38.検査
「どうなん?その後。」
「CT撮ってみよう言われて、紹介して貰った病院でCT撮ったら、正常。でも、膵臓に石らしきものがあるから、ってまた病院へ。エコーの結果、たいしたことないことが分かりましてん。」
「良かったやないの。」
「ところが・・・。」
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
辻友紀乃・・・鍼灸師。柔道整復師。高校の茶道部後輩、幸田仙太郎を時々呼び出して『可愛がって』いる。
蓮根信一・・・辻鍼灸治療院の常連。
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私の名前は辻友紀乃。
辻は、所謂通り名。そして、旧姓。戸籍上は「大下」。
旦那は「腹上死」した。嘘。
本当は、がんだった。
膵臓がん、って奴だ。
私は、鍼灸師で柔道整復師だ。
お馴染みさんは、これでも多い方だ。
今日も、「おとくいさん」の話。
蓮根は、外科・内科の十津川先生が、内緒で紹介してくれた客や。
秋に入って以来、蓮根はよく咳をしていた。
それで、従来の針を刺す場所以外に『沈痛』になるツボにも針をしていた。
どうも普通の咳でない気がする。そう言って、十津川先生にレントゲンを撮って貰い、肺炎でないことを確認の上、アレルギー性ぜんそくの内服薬と呼吸器を処方された。
咳の頻度は下がったが、完璧でもない、とぼやいていた。それが先月のことだった。
「どうなん?その後。」
「CT撮ってみよう言われて、紹介して貰った病院でCT撮ったら、正常。でも、膵臓に石らしきものがあるから、ってまた病院へ。エコーの結果、たいしたことないことが分かりましてん。」
「良かったやないの。」
「ところが・・・。」
「ところが?」
「その病院の先生、またCT撮って、MRI撮って、って言い出したんです。」
「何でや。」
「造影剤を注射してCT撮ったら、よう分かる、って言うんです。その検査言った時、もう咳が出ないようになってたんです。前のCTで異常なかったし、咳の症状収まったから要らないって言ったら、念の為にMRI撮ろうって、勝手に予約したんです。僕の主治医は十津川先生ですやん。」
「そやな。帰宅してから、MRI検査要らんな、って思ったからキャンセルの電話入れたんです。MRI検査するかどうかは、十津川先生に相談してから決めます、って。」
「ふん。」
「そしたら。」
「そしたら?病院の先生が折角予約とってあげたのに、患者横取りするんかって言って来たんです。十津川先生、怒りはって、『患者はモルモットじゃない』って、きっぱり言ってくれました。」
「おー。結果オーライやな。」
「昔、病院の先生に振り回されたことあるんです。引っ越し前のことで、十津川先生のところに通院する前。僕、足悪いでしょう?」
「うん。足の手術せえとかばっかり言うんです。それで、病院の通院止めました。失敗率が高いって評判聞いたし。その先生は、失敗したら、舌打ちして終り。患者は泣き寝入り。」
「その外科医と同類って思ったんやな。正解や。十津川先生にあんじょう診て貰い。」
今日は、特別に矯正もしてやった。
蓮根は、晴れ晴れとした表情で帰った。
医療従事者は、勘違いしてはいけない。カルテを見て患者を診ないのは、どうかしている。
内服薬なら、後で調整出来ることもある。それは、風邪薬の場合だ。
蓮根が帰った後、暫く考えた。厚労省大臣は、盆暗が多い。
患者が賢くならなければいけない。
念の為?おーまーえーはーあーほーかあ!!
―完―
「ところが?」
「その病院の先生、またCT撮って、MRI撮って、って言い出したんです。」
「何でや。」
「造影剤を注射してCT撮ったら、よう分かる、って言うんです。その検査言った時、もう咳が出ないようになってたんです。前のCTで異常なかったし、咳の症状収まったから要らないって言ったら、念の為にMRI撮ろうって、勝手に予約したんです。




