裁きの土俵
観客側視点のストーリーです
大食いバトルが繰り広げられているカレー店では、観客達が二人のフードファイターを取り囲み、バトルの行く末を見守っている。
てんこ盛りカレーを頬張るのは、前回チャンピオンとチャレンジャー。
二人とも食べ盛りでしかも男子なので、どんな量のカレーもバクバクいける。
観客の中には勝負が好きな少年、勝利もおり、熱いバトルに見いっていた。
「二人とも、なかなかの食べっぷりだ!
このバトル、どっちが勝っても良い結果になりそうだな!」
前回チャンピオン、チャレンジャー、食べる速度が頗る速く、勝ちは譲らないといった姿勢を見せている。
「ん?」
勝利の目に、妙な動きが映り込んだ。
チャレンジャーのスプーンを持っている手が、一瞬捻りを見せた気がした。
(今のは……あっ‼)
今度は、はっきり見えた。
チャレンジャーはスプーンを素早く捻り、隣の席の前回チャンピオンのカレー皿へと自身のカレーを小分けにして放っていたのだ。
(イカサマだ‼)
許せない行為だ。
しかし、チャレンジャーの手の捻る動きが俊敏すぎる為、証言しても信用されない事は分かっている。
(自分は食べずに楽をして、ライバルに押し付けるのか。
正しくない行為……阻止する!)
勝利は観客の輪から外れ、少し離れた場所で『裁き』を行う事にした。
肩に掛けている鞄から、人形の駒二体と土俵を取り出した。
片方の駒に『前回チャンピオン』と記し、もう片方の駒には『チャレンジャー』と記し、土俵の上に乗せた。
「勝負の神様……正しい裁きを下したまえ……!」
勝利が土俵を両手で叩くと、そこから念が放たれた。
放たれた念は、二人のフードファイターのもとへと向かっていく。
(変だな……食べても食べても、いっこうに減らない)
(へへっ、このバトルで貴様はチャンピオンの座から降りるんだ!
俺がフード界のチャンピ……)
「おあっ‼」
チャレンジャーの口から叫び声、手からスプーンがカレーを乗せたまま空中に飛び出した。
何度も捻りを効かせたせいで、腱鞘炎を起こしてしまったのだ。
「おい!
そのスプーンはなんだ⁉」
「動きが変だったぞ‼」
「誰か撮影してた人、いませんか⁉
再生して、確かめて‼」
念は土俵へと戻った。
「う……フードファイターとして、目立ちたかったんだよう‼」
チャレンジャーの鳴き声が、カレー皿の上に落ちた。
「それならば、胃袋に磨きをかければ良いフードファイターとして目立てるよ」
前回チャンピオンが、チャレンジャーの心にスパイスをかけた。
この言葉は、勝負好きの勝利の心にスパイスをかけてくれた。
「勝負に真剣に挑む人は、やっぱり格好いい‼」
土俵の上には、仁王立ちしている人形と倒れ込んでいる人形とが、今の結末を示していた。
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