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卵を安全な場所に隠し、井戸で鶏糞まみれの顔と手を洗う。


よし、次はプレゼントだ。

プレゼントはもう決まってる。素敵な香り付の髪油を作るのだ。

こっちの気候はカラッとしているのだけど、そのせいで肌や髪が乾燥しやすい。

マリーナが35歳と聞いたときには驚いた。

肌年齢の低さ、シミや皺のせいで50歳代かと思っていたから。

アンナ様みたいな貴族はさすがに手入れをしていて、私もその美容品のご相伴に預かっているけど、イマイチ質が悪い。

髪油なんてバターかっ!って言いたくなるようなベタベタしたものか、卵白まんまじゃん!って感じのカチカチになる夜会用のムースとかしかない。

しかもなんか臭い。酸化した匂いを香水で誤魔化してるのか、匂いが半端なく強くて、最早某柔軟剤並。


ということで、プレゼント用に生前の知恵と経験を結集して、椿油風の髪用トリートメントを作ることにした。

街の薬剤師のばぁ様の協力を得ながらだったが。まぁ、ともかく製作した。1年半かかった。

生前の飽きっぽさを考えると脅威の粘り。

私はこの世界で生まれ変わった!


ばぁ様アドバイスでいくつか候補のあった中でも、「イラン」という実の油が一番香りも良かったので、材料はこれに決めた。

古いイランの実と自分の頭を使って、1年半人体実験もした。品質には問題ないはず。

ということで、今日はプレゼント用の髪油を作るのである。


イランの実は、家人にばれないように屋敷から少し離れた森で天日干しをしている。

油はほんの少ししか取れないので、大量に採ったのだけど、持ち帰るには大変なので、拾った場所で干しているのだ。

ちなみに森といっても私が拾われた森とは違う。あの森は馬車で2日はかかるほど遠い。

近くの森はキリル山に繋がる森で、言い伝えでは魔力のある動物が住んでいるらしい。

怖い噂が多いので、森の置くには入らず、手前で作業を進めるつもりだ。

ここら辺、大人の安全思考。頭脳は大人だもんね!

おっと、近場といっても歩くと1時間近くはかかるので、急いで出かけないと。


台所でマリーナさんに出かける旨を伝えると、どこへ行くのかと聞かれた。

森に行くというと止められるので、森と屋敷の中間ぐらいにある川に行くと伝える。

川も通るので嘘ではない。

朝ごはんはいらないと言ったのに、少し待たされてサンドイッチを持たされた。

マリーナさん、大好き!

裏手に回って実を入れる籠を屈んで担ぐ。

ぐっ、重い!鍋やら何やら突っ込んでるから?!

プルプルと生まれたての小鹿のように脚を震わせながら立とうともがいていると、ふっと籠が軽くなった。


「持つよ」


振り返ると、やたら色素と影の薄い男の子が立っていた。

この幽霊並に薄い子は、ヨシュアという。

私と似たような立場で、去年から伯爵家でお世話されている子だ。

ヨシュアは伯爵が後見人というだけで、実際にはどこぞの貴族の後継者らしい。

同じ被扶養者でも、私のような野良とは一線を期している。

ご両親が一度に亡くなって、元の後見人とも折り合いが悪くて、流れ流れて伯爵家に来たらしい。

色々と気の毒な身の上なのにも関わらず、こんな風に他人を気遣う優しさがある。


しかし、無表情だし無口だし、青白いしガリガリなので、私は苦手だ。

いや、本心としては、伯爵家の被扶養者としては私の方が先輩だ!っつーか、お前は伯爵家の皆さんの寵愛を奪い合うライバルだ!と、声高に言いたい。

はっ!ダメダメ!こーゆー性悪根性は捨てるはずだったんだ。

目指せ良い子!!

ということで、私はニッコリ笑顔を見せることにした。


「大丈夫だよ。一人でも持てるから。ありがとね」 にっこり

「持ててなかった」

「・・・」


まぁ、そうだね。でも、あと3分ぐらい奮闘すれば持ててたと思う。

ヨシュアは優しいけど言葉をオブラートに包むスキルが不足している。


「卵。その籠に入れてないの?」

「!!」

「籠、振り回したら割れる」

「な、なんで卵のことを!?」

「窓から見てた」


見てたんかい!恥ずかしいわ!!


「えっと、卵は入ってないから大丈夫!」

「どこ行くの?送ってく」

「いやいやいや、その辺だから」

「川じゃないの?」


知ってるんかい!


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