41.たまらん
本体のみならず、針は「個人専用」を用意していたが、消毒に手間も金もかかるし、コロニー以降、「清潔」に過敏になった世間の風潮もあって、使い捨て針だ。
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
辻友紀乃・・・鍼灸師。柔道整復師。高校の茶道部後輩、幸田仙太郎を時々呼び出して『可愛がって』いる。
半野啓太・・・辻鍼灸治療院の常連。
幸田仙太郎・・・辻の後輩。
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私の名前は辻友紀乃。
辻は、所謂通り名。そして、旧姓。戸籍上は「大下」。
旦那は「腹上死」した。嘘。
本当は、がんだった。
膵臓がん、って奴だ。
私は、鍼灸師で柔道整復師だ。
お馴染みさんは、これでも多い方だ。
今日も、「お馴染みさん」の話。
「今日も、たっぷり虐めたるからな。覚悟しいや。」
「お願いいたします。」
半野は、マゾだ。それが証拠に「マゾ男!!」と呼ぶと喜ぶ。
別にSMプレイを楽しんでいる訳では無い。
電気針には、結構投資している。
本体のみならず、針は「個人専用」を用意していたが、消毒に手間も金もかかるし、コロニー以降、「清潔」に過敏になった世間の風潮もあって、使い捨て針だ。
無論、これは通常の針と違い、保険適用は出来ない。
まあ、客は覚悟をして、やってくる。
半野も、泉南からわざわざ電車乗って週一で、やってくる。
死刑は日本では絞首刑だが、アメリカでは電気椅子。それを連想して「いちげんさん」は怖がるから、勧めない。第一、椅子で無くベッドだ。2度以上、感電の経験があったり、サウナに付属している電気風呂を経験している者なら、「ビリビリ」が弱電で、死んだりしないことは承知だが、一般には分からない。
メーターボルテージを少しずつ上げて行き、患者が「痛い!」と言った地点より少し下げてからタイマーをセットする。
「先生。今日は『強め』でお願いします。」
「座骨神経痛、痛いか。」
「はい。」
今日は、心もち上げるので、つきっきりだ。
「もっと、もっと。もっと、痛い!!」
やっぱりマゾ男や、変態や。
あまり知られていないが、座骨神経痛は『神経』の病気だ。
『神経の凝り』だ。凝りをほぐすと、収まってくる。
以前、次の客が親子連れでやってきて、「オッチャンがイジメられてる。」と言って、親が困ったことがある。
私は『女王様』か。
「もっと、虐めて、とお言い!!ビシっ!!」ってか。
まあ、それからは、予約を取る時に半野の後かどうか確認するようにはしている。
世の中は、「死刑執行」のイメージが多く浸透していて、誤解を受けやすい。
「死んだら、どうするんですか!」などど言うアホもいる。
死ぬような処置なら、電気針であろうと普通の針であろうと変わりは無い。
過去に事故があったことはあったが、いずれも無免許だった。
医療助手に入っただけで、私も出来る、と勘違いする者もレアケースだが、いる。
そんな簡単な作業ではない、だから、国家試験なのだ。
修行中なら、師匠格の鍼灸師がついて指導するように決まっている。
まあ、ウチには、複数の客を相手にするような空間の余裕はない。
従って、修行中の者を預かる場合は皆無だ。
治療は終った。
半野は放心状態だ。
そんなときは、私の胸をチラ見させる。
すると、シャキっとする。
ショック療法だ。
「今日は、胸見たから千円足すな。」
「そんなあ。」
待合室で、幸田がクスクス笑っている。
半野が帰った後、「お前もイジメコースがええんか?」と幸田に尋ねて、「僕はレギュラーでお願いします。」と返して来た。
「ガソリンスタンドか、ここは。」
―完―
メーターボルテージを少しずつ上げて行き、患者が「痛い!」と言った地点より少し下げてからタイマーをセットする。




