33.蜂が恐いか鍼灸が恐いか
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
辻友紀乃・・・鍼灸師。柔道整復師。高校の茶道部後輩、幸田仙太郎を時々呼び出して『可愛がって』いる。
板東啓吾・・・辻鍼灸治療院の常連。
早乙女優・・・辻鍼灸治療院の常連。
花菱綾人・・・南部興信所所員。
横山鞭撻・・・南部興信所所員。
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私の名前は辻友紀乃。
辻は、所謂通り名。そして、旧姓。戸籍上は「大下」。
旦那は「腹上死」した。嘘。
本当は、がんだった。
膵臓がん、って奴だ。
私は、鍼灸師で柔道整復師だ。
お馴染みさんは、これでも多い方だ。
今日も、「お馴染みさん」の話。
最近、お馴染みさんになった、板東。
大きな体のくせに、気が小さい。
板東の治療は、普通の針。
昔、鞭打ち症になって以来、鍼灸の世話になっていると言う。
引っ越してきて、ウチの常連になった。
治療が終って板東が帰って、次の患者を迎えていると電話がかかってきた。
「せ、先生。助けて下さい。」
外に出ると、自転車の近くで板東が奮えている。
「どうした?」
震えながら、自転車の荷台を指さす板東。
蜂か。
「待ってなさい。」
私は、とって返して、蜂用の殺虫剤スプレーを持ってきた。これは、薬局お勧めの強力なスプレーだ。バズーカ砲みたいに発射することも出来る。
そこに、通りがかった、花ヤンこと花菱さんと、横ヤンこと横山さんがいた。
私は、迷わずスプレーをかけた。
花ヤンが、クルマから出して来た団扇でパタパタやると、蜂は側溝に落ちた。
「みなしごハッチやな。」と横ヤンが言い、この辺に木や花が無いから、この人の自転車でサイクリングしてきたんやな。2人乗りではない、な。」と言った。
2人の会話は、まるで漫才師だ。
私は、また引き返して、ウェットティッシュとタオルを持って来て拭いてやった。
板東は、花ヤン横ヤン、そして、私にペコペコ頭を下げ、帰った。
部屋に帰ると、早乙女がブラジャーを外しながら、言った。
別に、私といかがわしい行為をする準備ではない。
ブラジャーがきついのだ。
早乙女は、私よりも尚、豊満な胸だ。男遍歴も・・・おっと、これは個人情報。
「先生、事件ですか?」
治療用浴衣を着ながら、早乙女が尋ねるので、あらましを話した。
「さあ、蜂の針がええか?馬の針がええか?」
「どっちもキツいけど、先生の毒舌ほどやないわ。」
「こらまた失礼しました。」
―完―




