢湾海戦最大の勝因は、当時の陸軍第五師団第三小隊乙部隊が、陸軍第五師団本体並びに近畿空軍到着までの20時間もの間、たった100余名で軍艦30隻、総員20万を超える連合国軍と戦線を維持し続けたことにあるといわれている。
この時殉死した五島大尉と、その隊員たちに話したとされる文言は、のちに国内で伝説視されることになる。
いかがでしたでしょうか。
純粋な軍事ものでした。前に書いた軍事もの人気だったので…
まあ向こうは恋愛要素中心。こっちは恋愛皆無ですけどね!
これで人気出たらもう俺は軍事ものしかかないぞ!絶対にだ!
こら、そこ!どっかで見たことありそうな内容だとか言わない!頑張って自分で考えたんだから!
ちなみに私の出身は別に志摩半島ではないです。
五島隊長の勇姿に感動した方は評価いただけると嬉しいです。




