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食堂という公衆の面前で、ヨシュアがキスをした。ほっぺたにだけど。


この食堂事件は、いい意味でも悪い意味でも状況を変える転機になった。

良い面は、遠巻きに見ていたクラスメイトが話しかけてくれるようになったこと。やっぱり見た目があまりにも平均的人族と違ったので、みんな近寄れなかったようだ。


「ちょっといいかしら・・・?あなた、ヨシュア様とお知り合いだったのね!」

「お名前なんでした?うふふ、ヨシュア様って素敵よね。麗しくていらっしゃる上に、剣術も!」

「前の大会では殿下ともやりあったらしいぜ」

「確か引き分けだったよな?すごいよなー。でも、ちょっと近寄りがたい雰囲気だな」

「わかる、わかる!」


どうやらヨシュアはそれなりに有名らしく、彼に憧れる生徒も多いようだ。このクラスも初級クラスといっても2年目以上の生徒も混じっているので、有名どころの生徒については詳しいらしい。

ヨシュアの話題を皮切りに、私のことも聞かれるようになった。嬉しい!ヨシュア、ありがとう!


「ユキって呼んでいい?母国語が通じるか不安だったけど、とても上手に話されるのね」

「ありがとう」

「少し訛りがあるけどな!」

「そ、そうかな。聞き取りづらかったらごめんね?」

「大丈夫よ、全く気にならないわ。でも、私も不思議だったのよ。ユキはどちらのお国からいらしたの?」

「ニホンっていう東の国よ。遠すぎてこの国では知られていないみたい」

「うーん。黒い髪だから魔族かとも思ったけど、目も黒いから違うよね?君は何族なの?」

「人族だけど・・・私の国では黒髪も黒い目も、珍しくなかったんだけどな」

「聞いたこと無い国だね。どこの国となら交流があるのかなぁ?」

「ごめんなさい。私、あまり国の情勢などに詳しくなくて。この学園で勉強して、色々お話出来るようになりたいわ」


いい子の猫を被りつつ、話しかけてくれた子達にも話を振ってみると、皆こぞって自己紹介をしてくれた。はぁ~よかった~。


一方で、食堂事件の悪い面は・・・。


「ニホンですって。本当に国家として成り立ってるのかしら。聞いたこともないわ」

「ふふふ、村程度のものじゃないですか?」

「そんな辺境から来た人間が入園を許されるなんて、この学園の質も落ちたものね」

「気持ちの悪い目。真っ黒なんて人とは思えないわ」


知り合いも増えたけど敵も増えたような・・・。

はい。ヨシュアのファンですね。分かります。さっきまで無害だったヒソヒソ少女グループは、ネチネチ少女グループに変貌。聞こえよがしの嫌味に、なんだか昔の自分を重ねてしまい居た堪れない。


「あれ(キスのこと)はディラン家では挨拶代わりで、お兄様や両親ともしているんですよ。恥ずかしいことだったなんて・・・教えて頂けて助かりました」


素直に言ってみる。自分の家も同じだよと言ってくれる人もいたし、殆どの人には好意的に受取ってもらえたけど・・・。やっぱりダメか。ネチネチちゃん達からは冷たい一瞥しか返って来なかったよ。





「学校はどうでしたか?」


テーブルの向こう側でアンナ様が優しく微笑みながら言った。

家に帰ると、着替えが終わるか終わらないかってタイミングでアンナ様にお茶に誘われたんだけど、初登校を心配してくれてたんだろうな。


「色々目新しいことばかりで楽しかったです。私の容姿も珍しかったみたいだけど、この見た目のお陰で話をしてくれる方もいたんですよ」


アンナ様の心配の元がコレだと分かっていたので、先回りして答える。


「まぁ、そう。良かった。沢山の方と交友を深めることが出来ると良いですね」

「はい。お友達作り、頑張ります!」


くすくすと笑うアンナ様に大きく一つ頷いて見せた。いや、本気で。今生こそ親友作るつもりだから。いい子になってお友達も沢山作る。足の引っ張り合いや裏切りや取り合いやらしかしない友達付き合いは絶対しない!


本気で頑張れば・・・友達100人出来るかなぁ?



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