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見た目がこの国の誰とも違うという点も、生まれ変わりじゃないのかも?と思う理由。
だって普通、生まれ変わりって言ったら、その世界の生まれた国の人の姿になるよね?
こちらの国は、殆どがアングロサクソン系。
背が高くて彫が深い。
多くの人は白い肌をしてる。髪も白、金、赤、茶色が多い。
たまに青い肌や黒から灰色に近い肌の人がいるのが「異世界
」らしいところ。なのに、所謂モンゴル系やアジア系は見かけない。
そして「ユキ」は黒髪に象げ色の肌、黒い瞳で顔はというと。のっぺりしてる・・・。
背は伸びてきたけど、全体的に小柄。多分、あまり背も伸びなさそう。
生前はモデルのスカウトにあうほど長身美人だった「逢坂 雪」からすると、まことに残念な容姿だ。
良い点を絞り出すとすれば、色が白くて肌のキメが細かいのぐらい。
容姿が残念なことは、まぁ横において、回想に戻ろう。
自分が何者なのか、どうしてこんな姿でここにいるのか、周りも私自身も全く分からないまま3年が経った。
拾ってくれた森の民は、しばらく面倒を見てくれたけど、家族や同族ではないらしい。
発見当時に貴族並みに良い身なりをしていた事と、初めてみるアジア系の顔つきに、他国の要人だと思って保護してくれたみたいだ。
私は森の民に面倒を見てもらえることになったのだと安心したのだけど、実は発見してすぐに領主のディラン伯爵に擁護を求めていたようで、ほんの数ヶ月で森を離れることになった。
ディラン伯爵も私の家族を探してくれたけど1年たっても見つからず、結局自分の養女として引き取ってくれた。
養護施設に引き渡すこともせずに。
発見されてから半年ほどは、混乱して自暴自棄になって、本来の性格の悪さが前面にでていた。
実は生前の私は社長令嬢という後光を盾に、やりたい放題の自己中傲慢女だったのだ。
他人どころか家族からも距離を置かれていた程の性悪な私を、暖かく迎えてくれた森の民や伯爵家の皆さんには感謝してもしきれない。
せっかく受けた2度目の生。
今度こそ後悔しないように生きることが今の目標だ!
神様、今度こそ良い子になります!
回想が長くなってしまったが、今日は伯爵の奥様、アンナ様のお誕生日。
アンナ様は聖母のような方で、私のアンナ様への愛は止まることを知らない!
アンナ様LOVE!アンナ様万歳!!
私もお祝いをしたいと思い、準備のために早朝から動き出しているというわけだ。
私の計画としては、まずは夕食時に出すケーキの食材集め。
その後、プレゼント作り。
昼食の後、台所が空いたらケーキ作り開始!
朝・昼・夕に台所を使うと、キッチンの主・マリーナの邪魔になるからね。
よし!まずは卵だ!
朝日が昇ると鶏小屋の卵は全て回収されてしまう。
その前に必要な数だけ頂かないと。
ディラン伯爵家の鶏の王は、侵入者に容赦が無い。
しかもジャンプ力が半端ない。
小屋に入った途端に鶏の王が頭を掲げ、胸を張る。
心なしか鶏冠の赤みが増した。
鶏胸肉が立派だ。威風堂々な姿が、さながらナポレオンのよう。
卑屈な姿勢でコソコソと柵に沿って小屋に近づこうとしたところで顔面に攻撃を受けた。
「ぎゃっ!」
およそ140センチのジャンプ。ナポレオンの脚力、恐るべし。
マリーナはいつも餌を撒き、その隙に卵を取っていたので真似をしてみる。
痛い!痛い!!!
餌を食べながら器用に足を突付いてくる。なんだこの流れるような動きは!!美しい!!
ぎゃっ、食べるの早っ!!もうきた!!痛い!つまんだ上に捻られた!!
鶏王ナポレオンとその側室たちと格闘し、どうにかこうにか幾つかの卵をゲット。
逃げまわったせいか、小屋を出る頃には朝日が昇っていた。