1/34
《ナルキッソスの呪い》
ナルキッソスはただの愚か者ではない、彼は呪われていたのだ――――。
他人を愛せない、見目麗しい少年がいた。他人の愛し方を知らなかった。
更にそこへ復讐の神が呪いをかけ、少年は世界でたった一人しか愛せないようにされた。
彼は何よりも大切な《鏡》を死守し、その先の人間を愛し、微笑む鏡像だけを心から信じた。
呪いだったのだ、それしか生きる術がなかったのだ、それでも汝は少年を嘲笑うか?
やがて彼は、鏡と共に朽ち果てていく。
ささやかな愛が満ち溢れていた遠い過去を想い、嘆きながら。