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今日は大切な日!寝坊はNGだ!
むくりと起き上がるとベッドを降りる。まだ日も昇らぬ早朝。
私はネグリジェを脱ぐと、手探りでペティコートを身に着け、作業着にしている半袖、膝丈のワンピースに袖を通す。
かぼちゃパンツ、もとい、ドロワーズは10歳の頃からの愛用品だ。
当時は太ももも隠してくれていたが、3年も経つとお尻しか覆ってくれなくなった。
しかし変える気は無い!この生地のクッタリ感が良いのだから。
ちょっと厚手の生地のエプロンを身につけ、ストッキング・・・いや厚手すぎてもはやハイソックスと呼べるような代物を履き、柔らかい革靴に足を突っ込む。
フリルもレースもなく簡素だけど、スカートにはボリュームがある。一見、『不思議の国のアリス』のアリスのような格好になった。
パフスリーブでもないのが残念だが、十分に可愛い!
異世界の何が良いって、日常でコスプレまがいの格好が出来ることだ。
異世界・・・。こっちに来て早3年。
自分が異世界にいるってことが、ずいぶんと日常化してしまった。
去年までは元の世界、つまり、地球だの日本だのって世界のことを思い出して枕を濡らすことも多かったけど、最近では懐かしいな~ぐらいで済むようになった。
あ、そういえば昔見かけたゴスロリ少女。電車で異彩を放っていたなー。
あっちの世界では表向きリア充女を気取ってああいったファッションを仲間と蔑んでたけど、内心は指を咥えてたんだよね。
ゴスロリルックしたかった!!ミニ・レースパラソル持ちたかった!!
でも電車の中では傘閉じようよ!
・・・しかし、なにゆえゴスロリ少女って骨格が良い子が多いんだ?
華奢なゴスロリ見たことなかったよ??
このアリス風エプロンドレスは私のお気に入りだが、お世話になっている伯爵家の家人には受けが悪い。
伯爵家の娘(正しくは養女)なのにとか、そろそろお年頃なんだからまともな格好をしなさいって。
こちらの世界の貴族は15歳から婚姻を結べる。王族などは10歳未満で結婚することもあるそうだ。
ということで、伯爵家の娘(正しくは-以下略-)の私こと13歳の「ユキ」は婚活適齢期なのだ。
10歳未満で結婚って、ロリすぎる。こっちの世界の男は変態だ。
こんな風に元の世界の記憶が、物の見方や価値観に大きく影響している。こっちの世界での幼少期の記憶が無いのも、なかなか慣れることが出来ない原因かもしれない。
幼少期、具体的には10歳より前の記憶が無い。
気がついたときは「ユキ」は10歳ぐらいで森で迷子になってた。
生まれ変わったと思ってはいるけど、もしかすると、この体を間借りしているだけかもしれない。
ちなみに、生前の私は日本で社会人女性として働いていた。死んだ記憶も無い。
私にいったい何が起こったんだろう?