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片想い同士の儚い恋

作者: やまし

実際にいる恋人を想像しながら読むといいかもしれませんね。(いない場合は、好きな人が自分の恋人になったという痛々しい妄想を繰り広げながら読んでください。)

ちなみに私は彼女いたことない歴≒年齢です。

とある新居に、新婚夫婦の長原大輔と妻の涼子が住んでいた。

「僕は君のことが世界一好きだよ。」

「まぁ、嬉しい!」

新居には新婚夫婦特有の空間が繰り広げられていた。

「涼子はどうだい?」

「ん〜…。悪いけど大輔君は2番目かな?」

「え?じゃあ、1番は両親かな?」

「違うの。恋愛感情では言い表せない、とてもとても大切な人がいるの。」

「詳しくその話が聞きたいな。」

「いいよ。あれはね…」



私が小学生の頃、とても仲のいい男子がいた。

名前は和幸。とても活発な男の子だった。

小学生の頃は男女の見境があるわけでもなく、男女分け隔たりなく遊んでいた。

その中でも特に私と和幸は仲が良かった。

よく他の男子にからかわれていたが、私たちは気にも留めなかった。

事実、その頃から私は和幸のことが好きだったから冷やかしもあながち間違いではなかったのだ。


6年生になると、より深い関係になった。

修学旅行では初めて手を繋いだ。

同じ係もやったし、まさに一心同体だった。


そして訪れた卒業式。

私はついに和幸に告白することに。

今まで仲睦まじく手をつないだことだってある。

結果は火を見るよりも明らかなはずだった。

しかし和幸の答えは、

「ごめん。俺涼子とは付き合えないや。」

自分が振られるなんて想像もしていなかった。


私は和幸と同じ中学校に入った。

2人は残念ながら別々のクラスになってしまった。

私は、新しいクラスで新しい友達を作った。

和幸に振られてから元気がなかったが、徐々に私は活気を取り戻していた。

一方和幸は、中学に入ってからほとんど学校に来なくなった。

最初の数日は来てたらしいが、そこからは完全に不登校に。

原因はわからないが、人当たりの良い和幸が不登校になるなんて私には信じられなかった。

(他に原因があるのかそれとも嫌なことでも…)

どれだけ考えても心当たりは全くなかった。

(私を振ったあの時には既にSOSが出てたのかな?)


家に行っていいのかすらわからず、私は結局何もできないでいた。

しかし、不登校の理由は意外なところで発覚した。


ある日の夕ご飯の時。

お母さんと他愛ない話をしていた。

「あんた最近学校どうなのよ?中学生になって羽目を外しすぎてない?」

「大丈夫だって〜。それより心配なことが…」

「心配事って?」

お母さんに和幸のことを話すことに。

お母さんは和幸のことを知っている。

和幸が小3の時に半年間の長期入院をした時に、家族でお見舞いに行ったのだ。

その甲斐あってか、和幸とは家族ぐるみでの付き合いがあった。

「最近和幸が学校来ないんだよね。」

すると、お母さんから予想外の言葉が出てきた。


「あら?知らないの?和幸君は今入院中よ。」

「え?」

正直予想もしていなかった。

まさか病気だったなんて…

そんな予兆も無かったのに。

「まさか前の病気の続きとか?」

私は和幸が小学生の時に半年休んだ理由を知らない。

「たぶんそうね…。またいつかお見舞いに行ってあげなさい。」

私は勇気を出して聞いてみることに。

「小3の時の和幸の病気はなんだったの?」

聞くとお母さんは言い渋った。

そして、心して聞いてねと言う言葉とともについに口を開いた。


「和幸君は、ユーイング肉腫って病気だったの。簡単に言えば癌ね。」


私は絶句した。

小学生が癌になるなんて。しかも知り合いが。

「じゃあ今回の入院はガンの転移ってこと?」

「おそらくそうなるわね…」


頬に大量の涙が伝った。

自分の体に不調はないのに、ズキズキと心が痛んだ。

10分くらい経っても実感がわかない。

癌って…。

そこでふと思った。


和幸死ぬんだ


そう思うと何か巨大なものがこみ上げてきた。

私は家を飛び出した。

目的地はもちろん市民病院だ。

今すぐ会いたいから。



病院に着いた時、私は汗だくだった。

でもそんなことを気にしている場合ではないのだ。

今はすぐにでも和幸に会いたい。

廊下を歩いている看護師に声をかけて、和幸のいる病室を教えてもらった。


6号室。ここが和幸のいる部屋だ。

いざ到着すると入るのが躊躇われる。

来て良かったのかな?迷惑かもしれないな。

でも、癌ってのが取り越し苦労かもしれないじゃん!

"コンコン"

複雑な心境でドアをノックした。

「はーい」

中から聞き覚えのある声が聞こえた。

「お邪魔します…」


和幸はとても驚いていた。

目の前にはある意味で一番訪れて欲しくない女の子が立っているのだから。


私も驚いていた。

目には正気がなく、痩せ細って変わり果てた和幸の姿を見て。


「どうして病気って言ってくれなかったの?」

「対したことないしすぐ治ると思ってたからね〜」

誰がどう見ても衰弱しているのに、和幸は強がっていた。

「でも入院までしてるじゃん。やっぱり酷いんでしょ?」

「対したことないよ!今はちょっと休んでるだけだし。」

私は確信した。これは間違いないだろう。


「和幸。あんた癌なんでしょ!」

「え?」

和幸は心底驚いたような表情をしていた。

「だ、誰から聞いたの?」

「私のお母さんから。あくまで予想なんだけど。」

この後かなりの沈黙が続いた。

和幸はずっと俯いている。


かなり長い時間がたち、ようやく和幸が口を開いた。


「もう俺、長くないんだって。」


私はまた涙を流した。

この時やっと目を逸らしたい現実を突きつけられたのだ。

「俺、前も癌だったらしいんだけど、それが肺に転移したらしいんだ。進行がかなり早くて手遅れかもしれないらしい。」

私はこんな和幸は見たことなかった。

いつも元気に振る舞う和幸がこんなに落ち込むなんて。

私が黙ってると再び和幸が口を開いた。


「あの時は振ってごめんな。」

「え?どういうこと?」

「俺だって、俺だって涼子のことが好きだよ!大好きだよ!!…でもダメなんだよ。先が長くない俺が涼子と付き合うと、後から涼子が寂しい気持ちになるから。ずっと涼子を幸せにできる人と一緒にいる方が涼子のためだから!だから、だから俺のことは忘れて欲しいんだ!!」


和幸の声はとても力強いものだった。

声だけ聞くと病人とは思えないほどに。

その声を聞いた私は声が出なかった。

先ほどから流れる涙の量が増え続けているだけだ。


「ごめん。涼子を傷つけるつもりはないんだ。ただ、涼子を不幸にさせたくないんだ。死にかけの俺といるよりもっと有意義な時間を過ごして欲しいんだ!」


「なんでそんなこと言えるの!!!」


自分でも驚きの大きな声が出た。

和幸の気持ちはよくわかった。私のことを思っての善意の行動だったんだと。

でも違う。私の最大の幸せは和幸と一緒にいる時だ。それは例え変わり果てた和幸だろうと私は構わない。


「和幸の気持ちはよく分かったよ。でも、だからって私は和幸といる時が一番幸せなの!和幸の余命が短いなら余計そばにいてあげたいよ!」

なんか自分の幸せの事しか考えていないようで自分でも腹が立ってきた。

でも、和幸が我慢するのはおかしい。

和幸は最後まで好きなものを食べて、好きなものを見て、好きなように時間を過ごして。

そして、好きな人といるべきなのだろう。

もし和幸が今でも私のことが好きなら、和幸の気が済むまで彼のそばにいるつもりだ。


それに、


「まだ死ぬって決まったわけじゃないでしょ!何一人でやる気なくしてるのよ!」


もはや私の説教となってしまった。

しかし、和幸の目は先ほどとは違う人間味溢れた目に変わった。

「そうだよなぁ。俺頑張るよ!」

二人の顔に笑顔が戻ってきた。


「ねぇ涼子?」

「どうしたの?」

二人は病室のベットの上に並んで座っている。

「俺が小3の時に入院してたのは覚えてる?」

「うん。もちろん覚えてるよ。」

「あの時俺と涼子で交わした約束覚えてる?」

「必ず半年で戻ってくる!だっけ?」

「そうそう。で、実際どうだったっけ」

「確かに和幸は半年で戻ってきたよね。」

「あの時のように強く戻れることを願えば、もしかしたら戻れるかもね。」

「もしかしたらじゃないよ。絶対戻れるよ!」

こうして2人は抱擁を交わした。

和幸の体はとても温かかった。


近い将来冷たくなることが信じられないほどに。



それから私は和幸を支える存在となった。

学校が終わるとまず病院に向かった。

そこで和幸と話したり世話をしたり。

和幸は学校の話をとてもよく聞いてくれた。

クラスでの出来事や教師の話、体力測定などなど。

私も話すのが余計楽しかった。

私が通うようになってからは和幸の両親の負担もかなり軽減されたようだ。

「涼子ちゃんのお陰で私たちも楽になったわ。ありがとうね〜」

「いえいえ。私も和幸君といるのが楽しいので。」

「これからもかずくんをよろしくね!」


医師から聞かされているのは、いつ容体が悪化するか分からないことと未だに生き続けるのは難しいことだ。

しかしそんな事は和幸にとってはどこ吹く風だ。

彼はもう絶対に挫けないのだ。

お先は真っ暗かもしれないが、ほんの少しの光を見つけた彼はもうその光を逃さないのだ。

きっと大丈夫。私も自分の胸に何度も言い聞かせた。


そうして和幸との生活をして2ヶ月くらいたっただろうか。

和幸のお父さんが病室にやってきた。

「こんにちは。」

挨拶をして席を外そうとした私を手で制した。

「涼子ちゃん、いつもありがとうね。お礼と言ってはなんだけど、これをあげるよ。」

渡されたのはUSJのチケット2枚だった。

「和幸と2人で行ってきなさい。」

「いいんですか?」

「いつもお世話になってるから、せめてものお礼だよ。」

「ありがとうございます!!!やったよ和幸!」

「う、うん!でも外出大丈夫かなぁ?」

確かに和幸の言う通りだ。

いつ悪化するかわからないから、外出はまずいんじゃあ…

すると和幸のお父さんが

「それは医師に許可を得たよ。たまには外出しないとね。ただし、ちょっとでも何かあったらすぐに病院に電話することだって。」

USJのある大阪市此花区は病院からかなり近い場所にある。

だから許可が下りたって感じかもしれない。

「ねぇ涼子!いつ行く?」

「学校が休みの今週の土曜日かなぁ。」

「あと3日もあるじゃん…」

「それくらいは我慢しなよ〜」

こうして始めてのデートが決まった。


土曜日が来るまでも私は病室に通い続けた。

この3日は短いようでとても長く感じられた。


「ついに明日だね。」

「私ものすごく楽しみだよ!」

「俺もすごく楽しみ!」

「和幸も今日くらいは早く寝なさいよ!」

「は〜い!ってか俺いつも夜更かししてないよ!」

病室に笑い声が響いた。

ついに明日なんだ!めいっぱい楽しまないと。


私もはやく寝ようと心がけた。

いつも見る探偵ナイトスクープも今日は諦めて寝ることにした。


夜中くらいだろうか。

お母さんが私を叩き起こした。

「なに〜もう朝なの?」

「違うの!和幸君が、和幸君が!!」

顔が一気に青ざめた。

寝起きとは思えない位に頭がハッキリした私は、着替えることもせずにお母さんの車で病院に向かった。


病室に行くと和幸の両親がいた。

和幸は酸素マスクをつけてとても苦しそうだ。

私は先生に和幸のことを聞こうとしたが、それをしなかった。

もう薄々わかっているし、内容も聞きたくないものだろうから。

和幸の両親は涙を流している。

ああ、もうダメなんだな。

その時、微かに声が聞こえた。

「みんな笑ってよ。」

これは確実に和幸の声だ。

笑えって言われても無理だよ…

今まさに大切な大切な人が死のうとしてるんだよ?

そんな状況で…


「涼子、ごめんね。ここ2ヶ月物凄く迷惑かけて。結局USJにいく約束も果たせなかったし。俺には分からないけど、涼子は幸せだったのかな?でも、今はとても不幸な気持ちだよね。本当ごめんね。だから涼子はこれからいい人に巡り合ってもっももっと幸せになって欲しいな。俺のことは頭の隅の方でも覚えてくれてたら嬉しいな。だから涼子はこれから世界一幸せになってよ!」


そして、


「俺は君から一生分の幸せを貰ったよ、ありがとう。」


私は涙で和幸の顔がよく見えない。

でも、和幸の微笑んでいる顔が微かに見えた気がした。


「お父さん、お母さん。親不孝ものでごめんなさい。俺は産んでくれたことを物凄く感謝してるけど、それを形にすることができなかったよ。でもこれだけは言わせてよ。産んでくれてありがとう。」


両親も泣いている。


「そんなワガママな息子の最後のお願いを聞いてください。」


「みんな笑ってよ。」


だから笑えるわけないじゃん!

でも、必死に笑顔を作った。

私が後悔するのはいいけど、和幸に悔いを残すのは嫌だ。

笑顔になっているかどうかは分からないが、私のできる最大限の努力はした。

和幸の両親や私のお母さんがどんな顔をしていたかは分からない。

でも、和幸はみんなの顔を見渡して、本当にありがとうと呟いた。

その顔は今まで見たこともないような曇りなき明るい笑顔だった。

そしてゆっくりと目を閉じた。



そして和幸が目を開くことは2度となかった。


和幸の両親は和幸の手を握って泣いている。

2人共何度もありがとうといっている。

後ろでは私のお母さんの嗚咽が聞こえた。

私は大きな声で、

「和幸!大好き!ありがとう!!!」

と叫んだ。

これが私の本心だった。


あれから時間が経った。

和幸の両親は何やら外で医師と話をしている。

私は和幸に触れてみた。

和幸はまだ少し温かかった。

しかし、この間の抱擁の時の温かさと比較して初めて、和幸の死を実感した。

私は泣き崩れた。認めたくない現実を認めざるを得なくなったからだ。

すると後ろから私を呼ぶ声が聞こえた。

振り返ると和幸の両親が立っていた。

「これ、涼子ちゃんにあげるよ。」

そこにはくしゃくしゃのUSJのチケットがあった。

「和幸は容体が悪化してから死ぬまでこれを握り続けてたんだよ。君との最後の思い出の品だからねぇ。」

私はそのチケットをポケットにしまうと、病室を出た。


和幸は言った。幸せになれと。

これは和幸の遺言であり私の使命だ。

和幸のためにも果たさなければならない。

それなのにこんなところでクヨクヨしてたら和幸に怒られる!

立ち直って、和幸の分まで幸せにならないと!



「そんなことがあったんだ…」

「だから大輔君は2番目なの。ごめんなさい。」

「いいよ。いつか和幸さんを抜く存在になるから!」


大輔と涼子の関係は良好だった。

喧嘩もなく、平和に過ごし、ついには子供を授かった。

まさに幸せそのものの生活だった。


(和幸、私のこと覚えてるかな?今は結婚して子供も生まれました。あなたと今の夫だったらどっちが好きだろう?正直どちらも愛が膨大すぎて比べられません(笑)あなたのことはちゃんと覚えています。約束も果たしました。遠い未来私が死んでそちらに向かったら、あなたに溢れんばかりの幸せを届けたいと思います。どうかその時まで、そちらの世界で元気でいてください。)






おしまい(ฅ'ω'ฅ)♪


ゴーストライター雇ってねぇよ!!!!!

愚痴から入り申し訳ない、やましです。

前作までと作風が変わりすぎてビビったと思います。

今作から初めて俺の小説を読む人は、過去作も読んで欲しい。

多分人間不信になるから。


でも、感動作が書ける男性ってモテると思うんだ!


「これが俺の作品だよ、」

「やましさんの作品感動しました!好きです!付き合ってください!」

「いいよ!!!」

「やったぁ!できれば、過去作も見せていただけますか?」

「4作あるけどどれがいい?」

「この、【僕とトムとごまドレと】ってやつ!」

「ああこれは汚れたカーペットにごまドレをぶち撒けて悦に入る話だよ!」

「え・・・?じ、じゃあこの【大和撫子の太もも物語】は?」

「これは美しき太ももに男性が飛びつく話だよ。」

「あっ…えっとじゃあ【じじたろう】は?」

「これはおじいさんの子宮から生まれた少年がヤンキーをゴミ箱に捨てて街の美化活動に励むお話だよ!」

「お、おう…じゃあ、この【可憐な少女の表と裏】は?」

「これは、ネットと現実でキャラが全然違う少女が、山茶花片手に人の記憶を奪う話だよ!」

「あ、あの?」

「どうしたの?」

「別れましょ。」

「!?」



きっとモテると思う。



小説の方は何かミスがありましたら教えてください。

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