43.荒物屋
今日は、鴻巣。通称『タコおんな』。吸盤治療の治療客のアナウンサー。
「センセ。ええ門松立ててますやん。どこでパクってきはったん?」
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
辻友紀乃・・・鍼灸師。柔道整復師。高校の茶道部後輩、幸田仙太郎を時々呼び出して『可愛がって』いる。
鴻巣恭子・・・辻鍼灸治療院の常連。
幸田仙太郎・・・辻の高校茶道部後輩。興信所所員。
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私の名前は辻友紀乃。
辻は、所謂通り名。そして、旧姓。戸籍上は「大下」。
旦那は「腹上死」した。嘘。
本当は、がんだった。
膵臓がん、って奴だ。
私は、鍼灸師で柔道整復師だ。
お馴染みさんは、これでも多い方だ。
今日も、「お馴染みさん」の話。
今日は、鴻巣。通称『タコおんな』。吸盤治療の治療客のアナウンサー。
「センセ。ええ門松立ててますやん。どこでパクってきはったん?」
「そこの三丁目の角で、って、なんでやねん。あんな大きなモンパクれるか。あ。でも、パクられる事件があるらしいから、って、後輩の幸田が『重し』つけてくれたわ。」
「重し?」「元々は、物干しの土台らしいんやけど、プラッチック製で、中に水入れるんや。ホームセンターで売ってるらしい。」と吸盤をセットしながら説明する。
「成程ねえ。コンクリのは、業者さんに頼むしかないしねえ。そや、ここの一階、何屋さん?いつも閉まってるけど。」
「荒物屋。とっくに廃業したがな。ホームセンター出来たし、インターネットでモノ買う人多いやろ?ちょと軍手、ちょとバケツ、って時代やないわなあ。」
「1階も借りたらええのに。」
「そういう人もおるけど、ウチは一人。自営業でも個人事業主や。無理。大体1階2階の上り下りせなアカンやん。」
「そら、シンドイなあ。」「2階まで上がってくるのん、シンドイか?」
「いつかはシンドなるかも。あ。住吉さんの太鼓橋。昔は平気やったけど、今は恐いな。」
「そら、トシやから。」「そら、トシやから・・・って私の方が若いんやけど。」
「亭主と何回やるん?」「今は・・・2回が限度かな、一晩に。」
「昔は?」「15回。」「15階・・・天国にまいりまーすってか。アホ草。」
吸盤を外した跡は、やはりタコやな。
着替えた鴻巣は、「今日は年末やし、3回はいけるかな?」と言うので、「正月は休みやで。」と言ってやった。
「そんな殺生な。」「それは、亭主の台詞やろ。」
鴻巣が帰ると、入れ替わりに幸田が入って来た。
「見事な漫才やな。勉強になります。」
「ほな、授業料1000円足すな。」
「そんな殺生な。」
―完―
※荒物屋とは、ほうき、ちりとり、ざる、桶、わら製品などの丈夫で実用的な日用雑貨(荒物)を扱う小売店のことです。金物屋さんと兼業の店もありました。今は、ホームセンターやインターネットの普及で姿を消した商売です。




