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「おはよう、サリー」

「おはようございます。ユキさま」


昨夜はアンナさまのお祝いではしゃいだ為、今朝は少し寝坊をしたようだ。

普段は王都に住んでいるアルも、泊まっているようなので、今日は大人しめのドレスを着る。

シスコン気味のアルだが、伯爵家では一番の常識人で、可愛がっているユキに対しても教育的指導に手を抜くことは無い。

いや、むしろめちゃくちゃ厳しい。

昨夜もヨシュアと二人だけで出かけた件について、安全がどーとか、淑女としてどーとか、色々とお小言があった。心配して言ってくれているのが分かっているので、ニコニコとして聞いていたら、最後は額に手を当てて俯いてしまっていた。


ダメだこりゃのポーズですね!分かります!そんなポーズも様になるなんて、さすがはアル兄さま!お素敵です!


昨夜のことを思い出し笑いをしながら1階の朝食の部屋へ向う。

今朝は伯爵ご夫婦も、アル兄さまも、ヨシュアも一緒だ。伯爵夫婦は起きるのが早すぎるか遅すぎるかで朝食をご一緒することが少ないし、ヨシュアも1人で早めに朝食を取って学校に出かけてしまう。ちなみに学校は今、お休み期間らしい。普段から行ったり行かなかったりするので、よく分からない。


ん?なんか微妙な雰囲気?


にこやかに挨拶をして朝食の席につく。ところが家族からの挨拶に笑顔が無い。


「ユキ」

「はい、はく・・・お父様」

「明日にでも王都学園への入学手続きをしておくから、週末に入学試験を受けに行くように」

「学校・・・ですか?」

「そうだ。昨日はアンナの祝いに水を差したくなかったので何も言わなかったが、お前には伯爵令嬢としての自覚が欠けているようだ。同じ貴族が集まる学園でなら、色々と学ぶことが出来るはずだ」


なんて答えたら良いんだろう。

アル兄さまを見るとニッコリ笑って頷いている。アンナさまは哀しそうにして目を合わせてくれない。

アル兄さまは賛成で、アンナさまは不本意ってことかな?


「反対です。ユキは家庭教師から学んでいますし、なにも学園にいく必要などないでしょう?」


珍しくヨシュアが会話に入ってきた。いつも声をかけられるまでは何も言わないのだが。

確かにユキは10歳で拾われた時から、言葉を学ぶために家庭教師をつけてもらい、今現在も週に2~3度は語学や歴史、礼儀作法などを学んでいる。

最近になってようやく難しい本も読めるようになったし、会話にも不自由しなくなった。とはいえ、伯爵家で使われる会話ベースでの単語力だし、発音にも自信は無い。礼儀作法は言うに及ばずだ。


「学園でしか学べないこともあるだろう。先ほど父上が言われたように、同じ年頃の令嬢から学べることもある。ユキは世間知らずなところがあるから、学友を作り社交性を身につけるべきだ」

「学園の寮に入る必要はないのよ?お家から通っても良いとお父様は仰ってくださっているわ」


アル兄さまが言い、アンナさまも優しく言い添える。というか、アンナさまの視線は伯爵に向いており、事実確認をしているようにも見える。

家から通えるなら行ってもいいかな。自覚に欠けるだの世間知らずだのと言われると、さすがに堪える。みんなに恥をかかせないためにも、もう少し勉強は必要かも。


「物珍しさからちょっかいをかけてくる奴だっているんですよ?わざわざ衆目を集める必要があるんですか?」


ヨシュアの声で我に変える。ヨシュアを見ると、思わず口にしてしまったという表情だ。

そ、そうか・・・外見で苛められそうだからヨシュアは反対してたのか。

そーゆーのはちょっと、まぁ、困るな。苛めたことはあるが、その反対はない。苛めに対する耐性は皆無だ。うーん。


「ヨシュア。君の優しい気持ちは嬉しく思う。だが、どちらにしても社会に出るようになれば、外国人であることを隠すことは出来ないんだよ。ずっと家に閉じ込めておくことも出来ない。この姿も、子供のころから見慣れておけば受入れやすくなるんじゃないか?それに、学校にはヨシュアだっているんだ。守ってくれるだろう?」


アル兄さまが優しく言った。ヨシュアは悔しそうに俯く。

そっか、ヨシュアが一緒なら多少のイジメは耐えられそう。よし、ここは頑張って期待に応えよう。


「ヨシュア。心配してくれてありがと。学校のこと、色々教えてね?」


小さな手でヨシュアの手を包み、感謝の気持ちを込めて伝えた。


驚いたことに、ヨシュアももう片方の手を被せてきた。指は細く長いが、意外に男らしい大きな手だ。


て、手だけは好み!



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